英国の混迷続く

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英議会は2月14日、メイ首相が先にまとめたEU離脱協定案の修正を求める政府方針に賛同するか採決を行い、反対多数で否決した。

2019/2/16  英下院、首相のBrexit 交渉方針を否決

メイ首相は2月26日までにEUとの合意案を議会に示す意向であったが、2月24日、「EUと協議中のため、離脱協議案の是非を問う採決は、3月12日までに実施する」と先送りした。

このままでは3月29日に合意のないまま離脱する可能性が強まった。


このなかで野党労働党、与党保守党で党の方針への不満で離党が始まった。

2月15日、労働党下院議員7人が離党を表明した。2月20日に更に1名が離党した。

EU残留派が中心で、Corbyn党首の急進左派的な姿勢(「党は左派に乗っ取られた」)、EUと関税無しで貿易できる関税同盟に恒久的に残ることを目指す離脱方針に加え、反ユダヤ主義的な態度も問題にする。

多くは離脱の是非に関して2度目の国民投票の実施を求めるが、党首は賛成していない。

2月20日には保守党の3議員がメイ首相の方針に反発し離党を表明した。

「強硬離脱派のグループが強く優先される党に残ることはできない」 、「悪い合意か合意なき離脱かの二者択一は拒否する」としている。

両党を離党した11名は独立グループとして行動する。

現在の議席は次の通り。2月17日にウェールズを選挙区とするベテラン労働党議員が死去した。

議員 議長他
不投票
投票者
当初 現在
保守党 318

離脱 3

315 2 313
民主統一党*1 10 10   10
(与党) (328) (325) (323)
労働党 256

死亡 1
離脱 7+1

247 2 245
スコットランド国民党 35 35   35
自由民主党 11 11   11
独立党 8 8   8
シン・フェイン党*2 7 7 7 -
プライド・カムリ 4 4   4
緑の党 1 1   1
独立グループ -

離党者 11

11 11
合計 650 649 11 638
* 1   北アイルランド地域政党で閣外協力
* 2 シン・フェイン党はアイルランドのナショナリズム政党  
エリザベス2世女王への宣誓を拒否して登院せず、議員歳費も受け取らず

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労働党のCorbyn党首は、2015年9月に党首となって以来、離脱方針について党として団結せず、明確な姿勢を示さなかったという批判がある。

そのCorbyn党首は2月6日、メイ首相に宛てた書簡でEU離脱協定に5項目を求めた。2月10日にメイ首相はこれに回答した。

要求と回答は次の通り。

① 英国全体がEUと恒久的な関税同盟を結ぶと同時に、EUと域外諸国との貿易協定に対する発言権を得ることを求める。

A permanent and comprehensive UK-wide customs union. 
This would include alignment with the union customs code, a common external tariff and an agreement on commercial policy that includes a UK say on future EU trade deals.

メイ首相はこれに対し、「完全に摩擦のない貿易を行うにはEU単一市場への残留が必要となるが、そうなれば労働党もマニフェストで反対したヒトの移動の自由を受け入れることになる」と指摘した。

② EU単一市場との緊密な連携

Close alignment with the single market. This should be underpinned by shared institutions and obligations.

これについては離脱協定に付随する政治宣言で、「単一市場外で最大限に緊密な関係を築く方針を示した」としている。

③ EU並みの労働者の権利と保護

Dynamic Alignment on rights and protections so that UK standards keep pace with evolving standards across Europe as a minimum, allowing the UK to lead the way.

離脱協定や政治宣言で労働者の権利および環境保護で後退しないことを約束したと説明した上で、この約束を国内法化することを新たに提案した。

④ EUの規制監督機関への参加

Clear commitments on participation in EU agencies and funding programmes, including in areas such as the environment, education, and industrial regulation.

メイ首相は、航空・医薬品など規制の多い分野では最大限に緊密な関係を築くとした上で、今後のEU規制の変更については歩調を合わせるかどうかを下院に問う姿勢を示した。

⑤ EUとの安全保障上の連携

Unambiguous agreements on the detail of future security arrangements, including access to the European arrest warrant (欧州逮捕状) and vital shared databeses.

政府と労働党の求めるものは一致していると回答。

労働党離党議員は、党首が国民投票を要求しなかったことに反発した。

逆に与党保守党の離脱強硬派は、首相がソフト路線に舵を切ったとみて反発している。


付記

英国の野党・労働党のCorbyn党首は2月25日、党として2度目の国民投票の実施を支持するとの声明を発表した。

「合意なき離脱や政府の離脱案を拒否するために、2度目の国民投票の提案やサポートに尽力する」と宣言した。まずはEUの関税同盟への恒久的な残留などEUとの関係を維持した離脱案を議会に提出し、それが否決された場合に再投票を支持する。

ーーー

与党保守党の議員団は2月22日、もし政府が合意のないまま離脱に突き進むなら、多数の閣僚が抗議辞任するとメイ首相に警告した。

EU残留派も離脱派も加わる議員団は、メイ首相がEUと再交渉した協定が下院で過半数の支持を獲得しない場合は、ブレグジットの延期などを求める代替案を支持するかもしれないと話している。

2月23日、閣僚3人(Amber Rud 雇用・年金相、Greg Clark 民間企業・エネルギー・産業戦略相、David Gauke 司法相)が英大衆紙に寄稿し、3月末の離脱の延期を求めた。

「もし2月25日の週にEUと合意できなければ、私たちは離脱を延期すべきだ」
合意なき離脱となれば「英経済は短期、長期の両面で深刻なダメージを受け、(英への)投資は勢いを失うだろう」

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