Brexit、「合意なき離脱」回避の圧力 

| コメント(0)

欧州委員会の Secretary-General の Martin Selmayr はこのたび、TVで述べた。

はっきりさせよう。合意なき離脱の場合、アイルランドとの国境沿いに hard border (物理的壁)が設けられる。

これは最悪のシナリオだ。

アイルランドにとって非常に厳しい状況だ。だから、これを避けるため、全てのことをする必要がある。

EUは、合意なき離脱は国境の壁につながり、国境の壁は北アイルランド紛争の再発につながるため、絶対に避ける必要があるとし、離脱協定の締結を迫っている。


米国民主党の
Nancy Pelosi下院議長は今週、議員団を率い、英国とアイルランドを訪問した。何を議論したのかとの質問への答えは、"Brexit, Brexit, Brexit"。

議長はアイルランド共和国と北アイルランドの国境を訪問し、厳しい発言をした。

英国が合意なき離脱を行い、Good Friday Agreement (北アイルランド紛争を終結させた1998年4月10日のイギリスとアイルランドの間の協定)になんらかの害があれば、米英貿易協定を締結しない。
("That's just not on the cards if there's any harm done to the Good Friday accords.")

議長は、メイ首相、保守党の離脱強硬派、労働党のCorbyn党首らに対し、「英国の離脱でGood Friday Agreementとして知られる北アイルランドの平和協定が弱まるなら、英国が米国と締結することを求めている貿易協定を米議会はブロックする」と警告した。

Good Friday Agreementについては、Brexitの問題の根源(続き)-「北アイルランド国境問題」

ーーー

北アイルランドのLondonderry で4月18日夜に暴動が起き、取材していた女性記者が流れ弾に当たり死亡した。

暴動はキリスト教の祝日Easter を週末に控える中で起きた(4/19 がGood Friday休日、4/21がEaster:復活祭)。

北アイルランドのEasterは、アイルランド独立につながった1916年の「イースター蜂起(Easter Rising)」をカトリック系住民が祝うとともに、英国の統治に抗議する日となっている。警察は、カトリック系過激派アイルランド共和軍(IRA)から分離した新IRAによる犯行とみて捜査している。

合意なき離脱は国境の壁につながり、国境の壁は北アイルランド紛争の再発につながる という懸念は現実的である。

ーーー

英政府は本年3月13日、合意なき離脱となった場合、アイルランドと北アイルランドの厳格な国境管理を回避すると表明した。

合意なき離脱となった場合、アイルランドから北アイルランドへの商品の輸入について新たな検査や管理を導入しない。企業の自己申告に頼り、国境を越えた取引を記録するためアプリベースのシステムを活用するという。新たな輸入関税制度は適用しない。

この計画は一時的かつ一方向のもので、長期的な対策については、EU・アイルランド政府と早急に協議を開始するとしている。

アイルランド首相も、合意なき離脱の場合でも、国境を越えた貿易の検査は避けられると期待していたが、EUは、監視が少しでも欠けたら欧州の単一市場に大きな穴が開くことを懸念し、この方針を退けた。

欧州側は、合意なき離脱に備え、アイルランドには国境を越えた貿易の検査体制を準備すべきだと圧力をかけている。アイルランド・英国間の貿易に対して大規模な検査体制を敷く必要があるとする。

2019/4/6 合意なき離脱の場合のアイルランドの扱い 

EUは合意なき離脱の場合は、英国の北アイルランドとEUのアイルランド共和国との間に国境管理が必要だと主張する。

EUとしては非EU国との間で、関税チェック、品質チェック等の幅広いチェックが必要である。

国境でのチェックは、単一市場、関税同盟の統合性("integrity")を守るために必要である。

安全でない製品やアンフェアな競争をする製品がEUに入ることを望まない。

食品チェックは厳密で、チェックは「輸入場所のごく近くの検査場("in the immediate vicinity of the point of entry")ですることとなっている。

食品チェックと動物のチェックが特に問題となる。

EU側は離脱交渉で、単一市場を守ることがEUにとってキイとなる目的であると繰り返し強調してきた。

コメントする

月別 アーカイブ