英下院、政府のEU離脱協定を否決 

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英国の下院は3月12日夜、英政府がEUとの間で前日にまとめた離脱条件(後記)の協定の承認採決を行い、賛成 242、反対 391の大差でこれを否決した。与党保守党から75名が反対にまわり、閣外与党のアイルランド民主統一党も反対に廻った。

採決に先立ち首相は、「国民投票のように、賛否双方の合法的な視点はどちらも強固で平等なもの。そのため、下院では党議拘束を行わないことを確認する」と述べていた。

  議員 議長他
不投票
投票権者 賛成 反対 棄権
当初   現在
保守党 318

離脱 -4

314 2 312 235 75 2
民主統一党 10   10   10 10 -
(与党) (328)   (325)   (322) (235) (85) (2)
労働党 256

死亡 -1
離脱 -7-1-2

245 2 243 3 238 2
スコットランド国民党 35   35   35 35 -
自由民主党 11   11   11 11 -
独立党 8 離脱者 3 11   11 4 6 1
独立グループ 離脱者 11 11 11 11
シン・フェイン党 7   7 7 7
プライド・カムリ 4   4   4 4 -
緑の党 1   1   1 1 -
合計 650  -1 649 4 645 242 391 12


1月15日に賛成 202、反対 432(うち保守党 118、民主統一党 10) の大差で否決されたのに続く2度目の否決。

2019/1/16 英下院、ブレグジット協定を歴史的大差で否決

英議会下院は2月27日夜、3月12日までに英と欧州連合(EU)の合意内容が議会で承認されなかった場合、「合意なき離脱」や「短期間の離脱延期」の賛否を議会に問う方針を賛成多数で可決した。

今回の離脱合意案否決を受け、13日に「合意なき離脱」の採決を行い、これが否決された場合は「6月末までの離脱延期」の採決を行う。


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英国のメイ首相と欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は3月11日夜、仏東部ストラスブールで会談し、離脱協議の懸案だったアイルランド国境問題の見直しに向けた2つの共同文書で合意した。

英国とEUが2018年11月にまとめた離脱案では厳格なアイルランド国境管理の復活を防ぐための「安全策」 (Backstop) として、国境管理の回避策が見つかるまで英国全土を関税同盟に残す規定を盛り込んだ。

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だが英議会が「永久にEUルールに縛られ続ける」と猛反発し、離脱案は1月に大差で否決されていた。

今回、英国がEUのルールに縛られ続けないとする条項を1月に英議会が否決した離脱案に追加し、法的拘束力を持たせたのが特徴である。

第一の文書は Joint legally binding instrument で、EUが英国を永続的に安全策に拘束し続けるのではないとの方針を確認するとともに、双方で安全策を巡り争いが生じた場合、独立した第三者の仲裁機関で処理するとした。

第二はJoint Statementで、北アイルランとアイルランドの国境管理を回避する策を見つけるよう、英国とEUが努力するとした。

ただし、これは実質的に従来案とほとんど変わらない。

北アイルランとアイルランドの国境管理を回避する案は時間をかけても出てくるとは思えない。

EUのバルニエ首席交渉官は3月8日、英側に追加提案したことを明らかにしたが、英側の要求には程遠いものであった。

アイルランド問題の「安全策」をめぐり、EU関税同盟から「一方的に出て行く選択肢を英国に提供することを約束する」と明言したが、その一方で、アイルランドの国境管理の復活を避けるための「安全策」の他の要素は維持されなければならないとも強調し、英国が関税同盟を出て行く場合も、英領北アイルランドだけはEU関税同盟に残していくことを求めた。

北アイルランド紛争の再発を避けため、双方の行き来を自由にしたうえで英国がEUを離脱しようとすれば、北アイルランドを英本土から切り離すしか方法は考え難い。

なお、ユンケル委員長は、EU離脱を延期する場合も、延期は5月23日(欧州議会選挙日)までだと決めつけた。

欧州議会は新議会(2019~2024年)の開会初日時点の全加盟国から直接選ばれた議員で構成することが法的に義務付けられており、今回は7月2日がその日に当たる。
欧州議会選挙は5月23日~26日に行われる。

新たな欧州議会が開会する7月2日以降も英国がEUにとどまる場合、英国は欧州議会選挙を実施する必要がある。


離脱延期の可能性が強いが、離脱を延期しても結局は問題を数カ月先延ばしにしただけに終わる可能性が強い。

トゥスクEU大統領(常任議長)の報道官は、英議会採決の結果、合意なき離脱のリスクが増大したと発言、英政府から離脱延期の要請があればEUは検討するが、「離脱延期とその期間には信頼できる理由」が必要だと語った。

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