韓国の原発、異常事態発生でも停止せず

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韓国原子力委員会は、南西部の霊光にあるハンビッ原発1号機で5月10日に原子炉の熱出力が制限値を超えて急上昇したにもかかわらず、運営する韓国水力原子力が即時停止せず、原子炉を止めたのは約11時間半後だったと発表した。


5月10日午前10時30分ごろ、核分裂反応を抑える制御棒の制御能力を測る試験で、
無資格の職員が原子炉の制御棒を抜く操作を行ったところ、熱出力が制限値の5%を超えて18%まで上昇したが、即時停止しなかった。

原子力安全法では、熱出力が制限値を超えた場合は原子炉の稼働をすぐに停止するよう定めている。

放射能漏れなどは確認されていないが、同委員会は重大事故につながる恐れがあったとみて、安全措置不足と原子力安全法違反として1号機の使用停止を命令した。

同委員会の安全政策局長は「事故には至らなかったが、今までに起こった国内の原発の問題の中で非常に深刻な状況なのは間違いない」と述べ、重大な事故につながる危険性があったと指摘した。

韓国水力原子力では、「熱出力が18%まで上昇した後、午前10時32分に制御棒を挿入し、10時33分には1%以下に下がり、11時2分以降は0%水準を維持した」と説明した。ただ 、運転は続いており、手動で運転を停止したのは午後10時2分ごろだったという。「出力が25%になれば原子炉は自動停止する設計になっている」と安全には問題がなかったと している。

ただ無免許操業については「免許所持者が指示・監督していれば免許がない人でも作業できるが、当時免許所持者が指示・監督していたかは調査中」と明言を避けた。

東京工業大学の奈良林直特任教授は「再稼働の前に、出力ゼロの状態から徐々に制御棒を抜いて効き具合などを確認する通常の試験を行っていたと考えられる。制御棒を段階的に抜いていくはずが、何らかの原因で抜きすぎてしまったのではないか」と分析している。制限を超えたあとも11時間半にわたって停止しなかったというのは、原子炉の知識がない人が操作していた可能性があるとしている。


韓国の原発の状況

文在寅大統領は選挙運動中に「新規の原発建設を全面中断し、建設計画を白紙化する」と公言していた。

2017年5月17日に、老朽火力発電の一時停止を命じたが、原発についても、老朽のものを閉鎖、建設中のものは見直し、今後40年で原発に頼らないエネルギー政策に切り替えると述べた。

同氏は大統領選挙前の2017年4月14日、脱原発市民団体6団体と反原発についての政策協定を結んだ。(下表 参照)

2017/6/1 韓国、建設予定の原発の設計を中断、新大統領の脱原発方針の一環

文在寅大統領は10月22日、建設途中の新古里原発5、6号機(蔚山市)の工事再開を有識者らでつくる公論化委員会が勧告したことを受け「建設を早期に再開する」と表明した。

建設中の5基(上記に加え、新古里4号機、新ハヌル1号機、2号機)は認め、計画中のものは白紙に戻した。

大統領は、脱原発政策を支障なく進める考えを強調した。「これ以上の新規の原発建設計画を全面中止し、エネルギー需給の安定性を確認次第、設計寿命を延長し、稼動中の月城1号機の運転を中止する」とした。

2017/10/26 韓国大統領、新古里原発5、6号機の建設再開を表明

新古里原発4号機は2019年4月22日、初めて送電網に接続され、送電を開始した。


原子力関連団体と保守政界が政府の脱原発政策に反対する国民署名運動に本格的に突入している。

署名運動本部は、2018年12月から脱原発政策反対と新ハヌル3・4号機の建設再開を要求して署名運動を開始した。2019年1月21日に国民33万人の署名をそろえ、大統領に宛てた5枚の手紙と一緒に、大統領府に渡した。(政府は無視)

 

 

運転開始 原子炉形式 容量
 kW
文大統領の政策協定
ハヌル
(
蔚珍)

1

1988/9/10 加圧軽水炉 (PWR) 95万
2 1989/9/30 加圧軽水炉 (PWR) 95万
3 1998/8/11 加圧軽水炉 (PWR) 100万
4 1999/12/31 加圧軽水炉 (PWR) 100万
5 2004/7/29 加圧軽水炉 (PWR) 100万
6 2005/4/22 加圧軽水炉 (PWR) 100万
新ハヌル 1 (2018/4) KSNP (APR-1400) 140万

建設を暫定的に中止し、社会的合意を通じて運転の是非を決定→建設

2 (2019/2) KSNP (APR-1400) 140万
3 KSNP (APR-1400) 140万 許可を取り消す。→ 「取消」への反対運動
4 KSNP (APR-1400) 140万
ハンピッ

(霊光)

1

1986/8/25 加圧軽水炉(PWR) 95万
2 1987/6/10 加圧軽水炉(PWR) 95万
3 1995/12 加圧軽水炉(SYSTEM80) 100万
4 1996/3 加圧軽水炉(SYSTEM80) 100万
5 2002/5/21 KSNP(OPR-1000) 100万
6 2002/12/24 KSNP(OPR-1000) 100万
月城 1 1983/4/22 CANDU 67.9万 運転延長取り消し判決の控訴を取り下げ、即時閉鎖
2 1997/7/1 CANDU 70万
3 1998/7/1 CANDU 70万
4 1999/10/1 CANDU 70万
新月城 1 2012/7/31 KSNP(OPR-1000) 100万
2 2015/7 KSNP(OPR-1000) 100万
3 KSNP(OPR-1000) 100万 (未認可)
4 KSNP(OPR-1000) 100万
古里 1 1978/4 加圧水型(PWR) 58.7万 (2017年6月停止決定)
2 1983/7 加圧水型(PWR) 65万
3 1985/9 加圧水型(PWR) 95
4 1986/4 加圧水型(PWR) 95万
新古里 1 2011/2 加圧水型(PWR) 100万
2 2012/7 加圧水型(PWR) 100万
3 2017/1 加圧水型(PWR) 140万
4 2019/5 加圧水型(PWR) 140万

建設を暫定的に中止し、社会的合意を通じて運転の是非を決定
建設継続→ 2019/4 稼働

5 加圧水型(PWR) 140万 許可を取り消す。
2017/10/26 韓国大統領、新古里原発5、6号機の建設再開を表明
6 加圧水型(PWR) 140万
三陟 4基 白紙に戻す。
盈徳 4基

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