ジャパンディスプレイの動き

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ジャパンディスプレイ(JDI)は4月1日、下記の発表を行った。

当社は、既に発表のとおり、筆頭株主である株式会社INCJ(旧産業革新機構)とも連携しながら外部との提携交渉を行っております。

現在、当社は 当該提携に伴う600800億円規模の株式及び債券の発行による資金調達及び株式会社INCJによる既存債権に対する優先株式の引受けを含めたリファイナンスにより総額1,100億円超の資本増強について関係者との今週中の合意を目指しており、合意いたしましたら速やかにお知らせします。

日本経済新聞は4月3日、同社が中台連合3社から、出資などを含む600億~800億円の金融支援を受け入れることで合意する見通しと報じた。中台連合が議決権の5割弱を握る筆頭株主となり、JDIは連合の傘下に入るとしている。

ロイターは4月3日、JDIが今年後半から米 Appleの腕時計型端末「アップルウオッチ」向けに有機ELパネルを供給することが分かったと報じた。

JDIにとっては、この供給が有機EL市場への初参入となる。

JDIは現在、茂原工場で蒸着式有機ELパネルのパイロット生産を始めており、供給体制を整えつつある。本格生産のためには、中台連合の中国計画(下記)が必要になる。

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経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は、中国と台湾の企業連合(下記のメンバー)から600億円規模の出資を受ける方向で交渉を進めてきた。

中国シルクロード・インベストメントキャピタル(中投絲路資本 CSIC
中国最大の資産運用会社の嘉実基金管理(Harvest Fund Management)
台湾のタッチパネルメーカーの宸鴻集団(TPK Holding)
中国の自動車部品メーカーの敏実集団(Minth Group)

4月3日の日経は、宸鴻光電科技(TPK)や台湾金融大手の富邦グループ、中国大手ファンドの嘉実基金管理グループとしている。

中台連合は、JDIの技術を活用して浙江省に有機ELパネル工場を建設することを計画している。

計画は、第6世代の基盤を3万枚/月、6型パネル 400万台/月の工場の建設で、投資額が約5000億円で、資金は中国政府の補助金を活用する。
早ければ2019年中に建設を開始し、2021年の量産開始を見込む。

しかし、この交渉は下記の理由で難航していた。

その問題がどうなったのか不明だが、今回は下記の線でまとまりつつあるとされる。

中台連合: 600~800億円 うち普通株が400億円、残りは新株予約権付社債
INCJ :残りを既存債権を優先株に切り替え
合計:1100億円超


問題点:

JDIは2015年3月6日、石川県白山市に第6世代(1500×1850ミリメートル)液晶新工場を建設すると発表した。月産2万5000枚の能力で、投資額は1700億円。

新工場の建設はAppleからの増産依頼によるもので、投資資金の大半はAppleからの前受け金1700億円で賄った。但し、Apple専用とせず、中国スマホメーカーなど他社へも供給する予定。

問題は、JDIと Apple の契約である。この前受金の契約には下記の条項がある。

・JDIは年間2億ドルまたは売上高の4%のいずれか高い金額を四半期ごとに返済する。

・JDIの現預金残高は300億円以上を維持する。

・上記2つの条項を守れなければ、Appleは、前受け金の即時全額返済、または白山工場の差し押さえを要求できる権利を持つ。

返済原資は貸し手であるAppleからの注文次第であることが問題で、Apple側の理由で注文が減ると、 たちまち返済原資に行き詰まる。
工場がApple専用であれば、それなりの条項が入れられたと思われるが、他社への供給もできるようにしたのが逆目に出る形とな った。(Appleが減った分は他社に売ればよいとの言い訳ができる)

中台連合としては、JDIに600億円を注入しても、Appleが注文を減らせば、返済不能となり、600億円はAppleに流れることとなる。

実際に、Appleの「iPhoneXR」の販売が低迷している。

今期のXR向け液晶の出荷量は、計画比で半減する見込みで、2月に入って主力の白山工場の稼働率は50%前後まで落ちている。これにより、昨年9月末に600億円あった現預金が1月に入って急激に減り始めたとされる。

前記のトリガー条項により、Appleから前受け金の即時全額返済を求められる可能性が強まっている。

中台連合の要求に基づいて、2019年以降の返済減額を訴えるため、INCJの志賀会長と経済産業省幹部の2人がApple本社へ乗り込んだが、3月23日に事実上のゼロ回答があった とされる。

今回、出資交渉が進んだのは、なんらかの解決策が得られたとみられる。

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JDIの概要は下記の通り。

日本の液晶パネルメーカーは「2012年問題」に直面した。大型では日本勢は韓国、台湾勢に押され、シェアは落ちた。
中小型液晶については日本勢はまだ頑張っていたが、各社が単独で事業を進めた場合、十分な能力増強投資ができず、競争力を失ったテレビ用パネルの二の舞いになる可能性が高い。

2011/10/31 液晶パネル事業の現状と課題  

東芝、ソニー、日立製作所と官民ファンドの産業革新機構は2011年8月31日、2012年春に中小型液晶パネル事業の統合会社JDIを設立すると発表した。

3社は当初10%ずつ出資したが、その後売却した。

2011/6/9 東芝・ソニーが携帯向け液晶統合、産業革新機構が出資

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は2018年3月30日、第三者割当増資などで約350億円 、資産売却で200億円、合計550億円を調達すると発表した。

第三者割当増資(海外機関投資家)  300億円
第三者割当増資(日亜化学工業)  50億円
能美工場の資産の産業革新機構への売却  200億円 産業革新機構はこれをJOLEDに現物出資
合計 550億円

資本関係は次の通りとなった。 (億円)

2018/3/31 2018/12/31 増減
資本金 969 1,144 175
資本剰余金 2,136 2,311 175
合計 3,105 3,455 350
利益剰余金 -2,333 -2,441 -108
資本合計 772 1,014 242

当初 現状 増資後
産業革新機構  70% 35.58% 26.81%
ソニー 10% 1.78% 1.34%
東芝 10%
日立 10%
日亜化学 3.52%
海外機関投資家計 21.12%
その他現行株主 62.64% 47.21%
合計 100% 100% 100%

合わせて、2017年12月に稼働を停止した能美工場の資産を産業革新機構に約200億円で譲渡する。

2018/4/3  ジャパンディスプレイ、550億円を調達 

同社の工場は下記の通り。

国内:

石川工場 東芝モバイル(松下電器)
能美工場 東芝モバイル(東芝) 停止→ 産業革新機構に譲渡 → JOLEDに現物出資
白山工場 JDIとして新設   2016/12 稼働 Appleからの前受け金で建設
鳥取工場 ソニーモバイル(鳥取三洋)
東浦工場 ソニーモバイル
茂原工場 日立ディスプレイズ
深谷工場 東芝モバイル(東芝) 2016/4 閉鎖


海外:

Suzhou JDI Devices 江蘇省蘇州市 旧 日立顕示器件(蘇州)
Suzhou JDI Electronics 素尼移動顕示器(蘇州)を買収
Shenzhen JDI 広東省深圳市 旧 深圳日立賽格顕示器 2018 中国企業に売却
Nanox Philippines Philippines ナノックスより、81%取得
Kaohsiung Opto-Electronics Taiwan 旧 高雄日立電子


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