JXTGエネルギー、千代田化工建設、 東京大学、 クイーンズランド工科大学は3月15日、オーストラリアにおいて有機ハイドライドを低コストで製造し、日本で水素を取り出す世界初の技術検証に成功したと発表した。
東京大学が水素サプライチェーン構築を目指す社会連携研究を主催し、有機ハイドライド電解合成技術のJXTGエネルギー、高効率の追尾型太陽光発電システムのクイーンズランド工科大学、水素取り出し技術の千代田化工建設が参画し、2018年12月5日~2019年3月14日に実施された。
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水素を貯蔵・運搬する際には、 LNGの水蒸気改質や水の電気分解等によって生成した水素をタンクに貯蔵し、一旦有機ハイドライドの一種であるメチルシクロヘキサン(MCH) に変換して運搬し、到着地で脱水素する。
千代田化工建設、三菱商事、三井物産、日本郵船の4社は2017年に、次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合を設立し、世界に先駆けて水素の国際間サプライチェーンの実証事業に本格着手した。
ブルネイ・ダルサラーム国に水素化プラント、川崎市臨海部に脱水素プラントを2019年までに建設し、ブルネイで調達した水素を、常温・常圧下で液体の形で日本へ海上輸送し、川崎市臨海部で気体の水素に戻して需要家に供給する。
2017/8/5 千代田化工ほかの国際間水素サプライチェーン実証事業
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今回は、 水の電気分解による水素の輸送だが、水を電気分解してからトルエンを水素化するのではなく、水とトルエンから直接メチルシクロヘキサンを製造する「有機ハイドライド電解合成法」を用いたことで、従来に比べ工程を大幅に簡略化することができた。
従来法:水の電気分解→水素(タンクで保管)→トルエンと反応→メチルシクロヘキサン
今回法:水とトルエンを電気分解→メチルシクロヘキサン
さらに、メチルシクロヘキサン製造に必要な電力として、太陽光発電の電気を用いたことで、製造時にCO2を排出しない「CO2フリー水素」約 0.2kgの製造に成功した。
将来的には、上図と同様、メチルシクロヘキサンを輸送し、輸送先で脱水素する。
今回の技術検証の概要は下図の通り。費用は各社が負担した。
「有機ハイドライド電解合成法」は、JXTGエネルギー、横浜国立大学・光島重徳教授、デノラ・ペルメレック(電極の総合メーカー)、旭化成などが共同開発した。
将来的にはメチルシクロヘキサン製造に関わる設備費を約50%低減することが可能となるとしている。
注:これは水の電気分解で発生させた水素をメチルシクロヘキサンにして輸送する場合との比較である。
上記のブルネイのLNGからの水素との比較では、【LNGコスト+ LNG改質+水素タンク+トルエンの水素化】との比較となる。
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