米上院も「国家非常事態宣言」無効決議へ

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米上院は2月14日の本会議で、新たな政府機関閉鎖を回避する超党派予算案を可決した。米下院本会議も14日夜、可決した。

しかし、大統領は2月15日、国境の壁の追加予算獲得のために、「非常事態」を宣言した。ホワイトハウスで「我々が直面する問題を解決する。南の国境の危機を管理できていない。これは選挙公約のためではない。多くの薬物が流れ込んでいる。壁は100%効果がある」と演説した。

2019/2/18 米国予算案 成立、大統領は同時に非常事態宣言で他予算を壁建設に流用へ 

これに対し、米下院は2月26日、国家非常事態宣言を無効にする決議案を245対182の賛成多数で可決した。政権を支える共和党からも13人が賛成した。

米下院 ( 1議席 未確定)

共和党 民主党 合計
賛成 13 232 245
反対 182 0 182
棄権 2 3 5
欠席 2 2
合計 199 235 434


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上院は与党共和党が過半数を占めるが、100議席のうち53議席に過ぎず、4人が無効化に賛成すれば可決する。

2月28日、上院議員4名が下院と同様の決議案(両院のJOINT RESOLUTION)を提出した。

JOINT RESOLUTION

Relating to a national emergency declared by the President on February 15, 2019.

Resolved by the Senate and House of Representatives of the United States of America in Congress assembled, That, pursuant to section 202 of the National Emergencies Act (50 U.S.C. 1622), the national emergency declared by the finding of the President on February 15, 2019, in Proclamation 9844 (84 Fed. Reg. 4949) is hereby terminated.

提案者は野党民主党の2名に 共和党のSusan Collins 議員(Maine)とLisa Murkowski 議員(Alaska)が加わっている。直ちに共和党のThom Tillis議員 (North Carolina) が賛成すると述べた。

3月3日に共和党の Rand Paul 議員(Kentucky)が賛成を表明、これで上院の決議が可決される可能性が生じた。Paul 議員は共和党から10人は賛成すると述べている。

上院は3月18日~3月22日が休みのため、3月15日までに投票が行われると見られている。

しかし、両院が決議案を可決したとしても、トランプ大統領は、 その場合、「100%拒否権を行使する」と明言している。
拒否権行使の場合、議会が覆すためには上下両院それぞれの3分の2の同意が必要で、現状では、拒否権を覆すのは困難との見方が大勢だ。

下院の2/3 は290で、共和党から50名の造反が必要となる。

上院の2/3は 67で、共和党から20名の造反が必要。

争いは裁判所に移る。

大統領の非常事態宣言については、2月18日 にカリフォルニア州を筆頭に16の州がカリフォルニア州北部地区の連邦地裁にトランプ政権を提訴した。

California、Colorado、Connecticut、Delaware、Hawaii、Illinois、Maine、Maryland、Michigan、Minnesota、Nevada、New Jersey、New Mexico、New York、Oregon、Virginiaの各州で、Maryland 以外は全て民主党知事。

トランプ大統領が非常事態を宣言した2月15日には、テキサス州の地主3人と環境団体が憲法違反と所有権侵害を訴えて、裁判を起こしている。

大統領が拒否権を発動したとしても、与党の共和党が多数の上院が大統領の決断に反対の意思を示せば、州政府や市民団体から提起されている違憲訴訟に影響が出るのは必至 である。

また、議会共和党との関係がぎくしゃくすればトランプ氏の再選戦略にも影を落とすことになる。

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