マレーシアのRAPID計画、間もなくスタート

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マレーシアの国営石油会社PetronasとSaudi Aramco が270~280億ドルを投じてマレーシア南部ジョホール州 Pengerangで建設してきたRAPID計画(日量30万バレルの精油所と石油化学コンプレックス)が間もなく正式にスタートする。

2018年11月29日にメカニカルコンプリ―ションとなり、それ以降、試運転を続けており、1月後半に原油蒸留を開始する。
2018年9月に最初の原油 200万バレルが現地に到着している。

Project RAPIDRefinery and Petrochemical Integrated Development )は石油精製から石油化学までの一貫生産プロジェクトで、2011年5月にNajib Razak首相が建設を発表した。既存の同国の石油、ガス、石化設備と合わせ、マレーシアを地域の石油産業のハブにするという政府の方針に基づく。

東洋エンジニアリングは2014年8月21日、RAPIDのうち、中核をなすスチーム・クラッカー・コンプレックスを一括受注したと発表した。下記プラントを建設する。

エチレン、ガソリン熱分解、ブタジエン抽出、ベンゼン分離、MTBE、用役その他

2014/8/25 東洋エンジニアリング、マレーシアで大規模石化プラント受注  

製油所関連の建設は、下記各社が受注した。

残油流動接触分解装置 (RFCC)、LPG処理装置、プロピレン回収装置、caustic中和装置 consortium of
CTCI Corp.(中鼎工程公司)
千代田化工
Synerlitz (Malaysia) Sdn. Bhd.
MIE Industrial Sdn. Bhd.
原油蒸留装置、常圧残油脱硫装置、水素回収・供給装置 Sinopec Engineering (Group) Co. Ltd.
ケロシン水素化装置、ディーゼル水素化装置、ナフサ水素化装置ほか Tecnicas Reunidas SA(スペイン)
アミン回収装置、硫黄回収装置、Sour water 除去装置、液体硫黄貯蔵装置、硫黄固体化装置 Petrofac International (UAE) LLC

付帯設備としては、コージェネレーション設備(1300 MW)、LNG受入基地、LNG再ガス化設備、空気分離装置、 真水供給設備、原油・製品タンク、ユーティリティーなどがある。

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Saudi Aramco は2017年2月28日、 RAPIDの建設に70億ドルを投資すると発表した。

Saudi Aramco はRAPID refineryのフィードストックの70%を供給する。天然ガス、電力、その他用役はPETRONASが供給する。

2017/3/2 SaudiAramco、マレーシアのRAPID計画に参加 

両社は2018年3月、Share Purchase Agreement を締結し、石油精製、石油化学事業を50/50で運営することとした。

2018年5月、50/50 JVの社名を決定した。

石油精製はPengerang Refining Company Sdn Bhd  略称 PRefChem Refining

石油化学はPengerang Petrochemical Company Sdn Bhd  略称 PRefChem Petrochemical

全体を "PRefChem" と呼ぶ。

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PRefChem Refining は日量30万バレルで、低硫黄ジェット燃料、自動車用ガソリンとディーゼルなどを生産するとともに、PRefChem Refiningに原料を供給する。

PRefChem Petrochemical については、製品及びその能力などは明らかにされていないが、断片的に以下の発表が行われている。

 ナフサクラッカー
 過酸化水素と酸化プロピレン
EvonikとPetronasは2013年1月、過酸化水素、1-ブテン、オキソ製品のJVを設立する覚書を締結した。

報道では過酸化水素は25万トン、1-ブテン 11万トン、イソノニルアルコール 22万トンとなっている。

酸化プロピレンはEvonikとThyssenKrupp Uhdeが開発したHPPO processを採用するとされている。


 ポリエチレン

INEOS Technologiesは2012年11月、LLDPE/HDPE(350千トン)計画に Innovene G 技術が採用されたと発表した。


 ポリプロピレン

Lyondellbasellは2012年12月、PP(2系列合計 900千トン)計画に Spheripol PP 技術が採用されたと発表した。


 合成ゴム(中止)

イタリアのEniの子会社の Versalis とPetronasは2013年11月、合成ゴム(4製品)の製造販売のJVの設立契約を締結した。Petronasが60%、Versalisが40%を出資するとされた。

しかし、この計画は2016年4月に取り止めとなった。

市場の動向や採算性が低いことなど、諸般の事情を勘案したとしている。


 Specialty chemical products (取り止め)

BASFとPetronasは2012年3月、specialty chemical products のJV設立の覚書を締結した。
製品は、イソノナノール、ポリイソブチレン、非イオン系界面活性剤、メタンスルホン酸、炭素繊維プリカーサなど

しかし、両社は2013年1月、合意に達しなかったとして、取り止めた。

 Specialty chemical products

Evonik とPetronas は2013年1月、下記製品のJV設立の覚書を締結した。

過酸化水素 250,000トン、イソノナノール 250,000トン、1-ブテン 110,000トン

  Ethylene Glycol

Petronas は2015年12月、シェル技術によるEthylene Glycol 年産74万トンプラントの建設を韓国のSamsung Engineering に発注した。
合わせて、上記のポリエチレン 35万トンプラントも発注した。

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