豪複合企業Wesfarmers、レアアースのLynasに買収提案

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オーストラリアの複合企業Wesfarmers は3月26日、豪レアアース大手のLynas Corporationに買収を提案したと発表した。
前日の終値に45%のプレミアムを乗せた価格での買収提案で、総額15億豪ドル(約1170億円)となる。

Wesfarmersは、2007年~2008年に流通大手の Coles Group、石炭のCurragh炭鉱、Premier炭鉱及びBengalla炭鉱、更にKmart Tyre and Auto を 売却しており、これらで得た資金で買収する。

Wesfarmersでは、「Lynasへの投資は我々のユニークな事業構成を、より強化するものになる」と述べた。

一方、Lynasでは、「我々が要求したものではない」としたうえで今後、内容を検討するとしている。

付記 Wesfarmersは8月16日のLynasの発表を受け、買収のギブアップを発表した。

Lynasは豪州でレアアース鉱物を採掘しているが、希土類鉱石には、トリウム 232 やウラン同位体等の放射性物質が含まれている。

現在、ライセンスの更新(2019/9/2) のために、何年にもわたって工場に蓄積している廃棄物を処分することを求められており、今後、生産に支障が出る恐れもある。

2019/7/8 豪州のLynas、米国でレアアースの生産JV

Wesfarmersはマレーシアのライセンス更新を買収条件の一つとしていたが、8月16日のLynasの発表では、排水浄化残渣の永久保管設備の場所の承認を得られるのが確実になったというだけであった。

Wesfarmersとしては、これだけでは話を続けられないとし、交渉を中止した。

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豪鉱山企業Lynas は1983年にYilgangi Gold NLとして設立され、1985年にLynas Gold NLに改称し、西オーストラリア州Pilbara地域で金探鉱を行っていた。

2001年6月に金プロジェクトを売却し、社名をLynas Corporation に変更、2002年5月にレアアースのMt.Weld 鉱床の権益100%を取得し、同鉱床の探鉱開発に集中していった。

Mt.Weld 鉱の鉱物資源量は、770万t、酸化レアアース品位12%となっている。
(精測鉱物資源量120万t :品位15.7%、概測鉱物資源量500万t :品位11.8%、予測鉱物資源量150万t :品位9.9%)

第1 フェーズは、投資総額5 億4 千万米ドル、生産能力11,000 トン/年で、2011 年第3 四半期より操業を開始。
第2 フェーズは、投資総額2 億5 千万米ドルで鉱山、および製錬所を拡張(追加生産能力11,000 トン/年)するもので、2012 年第4 四半期より操業を開始。

Mt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送、分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売する。

2010/10/5 レアアース、米・豪・カザフなど生産拡大 

双日と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2011年3月、Lynas に総額2億5千万米ドルを出融資することを決定し、10 年に亘って日本の消費量の約3 割にあたる年間約8,500 トン(±500 トン)以上のレアアース製品を長期供給する契約を締結した。(出資は両社のJVの日豪レアアース㈱を通じて行う)

双日は、Lynasとの間で、同社が生産するレアアース製品の日本市場における独占販売契約および総代理店契約を締結した。

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Wesfarmers は1914年に農村部の協同組合組織として設立された。社名はWestern Australia farmers に由来する。

1940年代までに、小麦・一般商業、石油の小売、羊毛、生畜、皮革および製品の販売、穀物および果物の輸出、保険代理店 等々を扱うようになり、1985年に上場した。

上場以来、買収による多角化を推進し 、現在の事業は多岐に亘る。

Bunnings:home improvement and outdoor living
Kmart Group: department stores
Officeworks :office supplies
Industrial :
Industrials
Chemicals, Energy and Fertilisers、 Industrial and Safety
Others

同社は2017年後半から事業再編を進めており、下記の売却を行った。

流通大手のColes GroupをSpin-off

Kmart Tyre and Auto Service を Continental AGに $350 millionで売却

石炭事業は全て売却

Curragh炭鉱(クイーンズランド州):CoronadoにA$700 millionで売却

Premier炭鉱(西オーストラリア州):兖州炭業股份の子会社Yancoal Australiaに$296.8 millionで売却

Bengalla炭鉱( ニューサウスウェールズ州):New HopeにA$860 million で売却

Bengallaは当初、Coal & Allied (Rio Tinto 80%、三菱商事 20%) が40%、Wesfarmersが40%、台湾電力が10%、三井物産が10% 出資していたが、Coal & Allied は2016年3月に持株をNew Hopeに売却した。

2016/3/14 Rio Tinto、豪州の石炭事業を再編

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