米下院、国境の壁建設は憲法違反として提訴

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米民主党が主導する下院は4月5日、トランプ大統領の国家非常事態宣言に基づいて政権がメキシコ国境の壁建設を進めるのは合衆国憲法に違反するとして、宣言に基づく建設費捻出の違憲確認と支出差し止めなどを求めて首都ワシントンの連邦地裁に提訴した。

下院のBipartisan Legal Advisory Group(民主党のトップ3人と共和党のトップ2人で構成)が3対2 で承認した。

訴状は、米議会が議決した国防総省などの予算を非常事態宣言に基づいて目的外の壁建設費に使うのは「憲法が定めた議会の予算編成権を侵害している」と主張した。

合衆国憲法Article I, Section 8 は議会に予算編成権を認めている。

The Congress shall have Power To lay and collect Taxes, Duties, Imposts and Excises, to pay the Debts and provide for the common Defence and general Welfare of the United States; but all Duties, Imposts and Excises shall be uniform throughout the United States;

ペロシ下院議長は「大統領のごまかしの非常事態宣言と資金の違法な流用は民主主義を弱め、議会の投票結果、国民の意思、合衆国憲法に背くものである。議会は、憲法で議会のみに認められた責任を取り戻し、チェック アンド バランスのシステムを守らねばならない」と述べた。

米議会では上下両院が非常事態宣言を無効とする決議を可決したが、大統領が3月15日に拒否権を発動、下院は3分の2以上の賛成で決議を再可決することができず、拒否権は覆らなかった。

米上院は3月14日、トランプ大統領が「国境の壁」建設のために出した非常事態宣言を阻止する決議案を可決した。野党・民主党のほか、与党・共和党からも Romney 議員ら 12人の造反が出た。

米下院は既に2月26日、国家非常事態宣言を無効にする決議案を245対182の賛成多数で可決している。政権を支える共和党からも13人が賛成した。

トランプ大統領は3月15日、国家非常事態宣言を巡り議会が可決した同宣言を無効とする決議案に拒否権を発動した。

下院は3月26日、大統領の拒否権を覆すための採決を行ったが、必要な2/3の賛成票を得られなかった。共和党からは14人しか賛成しなかった。

2019/3/27 米下院、非常事態宣言無効化に対する大統領の拒否権発動の阻止に失敗 

政権は3月下旬、国防総省の予算の一部を壁建設費に転用する手続きを始めた。

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今回の議会による政府の訴訟が裁判所に認められるかどうかが問題であるが、過去に共和党が格好の前例をつくっている。

民主党は、大統領が憲法で議会に認められた権力を無視したと主張するが、2014年に共和党がObama政権を同じ理由で訴えている。

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