原発問題についての中西経団連会長発言

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経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)が 昨年末の報道各社とのインタビューで、今後の原発政策について 次のように述べたとされる。(2019/1/5 東京新聞)

東日本大震災から8年がたとうとしているが、東日本の原発は再稼働していない。

国民が反対するものはつくれない。全員が反対するものをエネルギー業者や日立といったベンダーが無理につくることは民主国家ではない。

真剣に一般公開の討論をするべきだと思う。

東京新聞はこの発言について、以下のように分析している。

中西氏が会長を務める日立の前会長の川村隆氏は現在、東京電力ホールディングスの会長を務める。本来なら中西氏は原発の推進に回ってもおかしくない立場だ。

それにもかかわらず、中西氏が国民的議論の必要性を指摘するのは、日立の英国への原発輸出計画を通じて、コスト面からの原発への逆風を身をもって感じているからにほかならない。
日立と英政府は英中西部のアングルシー島で原発建設を計画しているが、安全対策の強化で必要な投資額は当初の2兆円から1.5倍の3兆円まで膨張。採算が合わないため、暗礁に乗り上げようとしている。

一方で、再生可能エネルギーのコストは急低下しており、日本の原発輸出計画はトルコやベトナムなどでも相次いで行き詰まっている。


日立には、このままでは経産省の政策に沿って海外の原発会社を買収した結果、大損失を被った東芝の「二の舞い」になりかねないとの危機感もあるとみられる。

原発への逆風は国内でも同様。国民の反発が強いのに無理に進めれば、安全対策は膨張し、採算をとるのは困難だ。

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日立は2019年1月17日、英国のHorizon Projectを凍結すると発表した。民間企業としての経済合理性の観点から、判断したとしている。
減損損失等 約3000億円を計上する予定。

これまでの交渉では、日立、日本政府・企業、英国政府・企業が3千億円ずつ出資、残り約2兆円を融資で賄まかなう案が検討されてきた。
ところが、日立が当てにしていた東電が難色を示したのをはじめ必要な資金が集まらず、このままでは傷が広がるばかりだとして、すでに昨年12月の段階で計画断念の意向を英政府に伝達していた。

同社では、「コストを民間企業の日立が全て負担することには限界がある」としている。
英国側の支援を求めたが、メイ首相は1月10日の安倍首相との会談後に、「最終的には会社の経営判断次第だ」と述べた。

2018/8/22 日立の英原発計画がピンチ

2017年11月には、東芝が、英国における原子力発電所新規建設事業からの撤退を決定し、連結子会社のNewGeneration (NuGen)を解散すると発表している。

 2018/11/9 東芝、英原発事業を清算

また、政府や三菱重工業などの官民連合がトルコの原子力発電所の建設計画を断念する方向で最終調整に入った。

2018/12/13 三菱重工、トルコ原発計画断念へ

なお、日立の発表を受け、世耕経済産業大臣はエネルギー政策に大きな変更はないと述べた。

「(日本政府としては)将来にわたって責任あるエネルギー政策を進めていく上において、原子力を含め、あらゆる選択肢・可能性を追求していく。」

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不思議なことに、中西会長のこの発言は、一部メディアは取り上げたが、大手新聞、テレビは東京新聞以外は全く取り上げていない。

1月1日付の日本経済新聞はインタビュー記事を載せているが、該当部分は次の通り。

「日本のエネルギー問題は危機的だ。コストが高く、世界から批判され、再生エネルギーを増やせず、投資は停滞している。11年の東日本大震災から3年くらいは世界中が『仕方ない』と言っていたが、最近では同情はない。どうするか真剣に討論すべきだ」


ところが、中西会長の、原発再稼働「どんどんやるべき」との、全く逆の発言が各紙に大きく取り上げられた。

2019/1/15 日本経済新聞

経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は15日の記者会見で、停止中の原子力発電所に関し「再稼働はどんどんやるべきだ」と述べた。「再生可能エネルギーだけでまかなえるとは思っていない」とも語った。

経団連発表の「定例記者会見における中西会長発言要旨」の「エネルギー問題」の箇所は以下の通り。

【エネルギー問題】

エネルギー問題については、2030年のエネルギー基本計画の実現、パリ協定に基づく削減目標の達成など課題が山積している。先のCOP24では、先進国と途上国の溝を埋めるという難しい課題はあったものの、会期延長の末、「パリ協定作業計画」が取りまとめられ、パリ協定を具体化するステップへと進むことができた。経団連も、現地に代表団を送り、グローバル・バリューチェーンを通じて温室効果ガス削減に取り組むことを、COP24の場で積極的に訴えた。

エネルギー問題については、資源エネルギー庁、経済産業省だけでなく、外務省、環境省、財務省なども関係する横断的な課題だという問題意識を持っている。政、官、産、学で真剣に議論していく必要がある。

近年の猛暑や自然災害の激甚化は地球温暖化が一因ともいわれている。温室効果ガスの削減は地球規模の課題である。翻って日本の現状を見ると、エネルギーの9割近くが化石燃料由来である。東日本大震災直後ならいざしらず、8年経過した段階で、国際社会はこの現実をよしとしてくれない。

原発の再稼働が進まないことも直近の課題であり、積極的に推進するべきである。安全性の議論が尽くされていても、地元の理解が得られない状況に立ち至っている。その説得は電力会社だけでできるものではなく、広く議論することが必要になっている。それにもかかわらず、原子力について真正面からの議論が足りていない。

仮に原子力をベースロード電源として使わない場合、長期的に見て、何が人類のエネルギー源になるのか、冷静に考えてみるべきだ。再生可能エネルギーだけで賄うことは到底不可能である。原子力技術を人類のために有効に使うべきである。


中西会長の「国民が反対するものはつくれない」発言から2週間後の「どんどんやるべき」発言について、憶測が飛び交っている。

日刊ゲンダイは、安倍官邸から怒られたのではないか、という見方が流れていると報じている。

原発推進は安倍政権の基本政策なのに、『国民が反対するものはつくれない』と異を唱えた。安倍官邸から激怒されておかしくありません。世論調査では反対が多数ですからね。それで慌てて官邸に聞こえるように"原発推進"を叫んだのではないか、とみられています」(財界関係者)

しかし、この経団連会長の重大発言を、マスコミがろくに報道すらしないのはどうしてなのか? 

ジャーナリストの高野孟氏はこう述べている。

消えた経団連会長の重大発言......。権力による言論封殺なのか、それとも経団連官僚からマスコミのほとんどまでが結託した"忖度"なのか。この国ではどうも、ボーッと生きていると、国の運命に関わるような重大ニュースもいつのまにか消されて「なかったこと」にされてしまうようである。

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