愛媛大学と大日本住友製薬のマラリアワクチン開発

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愛媛大学大日本住友製は4月9日、アフリカやアジアなどで猛威を振るうマラリアのワクチン開発につながる抗原を発見したと発表した。

今後、研究を継続し、2020年代にワクチンの実用化を目指す。

このたび、世界初の革新的な官民パートナーシップのグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)から93,057千円の研究助成金を受け取った。

GHIT Fundは、政府・企業・財団が出資するもので2013年4月に設立された。開発途上国に蔓延する感染症の新薬やワクチン等の新しい医薬品の研究開発および製品化を促進することにより、グローバルヘルスへ貢献することを目的にしている。

GHIT Fundは3月28日、上記を含め、マラリア、結核、デング熱、リーシュマニア症、住血吸虫症に対する新薬開発10件に対して、総額約28.6億円の投資を行うことを決定した。

マラリア関連では他に、下記がある。

エーザイ&ブロード研究所:

 ①新規作用機序を有し、多段階の生活環において効果を示す抗マラリア薬の開発 536,822千円
 
②マラリア治療のための新規マラリア原虫 DHODH阻害剤の前臨床開発 421,418千円

田辺三菱製薬&Medicines for Malaria Venture:抗マラリア剤リード化合物最適化研究 192,247千円

武田薬品&Medicines for Malaria Venture:抗マラリア薬としてのリード化合物探索プログラム 52,800千円

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マラリアワクチン開発は他に次がある。

塩野義は2月28日、長崎大学とマラリア研究について包括連携協定を結んだと発表した。
長崎大の熱帯医学研究所に研究部門を新設し、塩野義の研究者を派遣。基礎研究と並行して治療薬やワクチンの研究開発に取り組む。
長崎大は「細胞性免疫誘導ワクチン」の研究を進めており、塩野義はワクチンの効果を高められる「アジュバント」(マラリアタンパク質に抗体をつくらせる)などで連携する。

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日本人研究者が創業した米国メリーランド州の創薬ベンチャー VLP Therapeuticsは2月4日、独自技術 i-αVLP (inserted alpha VLP) Technology で開発したマラリアワクチン候補 VLPM01の新薬臨床試験開始届がFDAにより認可され、フェーズ I/IIa の患者登録を開始したことを明らかにした。

2019/3/5 マラリアワクチンの臨床試験 開始


愛媛大学大日本住友製薬の計画は次の通り。

マラリアワクチンは、マラリア原虫のタンパク質とアジュバンド(免疫増強剤:マラリアタンパク質に対する抗体をつくらせる)でつくるものだが、マラリア原虫を形作るタンパク質は約5400種類 もあり、どれを選んでワクチンにすればいいのか分からない 状況であった。

愛媛大学の遠藤弥重太特別栄誉教授 はコムギ無細胞タンパク質合成法を世界に先駆けて実用化に成功している。

小麦の種子は、主に外皮、胚乳、胚芽の3つから構成され、胚芽にはタンパク合成に必要な翻訳因子が豊富に含まれてい る。

コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を使えば、真核生物、原核生物、ウィルスなど多様な生物種由来のタンパク質をつくることが可能 。

コムギ抽出液に対象のDNAを入れると、転写、翻訳され、タンパク質がつくられる。


愛媛大学のプロテオサイエンスセンターでは、この技術を利用して、マラリア原虫タンパク質を作成した。



精製したマラリアタンパク質をウサギに注射すると、148種の抗体が出来た。

マラリア原虫と148種の抗体を1日培養し、原虫増殖阻害効果が高く、遺伝子変異による耐性化の可能性が非常に低い抗体 PfRipr を見つけた。

しかし、PfRiprは複雑すぎ、多量に合成できない という問題があった.

このたんぱく質を小さく断片化し、強い薬効を 有し、大量合成が可能なPfRipr5 を見出した。

作用機序は、抗PfRipr5抗体がマラリア原虫の赤血球侵入を阻害することも判明した。


今後の開発体制は次の通り。


1) GMP準拠の PfRipr5 を大量合成する。担当:ポルトガルiBET( Institute of Experimental Biology and Technology)

2) 適切なアジュバントと混合してワクチンをつくる。担当:ドイツEVI(European Vaccine Initiative)

3) ワクチン効果の確認  担当:愛媛大学のプロテオサイエンスセンター(PROS)

大日本住友製薬は全体のアドバイザーとなる。

EVIは Stockholm University と Heidelberg Universityにより設立され、下記の組織が加入している。

Biomedical Primate Research Centre (BPRC) in The Netherlands
Jenner Vaccine Foundation, University of Oxford
National Institute for Public Health and the Environment (Intravacc)
Royal College of Surgeons in Ireland (RCSI)
Institut Pasteur (IP)

iBETはバイオとライフサイエンス分野での民営の非営利研究組織で1989年に設立された。Health & Pharma Food & Health の分野で大学と企業の開発をつなぐ。
分析サービス、質量分析部門を持ち、パイロットプラントを持っている。

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