ロシアの浮体原子力発電所がテスト開始

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ロシアの国営原子力企業Rosatomは2018年12月6日、世界初で唯一の浮体原子力発電所 Akademik Lomonosovの第1原子炉が稼動したと発表した。

ロシア科学アカデミー会員の Mikhail Lomonosovに因んで名づけられた。

長さ144m、幅30mほどの船で、排水量が21,500トン。

ムルマンスクにあるRosatom子会社のAtomflotのサイトに錨で留められているが、10パーセントの容量で稼動した。


Akademik Lomonosov
原子力船向け小型原子炉「KLT-40」の改良機2基を搭載 し、電気出力7万kwと毎時500万kcalの熱供給能力を持つ。住民20万人の街の電力をまかなえる。
動力機関を持たないため、移動する際はタグボートに引っ張られながら航行する。


津波やその他の自然災害リスクに対して十分な安全マージンを備えて設計してあるという。

浮体原子力発電所は、小型、軽量、一定のコストという長所を持つ。移動ができる原子力発電所ということで、近くに停まれる港がなく、燃料が運べない極東や極北の地域での作業などに活用される。

3年から5年の間給油の必要もなく連続して稼動することができるため発電コストを大幅に削減する。

2010年に造船所が破産して開発が止まったが、2012年に新たな契約により開発を再開した 。

2018年4月末にサンクト・ペテルブルグで2台の船により曳航され、進水した。その後、バルト海、北海、ノルウェー海を通ってムルマンスクに到着、ここで核燃料を投入した。

今後、一連の機能性テストと安全性テストが実施され、最終段階ではフル稼働する。

その後、北極海航路を5000キロえい航され、2019年秋にチュクチ自治管区 ペヴェク(Pevek) 港に運ばれる。

当初はサンクト・ペテルブルグで核燃料を投入し、テストが完了してから ペヴェクに輸送する計画であったが、通過諸国からの反対で、ムルマンスクでの核投入に変更した。

ペヴェクには44年稼働のビリビノ熱併給原子力発電所(12,000kw×4基)と、70年 稼働のチャウンスカヤ地熱発電所(34,500kw)があるが、老朽化が進んだこれらの発電所をサポートする 。

Rosatomでは大量建造のためのラインを計画しており、既にアフリカ、ラテンアメリカ、東南アジアの買い手候補との話し合いを始めているとされる。グリーンピースによると、中国、アルジェリア、インドネシア、マレーシア、アルゼンチンを含む15カ国が関心を示している。石油・ガス開発のための電力源としても検討されている。

グリーンピースはAkademik Lomonosovを Floating Chernobyl」や「Nuclear Titanic」と呼び、大惨事が起こることを懸念している。

2018年4月に声明を発表、最大の懸念材料のひとつは「船体の底が平らなこと」で、浅瀬に乗り上げず海岸線に近付くことができる反面、 津波やサイクローンに弱いとしている。

今後、他の地域で使用されることとなると、北極海だけでなく、人口密度の高い地域での事故が発生することを恐れるとしている。

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