AppleとQualcommは4月16日、Appleの契約メーカー(Contract manufacturers) との間のものも含めて、すべての訴訟を取り下げることで合意した。
合意内容にはAppleからQualcommへの一時金及ぶロイヤリティの支払いも含まれるが、金額は公表されていない。
また両社は、4月1日から6年間のライセンス契約(+2年延長オプション)に加えて、複数年のチップセット供給でも合意した。
付記
米Qualcommは5月1日、1~3月期決算発表の中で、米Appleとの特許紛争の和解により、第3四半期にAppleからキャッシュで45億~47億ドルの支払いを受ける見込みだと発表した。
この金額は、和解金とライセンス契約のライセンス料の一部を含むという。
Qualcomm の発表:
Direct license between Apple and Qualcomm : six years with two-year option to extend
・ Effective as of April 1, 2019
・ Apple will pay royalties to QualcommSettlement includes a one-time payment from Apple to Qualcomm Multi-year chipset supply agreement All worldwide litigation will be dismissed and withdrawn. including claims involving Apple's contract manufacturers Contributes to increased stability for licensing business Reflects value and strength of Qualcomm's intellectural property
Apple側の発表は、事実関係のみ。
to dismiss all litigation between the two companies worldwide
a payment from Apple to Qualcomm.
a six-year license agreement, effective as of April 1, 2019, including a two-year option to extend
a multiyear chipset supply agreement.
iPhoneの5G対応に遅れが生じる中、Qualcommからの半導体調達を再開するために、Appleが特許使用料の支払い条件をめぐって歩みよった可能性がある。
Qualcommは2018年2月発表の5Gモデム「X50」の第二世代の「Snapdragon X55」を本年2月に発表した。今回の和解により、Appleは5G対応のiPhoneを発売できることとなる。
今回の和解を受け、Qualcommに代わってAppleにモデムを供給しているIntelは同日、5G対応のモデムの開発から撤退すると発表した。
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これまで、QualcommがAppleにiPhoneの通信機能をつかさどる半導体モデムチップを供給するという協力関係にあった。
世界シェア首位のQualcommは長年、Appleに対し独占的にこの半導体を供給してきた。
QualcommはAppleに対して半導体の代金だけでなく、それに付随する特許使用料の支払いも求めていた。QualcommはAppleのContract manufacturer にライセンス料の支払を求め、Appleはそれを彼らに支払っていた。
2017年1月、Appleは米国でQualcommを提訴した。連邦取引委員会(FTC)は、2017年1月に、モデムチップセットの不正なライセンス供与に対する裁判所命令を求め、Qualcommを提訴したが、Appleはこれを受け、過去の取引条件の見直しを迫ったもの。 Contract manufacturer に特許料を支払わないよう指示した。
「自社のチップに対して、他社の5倍以上の不当に高いライセンス料を請求している」
「Qualcommが不正なライセンスモデルを構築し、特許技術ごとではなく、販売する製品の単価に応じたライセンス料を求めてくる」
「契約に基づく約10億ドルの払い戻しが滞っている」と主張した。
QualcommはAppleのContract manufacturer に端末卸売供給価格の約5%を特許使用料として要求している。
AppleはQualcommがチップ価格と特許使用料を二重に請求していると主張、「2013年から支払った特許使用料90億ドルを返してほしい」とした。韓国公正取引委員会は2016年12月に、「不公平なビジネスモデル」で独占的地位を築いたとして、Qualcommに対して約10億ドルの課徴金を支払うよう命じた。
この調査にAppleが協力したことに対する報復として、QualcommはAppleへの払い戻しを留保した。
QualcommはAppleの主張を否定するとともに、特許侵害があったとして逆提訴した。
Appleは同年4月、Qualcommに対し、Qualcommとの紛争が解決するまでは、自社のContract manufacturersに対し、Qualcomm製品へのライセンス分の支払いを行わないと通知した。
Qualcommは同年7月、 米国際貿易委員会(ITC)に苦情を申し立て、一部の「iPhone」を含む複数の製品について、米国への輸入を禁止するよう求めた。
AppleとQualcommは世界で80件の訴訟合戦を繰り広げている。Qualcommは中国やドイツで iPhoneの一部販売の差し止め命令を勝ち取っている。
2018年12月3日、Apple はQualcommとの和解を拒否した。2019年4月15日からカリフォルニア州サンディエゴで特許料をめぐる裁判がスタートする予定であった。
2019年3月には、ITCが2件の審理に対する裁定を下した。
ITCは、バッテリー節約技術に関するQualcommの特許を無効とした。Appleはこの件に関して iPhoneの輸入禁止を免れた。
この数時間前にはITCの別の判事が、Appleによるコンピューティングデバイスの電源管理に関する特許1件の侵害を認定し、問題の部品を含むiPhoneの一部旧モデルを米国で販売禁止にするべきだとの判断を示した。この最終決定は7月の予定であった。
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2社の関係は大幅に悪化、Appleは2016年以降、Qualcomm製モデムの搭載比率を引き下げ、代わりにIntel 製モデムを採用している。2018年秋の新モデルからはQualcomm製の製品を排除した。Appleがモデムを自社開発しているといううわさもあった。
これにより、Qualcommの売上高は減少した。
他方、AT&T、Verizon、Samusung電子等が相次いで5G 対応スマホを発売する中、Qualcommから5Gモデムの供給を受けられないAppleは発売できないでいる。
Intelはまだ5Gモデムを発表していない。HuweiのCEOはこのたび、「我々はAppleに対しオープンだ」と述べたが、Huawei製の採用は見込めない。
Appleは最近Samusung電子に5Gチップ購入の意向を打診したがSamusung電子は供給量不足を理由に断った。(中央日報)
コンサルタントは「Appleが来年も次世代 iPhoneを発売できないならば米国をはじめとする世界のスマートフォン市場で競争力を失うだろう」と話している。
現在の5Gスマホはほぼ全て、Qualcommの半導体とGoogleのOSのAndroid を使っている。
このQualcommとGoogleが「反Apple」で距離を縮めている。
本年2月のQualcommの5G向けの半導体についての記者会見に、ゲストとしてGoogleが参加し、「Qualcommと活力ある5Gの経済圏をつくっていくことに喜びを感じる」と述べたと報じられている。
Appleとしては、iPhoneの5G対応を早期に進めるためにも、Qualcommとの和解を急ぐ必要があった。
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