Monsanto買収後初めてのBayerの定時株主総会が4月26日に開催された。
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Monsanto は2016年5月18日、Bayer から買収提案を受けたと発表した。Bayer も5月19日、Monsanto と買収へ向けた交渉をしていると発表した。
2016/5/23 Bayer、Monsantoに買収提案
Bayerは2016年9月14日、Monsantoの買収で合意したと発表した。
2016/9/19 Bayer、Monsantoを買収
2018年6月7日に買収が完了、MonsantoはBayerの100%子会社になった。買収額は総額625億ドル。
カリフォルニアの陪審員が8月10日に、Monsantoの除草剤 Roundup による発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。このニュースが伝わり、Bayer の株価が下落した。
10月23日、損害賠償は39百万ドルのままとし、懲罰的賠償は39百万ドルに大幅減額した。 しかし、Bayer主張の無罪にならなかったため、Bayerの株価は下落した。
米カリフォルニア州地方裁判所の陪審は2019年3月19日、別の男性が訴えていた裁判で、Roundupががんを発生させた「事実上の要因」だったとの評決を下した。陪審は3月27日、80百万ドルの賠償を命じた。
2018年6月7日のMonsanto買収完了時の株価は@98.94Euroであったが、Monsantoの除草剤Roundup の発癌訴訟の発表の都度、失望売りで値下がりし、現在では@61.54Euroまで下がっている。
これによる株価の値下がり損は350億ユーロに達する。(932,552百万株 x 37.4Euro)
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Bayer株主はMonsanto買収が膨大な値下がり損の原因であり、買収は経営陣の判断誤りであるとして追求した。
総会は13時間に及んだ。
Bayerの取締役会のWerner Baumann会長は、次のとおり説明した。
Monsanto買収について詳細に説明し、運営上も戦略上も大成功であると述べた。一方で、株主は株価の値下がりを懸念している。除草剤ラウンドアップに関する訴訟と最初の判決は会社にとり重荷であり、株主に心配をかけているが、今後の裁判で勝訴を目指し、努力している。現在の株価は企業の真の価値を反映していないと述べた。
合併により2022年以降、年間10億ユーロのシナジーが得られるとした。独禁法上の必要からBASFに一部事業を譲渡したが、73億ユーロで売却し、40億ユーロの売却益を得ている。
2016年9月の契約締結の前に取締役会は詳細に検討し、リスクとメリットを比較した。Roundupの問題についても検討し、得られた情報からリスクは低いと考えた。科学的事実と農家の40年に及び経験を重視した。
外部の専門家の意見も聴取した。Roundupは世界中で承認を受けており、用法通りに使えば安全であり、癌を発生させるものではない。IARCが2015年に「発癌性の可能性」と分類した際に、多くの国の当局は十分な再評価を行い、従来の見解を維持した。Bayerは安全性を確信している。他方、Roundupはグローバルな食料供給、サステナブルな農業にとって重要である。Bayerは今後も需要家のためにRoundupを守っていく。
但し、訴訟は相次ぐ。原告は現在、約13,400人いる。これまで2件について陪審員の判断が出たが、判決はまだである。2件についても控訴する。
今後の業績が好調と予想されること、増配をすることなどを述べた。
これに対し、株主からは経営陣に対する批判や、350億ドルもの株式評価損の説明を求める発言が相次いだ。
夜の10時になって、会社側提案の議案はすべて賛成多数で可決した。
そして(誰の提案かは明らかでないが)、経営陣に対する信任投票が行われたが、会社側にとってショックなことに、55%の株主が反対票を投じた。
これは、不信任案のように法的な拘束力を持つものではなく、取締役会メンバーの地位には変更は生じない。
なお総会では株主から、Roundupの訴訟に関して取締役会と監査役会が良心的に行動したかどうかを特別に監査すべきだとの提案が出たが、74.3%の多数で否決されている。
しかし、株主の55%もが経営陣に不信感を持つことがわかり、監査役会は当日深夜に会合を開き、満場一致で取締役会への信頼を確認し、同社の戦略を改めて承認した。
ドイツの株式会社には、取締役会(Board of Management)と監査役会(Supervisory Board)の二層制〔dual board system〕を採用することが法律に定められている。
取締役会は、企業経営の責任を担い、その構成員は、共同して企業経営について説明責任を負う。議長は取締役会の活動を統括し、調整を行う。監査役会は、取締役の選任、監督を担い、また取締役に助言を与え、企業の重要な意思決定に直接関与する。監査役は、株主総会において株主によって選出される。
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