Saudi Aramco、SABIC株式の70%を取得

| コメント(0)


Saudi Aramcoは3月27日、SABICの株式の70%を政府系ファンドのPublic Investment Fund (PIF) から691億ドルで買い取ることで正式に合意したと発表した。

SABICの残り30%はSaudi Stock Exchange(Tadawul )に上場されているが、これはそのままとなる。

ーーー

Saudi Aramco は2018年7月19日、同社がSABICの経営権取得に興味を示しているとの報道に対し声明を発表した。

同社は事業ポートフォリオの最適化を進めるなか、石油化学を含め川下事業への進出を計画している。

これに伴い多くの買収や株式取得などの可能性を国内、海外で検討しおり、その一環としてサウジアラビアの政府系ファンドである Public Investment Fund (PIF)との間で、同ファンドが保有するSABIC株の取得について、きわめて初期段階の交渉を持っていることを認める。
交渉が初期段階にあるため、今後株式取得が具体化しない可能性もある。
またSABICの公開株を取得する考えはない。

サウジ政府がSaudi Aramco に対し、国内及び海外での社債発行と銀行借り入れで資金を調達し、SABICのPIF 所有分のほとんどor 全てを購入することを求めているという。
70%全てを購入すると、PIFは約700億ドルを入手することとなる。

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はサウジ経済の改革も担当しており、PIF のチェアマンを務める。

Saudi Aramcoの所有権も2016年3月に政府から PIFに移管されている。

ーーー

取引により、全体の関係は次のようになる。

Aramcoは買収資金を自ら調達し、PIFに691億ドルを支払う。

ーーー

この取引の狙いは2つある。

第一はムハンマド皇太子が進める経済改革のための資金捻出である。

サウジ政府は2016年4月25日、2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」を国王主宰の閣議で承認した。

石油依存型経済から脱却し、投資収益に基づく国家を建設していく。

公的投資基金(PIF)の資産を6,000億リヤールから7兆リヤール(約 2兆ドル)に増やす。

目標を達成するための手段として、
・ 国営石油会社Saudi Aramcoの5%未満の新規株式公開(IPO)、
・ 民営化による透明性の向上と汚職抑制、
・ 軍事産業の育成による国内調達の軍装備品支出の割合を50%まで拡大、
・ 外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度の5年以内の導入
などがあわせて発表された。

サウジ政府は2018年1月1日付で、年内の部分上場に備えAramcoの企業形態を株式売買が可能な Joint Stock Companyに変更させた。

同社の時価総額は2兆米ドルに達する可能性があり、5%の売却で1000億ドルの資金を調達出来る可能性がある。

2018/1/11 Saudi Aramco、上場に備え企業形態を変更 

当初は国外上場候補をNew York、London、Hong Kong の3か所に絞り込んだと報じられた。

しかし、その後、法的リスクや、海外の取引所が企業に求める情報開示の基準が厳しいことなどを懸念し、先ず自国の証券取引所に限定する方針だと報じられた。

エネルギー産業鉱物資源相はテレビのインタビューで、Aramco のニューヨーク上場の条件や訴訟を巡るリスクに懸念を表明した。
ニューヨーク市が、ExxonMobil やBPなどの国際石油会社に対し「気候変動の原因を招いた」として提訴したことを具体例に挙げた。

また、米国では2016年に米同時テロに関与した疑いがある外国政府に、遺族らが損害賠償を請求する訴えを起こすことができる「テロ支援者制裁法(JASTA)」が成立、2018年3月に米国の判事がサウジ政府の要求を却下してサウジ政府を被告とする裁判が開始されることとなった。

サウジ政府が最大株主になるアラムコは、資産差し押さえなどの潜在的なリスクにさらされる。

2016/10/1 米同時テロ遺族のサウジ提訴法案、大統領拒否権を覆し成立

2018/4/6 サウジ政府を被告とする9.11同時多発テロ訴訟、裁判開始へ

上場会社になると、Aramco の確認埋蔵量などのデータを公表する必要が出るが、これに対する反発も根強い。

2018年10月にサウジ人著名記者が殺される事件が発覚し、IPO実現は一段と難しくなった。

このため政府は、PIFが持つSABIC株式をアラムコに売ることで必要な資金を手当てする。


第二はAramcoの将来の体制で、同社は
事業ポートフォリオの最適化を進めるなか、石油化学を含め川下事業への進出を計画している。

Saudi Aramco は住友化学との石油化学 JVのPetro Rabigh を持つ。

2009/4/10 Petro-Rabigh スタート・アップ 

2018/1/10 PetroRabigh 第2期の完工間近 → 完工

Saudi Aramco はDowとのJVのSadara Chemical を設立し、2016年8月にクラッカーをスタートさせ、2016年11月30日に開業式を行っている。

2011/7/26  DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定の付記

Saudi Aramco とSABICは共同で、サウジ国内での原油から化学品までの統合コンプレックス(COTC Complex ) 設立の検討を進めている。

2017/11/30 Saudi AramcoとSABIC、Crude Oil-to-chemicals JVのMOU締結

Saudi Aramco は2018年8月15日、取締役会がサウジと米国での石油化学計画を承認したと発表した。

2018/8/20 Saudi Aramco、サウジと米国での石油化学計画を承認 

Saudi Aramco は2019年2月22日、中国のコングロマリットの中国北方工業公司(Norinco)との間で、遼寧省盤錦市での石油精製・石油化学コンプレックス建設のJV設立の契約書を締結した。

2019/2/26 サウジアラムコと中国2社、遼寧省で石油精製・石油化学コンビナート建設へ

今後はSABICと一体となって事業を進める。

コメントする

月別 アーカイブ