食道がんの光免疫療法の治験 

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国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)は2月21日、近赤外光を使ったがん治療法「光免疫療法」による食道がんを対象にした臨床試験(治験)を始めることを明らかにした。


ソース:https://www.mugendai-web.jp/archives/6080


これまでの光免疫療法の治験は頭頸部がんが対象で、他の部位では初めて。

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現在の癌治療では「手術」「放射線療法」「化学療法」の3つの方法が主流になっているが、これらの治療にはいずれも副作用が付いてくる。「放射線療法」「化学療法」は癌細胞を殺すが、正常細胞も殺す。副作用を最小限にするため、「分子標的薬」が開発されてきたが、その数はまだ少ない。

米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆・主任研究員らの研究チームは2011年11月6日のNature Medicine で初めて「光免疫療法」を報告した。

この報告は注目を集め、オバマ大統領が2012年の一般教書演説で「米政府の研究費によって、癌細胞だけを殺す新しい治療法が実現しそうだ」と紹介し、2014年にNIH長官賞を受賞した。

小林主任研究員は2011年設立のバイオベンチャー企業のAspyrian Therapeutics, Inc. と組み、2015年4月30日にFDAの計画承認を受け、治験を開始した。


概要は次のとおり。

1) 癌にくっついて熱で殺す

癌が生体で増殖し続けるのは、癌の周りに「制御性T細胞」が集まり、異物を攻撃する免疫細胞の活動にブレーキをかけて守っているためである。

制御性T細胞に結びつく性質を持つ「抗体」に、波長700nmの近赤外線を受けると光エネルギーを吸収し、化学変化を起こして発熱する「IR700」と呼ばれる色素をつけ、肺癌、大腸癌、甲状腺癌をそれぞれ発症させたマウスに注射した。

体外から近赤外光を当てた結果、約1日で全てのマウスで癌が消えた。
光を当てた約10分後には制御性T細胞が熱で大幅に減り、免疫細胞「リンパ球」のブレーキが外れて、癌への攻撃が始まったためとみられる。

このための光は、光化学反応を効率よく起こせるだけの波長の短い光で、なおかつDNAに損傷を起こさないために可視光よりも長い波長の光である必要と、体内の光吸収物質に吸収されずに体の深部にまで到達する光である必要があり、その条件に合致するのが700nm あたりの近赤外領域の光である。

2) 光を当てない癌も消える

さらに、1匹のマウスに同じ種類の癌を同時に4カ所で発症させ、そのうち1カ所に光を当てたところ、全ての 癌が消えた。
光を当てた場所で癌への攻撃力を得たリンパ球が血液に乗って全身を巡り、癌を壊したと考えられる。

この治療で壊れなかった局所のがん細胞や近赤外光の到達できなかった場所のがん細胞、ひいては遠隔臓器に転移したがん細胞にも効果を起こせる可能性があり、「転移があっても効果的に治療できる方法になると期待できる」と話す。

3) 癌だけを殺せる!

この薬は癌細胞にくっつかない限り、体に害を与えない。
癌細胞にくっついて初めて、近赤外線を当てるとそのくっついた癌細胞を殺す。

2016/8/22 光免疫療法による癌治療 

楽天の三木谷浩史会長兼社長は、新しいがん治療法として注目される「光免疫療法 : Photoimmunotherapy」の商業化を進めている米ベンチャー企業、Aspyrian Therapeutics, Inc.に2割超出資して持ち分法適用会社とすることを明らかにした。

2017/11/28 楽天、がん治療に参入 光免疫療法Aspyrian Therapeutics に出資

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日本での初の臨床試験が2018年3月に国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で、再発頭頚部がん患者を対象に 行われた。

東病院では、米ベンチャー企業、Aspyrian Therapeutics, Inc の計画のもと、実施した。

対象は標準治療法がない局所再発された咽頭がんなどの頭頸部扁平上皮がん 。

本治験で使用する薬剤はがんの表面にあるたんぱく質EGFR(上皮成長因子受容体)」 (がん細胞が増殖するための信号を細胞内に伝える役割を果たしているたんぱく質)に結びつく抗体を使 う。

その抗体に近赤外線によって反応を起こす化学物質を付静脈注射で体内に入れ る。

抗体はがん細胞に届いて結合近赤外線の光を照射すると化学反応を起こしてがん細胞破壊される。

このときは赤色光を体の表面から当てていた。


今回の治験は、医師が自ら計画して実施する。対象は既存の治療では効果がないと判断され、転移がなく比較的全身状態が良い食道がん患者数人程度。主に安全性を確認する。

内視鏡を使って体の内側からがんに光を照射する。大腸がんや胃がんなどに応用する先駆けの試験となる。

同病院の土井俊彦副院長は「食道がんには、頭頸部がんの治験で使っている薬が結びつくタイプがあり、効果を期待できる可能性がある。効果が確認されれば、高齢者や他に病気を抱えていて手術が難しい患者への適用が検討できるかもしれない」と話す。

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