スコットランドの自治政府のNicola Sturgeon 首相は4月24日、2021年までに独立の是非を問う2回目の住民投票を行う準備を開始する意向を示した。
首相はスコットランド議会で「EU離脱をめぐる混乱を受け、独立を求める声はこれまでになく強まっている。Brexit か、独立した欧州国家になるかという選択の機会を、この議会の任期中に提供すべきだ」と述べ、英国がEU を離脱した場合、英国からの独立の是非を問う2度目の住民投票を2021年5月の次期自治議会選前に実施したい考えを表明した。
住民投票実施の法案を年内に作成する。住民投票実施にはいずれ英政府の承認が必要になるとしている。
今年10月末まで期限が延期されたEU離脱計画に影響を及ぼす可能性もある。
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スコットランド王国は1707年合同法により、イングランド王国に統合され、Kingdom of Great Britainとなった。
(1801年にアイルランド王国と合同し、United Kingdom of Great Britain and Ireland となった。1922年にアイルランド自由国が分離、連合王国は1927年にUnited Kingdom of Great Britain and Northern Irelandに改称した。なお、ウェールズ公国は13世紀にイングランドの支配下に置かれ、ウェールズはイングランド王国の一部となった。)
現在、スコットランドとウェールズ、北アイルランドには議会が設置され、 権限の委譲による自治権を有している。
Nicola Sturgeon女史は1970年生まれで、2014年よりスコットランド国民党首で自治政府首相。
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スコットランドの独立を問う最初の住民投票は2014年9月18日に実施された 。
スコットランドでは独立志向が高まり、ブレア政権時代の1997年に独自の議会設置の是非を問う住民投票が可決された。
ブレア内閣はスコットランド住民の独立志向を抑えるため、1999年にスコットランド議会を設置して、中央政権の権限を大幅にスコットランド自治政府に移譲した。
スコットランドの独立志向は一時的に抑えられたかに見えたが、2011年5月のスコットランド議会選挙でスコットランド独立を公約に掲げるスコットランド国民党が議会の過半数を占める大勝利を収め、党首が自治政府の首相に就任した。
2012年10月にイギリスのキャメロン首相と自治政府首相の会談で住民投票の実施が決まった。
住民投票では55%が独立に反対し、否決された。但し、有権者の84.59%が参加するなどスコットランド人の独立問題への関心の高さが示された。
2016年のBrexit 国民投票ではスコットランドは62%が離脱に反対した。
Brexit の決定を受け、EU残留を主張する独立支持派の間で独立の住民投票の再実施を求める声が高まっている。
もし、スコットランドが独立し、EUに帰属すると問題は大きい。
国境管理(モノ、ヒト)、通貨、北海原油の帰属、安全保障(原子力潜水艦基地はスコットランドにある)、・・・
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北アイルランドも今後、英国からの離脱=アイルランドとの統合の問題が出てくる。北アイルランドもBrexit国民投票で反対に回っている。
1998年4月10日、イギリスとアイルランドの間でベルファスト合意(聖金曜日協定)が締結された が、下記の項目が含まれている。
・北アイルランド地方議会の新設=英国政府の直轄統治から地方自治へ
・イギリスとアイルランド共に北アイルランドの領有権を主張しない。アイルランドは北アイルランド領有をうたう憲法を修正
・北アイルランド住民の過半数の合意なしに北アイルランドの現状を変更しない
・北アイルランドの将来の帰属は北アイルランド住民の意思によって決定される。
・帰属が確定するまではプロテスタント、カトリック系政治勢力が共同参加する自治政府によって統治される。
・両国は北アイルランドの住民が国籍を、自身の選択で、アイルランド、英国、又は両方とすることを認める。将来の北アイルランドの帰属がどうなるかに関係なく、英国とアイルランド両方の国籍を持つことを認める。
北アイルランドの人口構成は、プロテスタント系が50%強、カトリック系が40%半ばと拮抗しているが、カトリック系の方が出生率は高いため、北アイルランドは将来的にアイルランドへ帰属を変更する可能性が高い。
2019/2/11 Brexitの問題の根源(続き)-「北アイルランド国境問題
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