昭和電工の決算が2月14日に発表された。
増収で大増益となり、配当も増やした。
同社ではこれを機に、当期に226億円の減損損失を計上している。
昭和アルミニウム缶の飲料用アルミ缶事業(減損額88億円)、リチウムイオン電池材料事業(46億円)、彦根事業所の遊休資産(同60億円)、先端技術開発研究所(19億円)など。
単位:億円 (配当:円) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
||
2016/7/1付けで10株を1株に株式併合した。2016年下期以降は実際は10倍の配当(2016/下は30円) |
営業損益の推移は下記の通り。(億円)
16/12 | 17/12 | 18/12 | 増減 | 19/12予想 | |
石油化学 | 207 | 334 | 203 | -130 | 180 |
化学品 | 138 | 165 | 174 | 9 | 150 |
エレクトロニクス | 139 | 219 | 124 | -95 | 125 |
無機 | -58 | 71 | 1,324 | 1,254 | 1,480 |
アルミ | 44 | 67 | 49 | -18 | 55 |
その他 | 18 | 6 | 29 | 23 | 15 |
全社 | -68 | -84 | -104 | -20 | -105 |
合計 | 421 | 778 | 1,800 | 1,022 | 1,900 |
石油化学は4年に一度の定期修理で減益、エレクトロニクスもハードディスクメディアの減収により減益となった。
これに対し、2016年12月期には赤字であった無機部門が大増益となった。
昭和電工の説明:
黒鉛電極の生産は、顧客である電炉鋼業界の増産を受け前期に比べ増加した。 黒鉛電極事業は、中国の環境政策の厳格化に伴う電炉鋼生産の拡大、旺盛な米国市場を始めとする世界的な電炉鋼生産の増加等により需給が逼迫したため国際市況が大きく上昇し、併せて前年下期の昭和電工カーボン・ホールディング GmbH の連結子会社化の通期寄与もあり大幅増収となった。
黒鉛の需給が世界的に逼迫しており、販売価格が2018年平均で前年比で約4倍になった。そのなかで、買収工場がフルに寄与したため、大増益となったもの。
背景については昨年8月に説明している。
昭和電工は2016年10月、ドイツのSGL Carnbon GmbH より黒鉛電極製造の子会社 SGL GE Holding GmbHを買収すると発表した。 ドイツ、オーストリア、スペイン、アメリカ(2ヵ所)、マレーシアの6カ所に製造拠点を持つ。他方、昭電は、大町、 米国South Carolina(Showa Denko Carbon)、中国四川(四川昭钢炭素)に製造拠点を持つ。
黒鉛電極は、電気炉による製鋼でスクラップを溶かして鉄へリサイクルするときに、導電体としてなくてはならない中心的素材で、約1600℃の高温になってスクラップを溶かす。
鉄1トンをつくるのに2キログラム弱の黒鉛電極を使う。この黒鉛電極の産業は近年厳しい事業環境にあり、大手から下位まで軒並み赤字に陥っていた。高炉を中心とする中国鉄鋼メーカーの過剰生産で、電炉の操業度が世界的に低下し、消耗品である黒鉛電極の需要も細っているからだ。
その中での買収は、必ずしも規模拡大を目的としたものではなく、一番の狙いは「再編による徹底的なコスト削減」にある。
昭和電工は再編後に生産体制見直しや管理部門の機能集約などで60億円以上のコスト削減が可能と試算しており、2019年での事業黒字化を目指した。
昭和電工にとって幸運なことに、買収完了の頃から状況が一変した。
中国には地条鋼という違法鉄鋼が流通していた。成分や品質の安定しない、環境にも悪影響を与える粗悪な鉄鋼・鋼材である。
中国政府は2017年6月末までに違法な地条鋼を全て閉鎖することを決めた。
その結果、それまで安価で出回っていた鉄鋼が不足し、代替として鉄スクラップから鉄鋼を生産する電炉での生産が急増、黒鉛電極の需要が急増、価格が急騰した。
また、黒鉛電極はニードルコークスとピッチを捏合したのちに成形するが、EVに使用されるリチウムイオン電池の負極材としてニードルコークスが使用され始めたことも、ニードルコークスの需給逼迫に追い打ちをかけた。
2018/8/13 昭和電工、2018年6月中間決算、黒鉛電極事業が大増益
昭和電工にとっては、想定外の幸運で、2019年での黒字化の想定が2018年に大幅黒字となった。
但し、こんな状況はいつまでも続くとは思えない。
中国では環境規制に対応した大手企業が黒鉛電極を増産する計画があるほか、原料のニードルコークスの需給も2019年から緩和する見通しで、価格も元に戻る可能性がある。
コメントする