期限の4月12日まで2週間しかない4月1日、英下院はEU離脱に関し過半数の支持が得られる代替案を模索するための投票を再び実施した。
3月27日に16の案のなかから8案を選び、「示唆的投票」 ("indicative" vote) を行ったが、いずれも過半数を得られなかった。
国民投票案が最大の268票を得た。関税同盟案が2位、労働党案は3位となり、親EU 派の案に多くの票が集まった。合意なき離脱には反対票が400票もあった。
2019/3/28 英議会 離脱延期を正式決定 代替案8案いずれも過半数に満たず
今回、当日に過半数を得られなかったものを含め、合計8つの案に投票する。過半数の支持が得られる代替案を模索するためという。
なお、メイ首相はその後、早ければ4月2日に自身の離脱案を再び採決にかける可能性がある。
ガーク司法相はBBCテレビに対し「現在は理想的な選択肢がなく、想定されるいかなる結果についても説得力ある反対論がある。それでもわれわれは何かをしなくてはならない」と強調した。
「首相は残された選択肢を検討しており、何が起こり得るか考えているが、何らかの決定が下されたとは私は思わない」と述べた。
保守党の議員314人のうち170人はメイ氏に書簡を送り、合意の有無にかかわらず数カ月内に Brexitを実施するよう求めたという。
示唆的投票の候補は次の通り。当初の16案のうち、3月27日に8案が採決に掛けられたが、今回はこのうちの4案と、前回採用されなかった1案及び新たな3案の合計8案が 候補となった。前回3位だった労働党案は入っていない。
しかし、最終段階では前回の4案(Revoke article 50を追加)が採決にかかった。結果は、前回に続き全て否決された。「EUとの関税同盟に恒久的に残留する案」が支持を集めたが、過半数までは届かなかった。
3/27 | 4/1 | ||||||
賛成 | 反対 | 議案 | ポイント | 賛成 | 反対 | ||
Labour plan | EUとの緊密な経済関係の維持 ・全面的な関税同盟 ・単一市場との緊密な連携 ・新しいEUの権利と保護に対応 ・EUの機関、資金拠出計画への参加 ・将来のセキュリティ関連の合意 |
237 | 307 | ||||
Common market 2.0 | 欧州自由貿易連合(EFTA)、欧州経済領域(EEA) への参加 (EFTA加盟国はEUに加盟することなく、EUの単一市場に参加) |
188 | 283 |
〇 |
英はEUの単一市場に参加 居住、労働可能(互いに) |
261 | 282 |
Confirmatory public vote | 議会で通ったBrexit は批准前に国民投票にかける。 | 268 | 295 | 〇 | 議会で通ったBrexit は、どんな案でも、批准前に国民投票にかける。 | 280 | 292 |
Public vote to prevent no deal |
X |
議会で「合意なき離脱」となった場合は国民投票にかける。 | |||||
Customs union | 英国全体が永久の全面的なEUとの関税同盟を締結 | 264 | 272 | 〇 | アイルランド国境管理不要 他国と別に貿易協定を結べない。 |
273 | 276 |
Malthouse compromise Plan A | 協定案のアイルランドとの国境に関するbackstopを他の案に置き換える。 | ||||||
Revoke article 50 | 協定案否決の場合、合意なき離脱について投票する。 合意なき離脱が否決の場合、首相はBrexit を中止する。 |
184 | 293 | 〇+ | 191 | 292 | |
Revocation instead of no deal | 議会が協定案を否決する場合、政府はBrexit 取り止めに必要な法案を緊急に提出する。 | ||||||
New customs union | EUとの関税同盟を含む貿易協定を結ぶ。 | ||||||
EEA/EFTA without customs union | 欧州経済領域(EEA)にとどまり、欧州自由貿易連合(EFTA)に再加入するが、EUとの関税同盟からは外れる。 | 65 | 37 | ||||
EFTA and EEA |
X |
EFTA and EEAに参加、EUの単一市場に参加 アイルランド国境問題と農産品貿易問題の解決のため追加の協定を交渉 |
|||||
No deal | 合意なき離脱 | 160 | 400 |
X |
協定案反対なら4/12に離脱 | ||
Unilateral right of exit from backstop | 北アイルランドのBackstop から英国が一方的に離脱できるよう、協定案を修正 (whenever it wants, without the EU's permission). |
X |
BackstopではEUから抜けられない、北アイルランドが別扱いになるという反対に対応。但し、EUは再交渉しないとしている。 | ||||
Consent of devolved institutions | 合意なき離脱はしない、離脱に際してはスコットランド議会、ウェールス議会の同意を要する。 | ||||||
Contingent preferential arrangements | EUとの離脱協定が出来ない場合、EUとの特恵貿易協定を結ぶ。 | 139 | 422 | ||||
Contingent reciprocal arrangements | EUとの協定が出来ない場合、EU及びメンバー国とのアレンジは相互的なものとする。 | ||||||
Respect the referendum results | 英国がEUから離脱するという国民投票の結果を尊重することを議会が再確認する。 | ||||||
Constitutional and accountable government | EU離脱を支持、政府の協定案を拒否。新しい試みには2/3の多数を必要とするよう下院ルールを修正。 | ||||||
Parliamentary supremacy |
X |
合意なき離脱回避のステップ ①政府は4/12の2日前に離脱の延期を求める。 ②EUが認めない場合、議員に合意なき離脱か離脱中止の選択を求める。 ③離脱中止が選ばれた場合、将来のEUとの関係について、何が英国で最も支持され、かつEUが了承するかの調査を行う。 |
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