大日本住友製薬が米国で年約1800億円を販売する主力薬「ラツーダ」の 物質特許は本年1月2日に失効した。
しかし、用途特許や製剤特許はなお有効であり、昨年12月に後発薬各社との間で和解が成立し、後発薬の登場を2023年2月以降に4年遅らせることに成功した。
業界紙の取材に応じた野村博社長はこれにより「4年で4000億円以上のキャッシュフローが生み出され、成長投資に振り向けたい」と話した。
重点とする「精神神経」「再生・細胞医薬」の分野で「15年後に世界のリーダーになることをめざす」と語り、再生医療では米国に進出する方針を打ち出した。
非定型抗精神病薬「LATUDA」(一般名:ルラシドン塩酸塩)
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大日本住友製薬はこれまで、後発薬企業がFDAに簡易新薬申請(ANDA:Abbreviated New Drug Application)を提出したのに対し、特許侵害訴訟をおこない、勝訴している。
1)物質特許
2015年1月14日、後発品申請(ANDA)を行ったEmcure Pharmaceuticals、Emcure Pharmaceuticals USA、InvaGen Pharmaceuticalsに対し、物質特許の侵害を理由として、特許侵害訴訟
その後、Teva Pharmaceuticals USAおよびTeva Pharmaceutical Industriesを追加
第一審で地裁は特許侵害を認め、物質特許のクレームは有効かつ法的強制力を有するという判決および恒久的差し止め命令を下した。
2018年4月16日、連邦巡回区控訴裁判所が第一審によるクレーム解釈を支持した。
但し、物質特許は2019年1月2日に失効した。
2)用途特許&製剤特許
2018年2月13日、後発品申請(ANDA)を行ったEmcure PharmaceuticalsおよびAmneal Pharmaceuticals に対し、用途特許の侵害を理由として、特許侵害訴訟
2018年2月23日、下記15社を追加Accord Healthcare、Amneal Pharmaceuticals、Aurobindo Pharma、Dr. Reddy's Laboratories、First Time U.S.Generics、InvaGen Pharmaceuticals、Jubilant Generics、Lupin、MSN Laboratories Private、Par Pharmaceutical、SUN PHARMA GLOBAL FZE、Teva Pharmaceuticals USA、Torrent Pharmaceuticals、Watson Laboratories,Zydus Pharmaceuticals (USA)
2018年5月 製剤特許に基づく請求を追加
2018年12月 和解成立
本訴訟の提起後、本訴訟の追行と並行して、裁判所からの指示等を受けて被告各社との間で個別の協議を実施した 。
その結果、訴訟の取下げや和解契約による訴訟の終結などを通じて本訴訟の被告数は減少していたが、2018年11月、全ての被告との間で和解が成立した。
裁判所への必要書類の提出と確認の手続きが全て完了し、2018年12月3日付けをもって正式に本訴訟が終結した。和解契約に基づき、本訴訟の被告であった複数の後発品メーカーは、2023年2月20日以降本製品の後発品を販売することができ る。他の和解条件は非開示。
なお、Emcure Pharmaceuticals、Amneal Pharmaceuticalsと他1社は用途特許を無効とする「パラグラフIV」を提出したため、特許侵害訴訟を提起した。現在、なお継続中。
パラグラフIVは新薬の特許が、無効、法的強制力がない、または後発薬の製造、使用、もしくは販売によって侵害されることはないと主張するもの。
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