千代田化工建設、大幅赤字に、三菱商事が支援へ

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千代田化工建設は5月7日、業績予想の大幅修正を発表した。 (5月9日 決算発表した。)

同社は2018年11月9日発表の中間決算で、連結決算の最終損益が1,086億円の赤字と発表した。5月の前期の決算発表時には65億円の黒字を予想していた。

本年2月の第3期決算発表時にも同じ金額の予想を発表していた。

それに対し、今回は最終利益が2,150億円の赤字で、 3か月で赤字が倍増となっている。債務超過になる。

千代田化工の損益の推移は下記の通り。(単位:百万円)

売上高 営業利益 経常利益 株主純利益
2017/3実績 603,745 15,680 -3,080 -41,116
2018/3実績 510,873 -12,330 -10,100 6,445
2019/3 予想
  2018/5 400,000 11,500 12,500 6,500
2018/11 400,000 -86,500 -86,500 -105,000
2019/5/7 340,000 -200,000 -193,000 -215,000
2019/3実績 341,952 -199,795 -192,998 -214,948


2017年3月期では最終利益が411億円の赤字となった。

これは、千代田化工建設が35%出資するシンガポールのEzra HoldingsとのJVのEMAS CHIYODA Subseaが2017年2月に米国でChapter 11の申請をしたためで、同社は、営業外費用で130億円、特別損失で238億円、合計368億円の損失を計上した。

2018年3月期には、米国で工事を進めているCameron LNGプロジェクトで追加コストがかかったとし、123億円の営業損失を計上した。
この時点での2019年3月期予想では、特に問題意識はなく、営業利益で115億円の益、最終利益で65億円の益としていた。

2018年11月9日発表の中間決算で、連結決算の最終損益が1086億円の赤字と発表した。

米国で工事を進めているCameron LNGプロジェクトで、人件費の大幅高騰、現場工事の生産性低下で、工事コストが約850億円の大幅増加となる。

同社は、パートナーのMcDermott(CB&Iを吸収)と共同で、工事遂行プランの見直しをおこなってきたが、下記の点が判明した。

・2018年初頭からの現場作業員、特に技能工の不足が今後も続くこと

・それに伴う人件費の大幅高騰

・現場工事の生産性が5月以降、再び低下(現場が市街地から離れ不便なことなどから作業員の定着性が極めて低い)。

この結果、現場作業員の人件費を含む工事コストが大幅に増加すると見込み、約850億円を追加した。

今後については、「キャメロン対策タスク」を9月1日付で設置、計画どおりの完遂を確実にする対策を実施するとしていた。

2018/11/14 千代田化工建設、米国LNG計画で850億円の追加工事 

付記

三菱商事は5月14日、キャメロンLNGプロジェクトが現地時間5月14日にLNGの生産を開始したと発表した。

数週間の内にLNG船に荷積みされ、初出荷される見込み。


付記 

千代田化工建設は6月3日、第1系列からLNGの出荷を開始したと発表した。

トランプ大統領がツイッターで自慢した。

BIG NEWS! As I promised two weeks ago, the first shipment of LNG has just left the Cameron LNG Export Facility in Louisiana.
Not only have thousands of JOBS been created in USA, we're shipping freedom and opportunity abroad!



今回の赤字倍増の理由として、同社は次の説明をしている。

キャメロンLNGプロジェクト

第1系列の建設工事最終盤になって想定外のコスト増、現場作業員の離職率が想定以上に高止まりする中、生産性の向上が期待できない状況
第2、第3系列においても工事最終盤に同様のコストがかかるものと想定

2019/2の説明では、下図に記載の通り、追加コストは顧客負担としていた。

インドネシア・タングープロジェクト

様々な複合要因によってプロジェクトの進捗に大きな影響 があり、必要なコストを計上した。訴訟・仲裁等についてのリスクの見直し

同社は中間決算発表の「継続企業の前提に関する注記」で、「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しているものと認識」しているとし、筆頭株主の三菱商事(33.39%) などと財務体質の強化で協議するとしていた。

報道では今回、三菱商事は千代田化工建設の経営再建を支援する方針を固めた。LNGプラントの高い技術をもつ千代田化工の再建を後押しする。

三菱商事は千代田化工の優先株による第三者割当増資を引き受け、融資も実施することで1500億円超 の支援をするという。三菱UFJも融資で再建を支援する。


千代田化工が実施する第三者割当増資を三菱商事が引き受け、700億円の優先株を取得すると同時に900億円融資する。

三菱UFJ銀行も200億円融資して、2019年3月末時点で592億円の債務超過となった千代田化工の財務体質の改善を進める。

三菱商事は経営幹部ら30人規模の人材も送る。
三菱商事出身の大河一司・元機械CEOを千代田化工の会長兼CEOにあて、2017年に千代田に派遣された山東理二・社長兼CEOは社長兼COOにする。

三菱商事は1990年代後半に10.27%を出資して支援、2008年に第三者増資を引き受け、33.4%に増やし、現在に至っている。

1990年代後半は、海外プラント採算悪化に対する支援
2008年は、カタールLNGプラントが資材高騰で採算悪化、プラント事業のリスクが高まっているため「信用補完狙いの増資」とされた。

今回は議決権のない優先株の引き受けと融資などを組み合わせ、子会社にはしない。

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同社のLNGプロジェクトは次の通り。 (2019/2 発表)

なお、同社は本年2月に米国のGolden Pass LNG輸出基地の設計・調達・建設業務を受注したが、これについては、パートナーのZachryMcDermottが労働者の生産性など現地建設関連のリスクの責任を負うスキームとし千代田の負うスコープは基本的に設計と調達に限定した。(リスクが少ない代わりに、当然収益も少ない)

2019/2/9 千代田化工、米国 Golden Pass LNG輸出基地設計、調達、建設業務を受注 




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