マラリアワクチンの臨床試験 開始

| コメント(0)

日本人研究者が創業した米国メリーランド州の創薬ベンチャー VLP Therapeuticsは2月4日、独自技術 i-αVLP (inserted alpha VLP) Technology で開発したマラリアワクチン候補 VLPM01の新薬臨床試験開始届(IND)が米食品医薬品局(FDA)により認可され、フェーズ I/IIa の患者登録を開始したことを明らかにした。Walter Reed Army Institute of Research で臨床試験が実施される。
同社初の臨床入り品目となる。

5月から30人に候補薬を3回ずつ投与し、感染時に速やかに治療できる体制を整えた上で、蚊を使って実際に感染を防げるか調べる。年内には結果が得られる見通し。

2017年にはアフリカを中心に推定2億1900万人がマラリアに感染し、43万5000人が死亡、その6割が5歳未満の子供とみられる。開発中のワクチンはあるが、これまで実用化には至っていない。

ーーー

2013年設立のVLP Therapeuticsは、ウイルス様粒子 VLP (Virus Like Particle) を作る技術を活用し、感染症(マラリア、デング熱など)やがんに対するワクチン開発、および遺伝子治療への応用を目指している。

同社のワクチンは、人工的に作った微粒子に病原体の特定の部位だけをくっつけたものを抗原とする。

ウイルス様粒子 VLP は、正常のウイルスと同様の粒子構造を持つが、ウイルスゲノムを含まないため感染性をもたない。

同社はアルファウイルスのVLPの表面に外来抗原を提示させることにより、抗原特異的抗体を誘導し、様々なワクチンに応用できる新しい技術を開発した。

この i-αVLPは、1つのVLP上に480個の外来抗原を高度な対称性と密度を保ちつつ提示することができる。そのため、免疫個体において、B細胞による抗原認識が効率よく行われ、抗原特異的抗体の産生量を非常に高める特徴を持つ。

一般的なワクチンでは、病原体を弱毒化させたものを抗原とするため、ごくまれに病気を発症させる可能性がある。ゲノムを持たず、体内で増殖しないVLPワクチンにはそうした心配がないため、安全性が高く、ワクチンの効果が期待できるという点が非常に高く評価される。

ーーー

創業者でCEOの赤畑渉博士は、東京大学を卒業後、京都大学で博士号を取得。その後渡米し、NIH (National Institutes of Health)のVaccine Research Center の上席研究員として、この微粒子を使ったワクチンを開発した。

VLPを使ったチクングニヤウイルス(ネッタイシマカ、 ヒトスジシマカなどにより媒介されるウイルス性の伝染病)のワクチン及び 3つの馬脳炎(ベネズエラ、東部、西部)のワクチンを開発。

日米で2社の製薬会社(アールテック・ウエノ、Sucampo Pharmaceuticals)を創業し上場させてきた上野隆司 博士、久能祐子博士夫妻と出会い、自身が開発したワクチンの実用化を進めるために起業を決意した。
夫妻をCo-Founderに加えた。

2人については 2015/8/29 Sucampo Pharmaceuticals、アールテック・ウエノを買収

VLP Therapeuticsは、伝統的なワクチン、標的抗体療法を変革して世界的な満たされていない医療の必要に対応する革新的な治療法を開発すること を使命とする。

VLP Therapeuticsは現在、予防用、治療用のワクチンとがん、感染症、自己免疫疾患、神経疾患を治療する次世代の標的抗体薬を開発中である。

現在のPipeline:

同社のPlatform:





コメントする

月別 アーカイブ