メイ首相、辞任か? → 辞任表明

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英紙Financial Timesは5月23日、メイ首相がEU離脱案を巡り膠着状況にある中、最終的な辞任期日を24日に示すと伝えた。

同紙によると、同日に与党・保守党議員でつくる有力組織「1922年委員会」のグラハム・ブレイディ委員長と会う際に案を示すという。

保守党は長い間,現職議員の組織をもっていなかったが、1922年の選挙で初当選した議員の間から,幹部議員以外の議員の組織をつくることが要望されて,ようやく実現した。このため保守党議員委員会を通称1922年委員会と呼ぶ。

市場では、「メイ首相が辞任期日を明らかにすると共に、党首選挙等について何らかの発言をする可能性がある」とされる。

英国では早くも、次の首相候補をめぐる思惑が高まっている。最有力と目されているジョンソン元外相のほか、多くの名前が取りざたされている。

メイ首相は離脱協定法案を可決させるため、5月21日に10の提案を行ったが、これが裏目に出、与野党が一斉に反発した。

議会下院の運営を担う院内総務が辞任、不信任案提出の動きもでるなど、メイ首相への辞任圧力がかつてなく強まっている。

一方で、状況は依然極めて流動的だとの情報もあり、メイ首相の去就が注目される。


付記

メイ首相は5月24日、6月7日に辞任すると表明した。Brexitの実現に向け、「できることは全てやった」と涙声で述べた。

保守党は6月10日ごろから新党首選びに着手し、7月中には新首相を選出できるよう準備に入る。後任にはジョンソン前外相ら強硬離脱派が名乗りを上げている。

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メイ首相は5月14日、英国のEU離脱(Brexit)をめぐり、労働党のジェレミー・コービン党首と会談した。首相はその中で、6月第1週(6月3日からの週)に離脱協定法案を議会採決にかける意向を伝えた。

首相は5月16日、6月の離脱協定法案採決の結果にかかわらず、採決後に後継首相選出のための日程を明らかにすることを党内協議で約束した。


首相は5月21日、6月初旬に議会で採決する離脱協定法案について、議会支持獲得のため新たに下記の10の提案を打ち出した。

昨年制定した現行のEU離脱法で、ブレグジット協定を国内法に置き換える必要があると定められている。

1 北アイルランド問題 バックストップ発動回避のため、移行期間終了の2020年末までに代替策をまとめる作業を行うことを法的に義務付け
2 バックストップ発動の場合でも、本島と北アイルランドの法規制上の一体性を維持。
新たな制度の導入の場合、北アイルランド自治政府と議会の同意を得ることを義務付け
3 対EU交渉 EUとの将来関係について、交渉前にその目標について、交渉後は条約の内容について、議会の承認を得ることを義務付け
4 労働・環境基準 労働者の権利をEU基準と同等又はそれ以上に維持することを確実にするための新法を導入。
将来の改正は労組、経済団体と協議
5 EUと同等の環境基準を維持。
最高レベルの環境基準を維持することを確実にするための独立機関を新設
6 EUとのモノの貿易 EU単一市場から離脱し、移動の自由に終止符を打つことを前提に、EUとのモノの貿易における国境手続きを最小化することを政府に義務付け
7 工業製品、農産物・食品についてはEUとの共通ルールを維持
8 独自の通商政策を確保しつつEUとの関税同盟の利益を享受する政府案か、EUの通商政策に発言権を有する一時的なEUとの関税同盟を締結する妥協案かのいずれかを、議会が決定できるよう法制化
9 二度目の国民投票 離脱協定法批准に先立ち、議会が二度目の国民投票の賛否を採決することを法制化
10 政治宣言 上記方針に沿うよう、EUと合意した政治宣言の修正を追求(EUと協議)

 出所:メイ首相演説を元にJETRO作成

2020年末までの移行期間中に解決策が出来ない場合、バックストップに移行し、本土は実質関税同盟だが、北アイルランドは、EUに残るアイルランド共和国との間に国境を設けることを避けるため、EUの多くの規制を残す必要がある。発動回避の代替策をまとめるとするが、法的に義務付けても、まとまるとは思えない。


EUとの関税同盟について、メイ首相は今回、かねて政府が主張していた独自の通商政策と両立可能な関税取り決めか、労働党との協議中に政府が妥協案として提示していた時限的な関税同盟の2案から議会が決定することを提案した。(但し、労働党は永久的な関税同盟を主張しており、「一時的な関税同盟」には満足していない。

2度目の国民投票の実施も、議会採決に委ねる意向を示した。
メイ首相は、個人的にはこの案には反対しているが、議会が持っている「真摯で正当な」思いは理解していると話した。その上で、2度目の離脱協定法案を可決することが国民投票実現への最初の関門だと強調した。

メイ首相は演説で、「離脱協定法案が可決されて初めて、議会はEUからどのように離脱するか決定できる」とコメント。「反対票を投じるのは、ブレグジット阻止に投じるのと同じ」と続け、新提案に基づく法案への支持を訴えた。


しかし、メイ首相が発表した新たな計画に、与野党から非難が集まっている。与党・保守党のEU離脱派からは、党規則を変更してメイ首相の不信任案を提出しようとする動きも出ている。

保守党では2018年12月12日、メイ首相に対する不信任投票が行われ、結果は信任が200票、不信任が117票で、メイ首相の続投が確定した。現在の党規則では、今年12月まで党内で辞任を求められることはない。この党規則を変更しようというもの。

メイ政権幹部で与党・保守党の議会運営を担うAndrea Jacqueline Leadsom下院院内総務が5月22日、メイ首相の新たな離脱方針に反対して辞任した。条件付きながらも2度目の国民投票を実施する可能性を表明したことに反発した。

与党からは次の発言がある。

ドミニク・ラーブ元EU離脱相は、「2度目の国民投票や関税同盟への参加を促す法案は支持できない。どちらの選択肢もブレグジットを実現させず、引っ掻き回すだけだ。そして保守党のマニフェストに反している」と指摘した。

ボリス・ジョンソン前外相も、保守党は2017年の総選挙で関税同盟からの脱却を公約に掲げており、今回の提案はそれに反していると反論。ツイッターで、「国民投票で決まったことを実現するため、私たちにはもっとできること、やるべきことがある」と訴えた。ジョンソン氏は、メイ首相が辞任した後の保守党党首選への立候補に意欲を示している。

北アイルランド地域政党で閣外協力の民主統一党はバックストップに反対しているが、今回の案について、「離脱協定案に含まれる根本的な欠陥は変わっていない」と一蹴。同党は4度目も反対するとしている。

労働党のコービン党首は「ほとんどこれまで議論したことの焼き直しで支持できない」と明言 した。

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これまでの経緯:

メイ英首相は4月6日深夜、Brexitについて、野党・労働党の支持を取り付ける以外に事態打開の道はないとする声明を出した。

2019/4/7 メイ首相、労働党との妥協に理解求める

EUと英国は4月11日、英国の離脱期限を10月31日まで再延長("flexible extension")することで合意した。

メイ首相は、議会が離脱協定案を承認すれば、英国は6月30日以前に離脱できると述べた。

2019/4/11 英離脱、10月31日まで再延期

5月2日に英国のイングランドと北アイルランドで地方議会選挙が行われた。イングランドでは離脱派の保守党と独立党が大敗した。

2019/5/6 英国の地方議会選挙、EU離脱派の政党は大敗

メイ英政権のリディントン国務相は5月7日、5月23日の欧州議会選挙に英国も参加すると明言した。メイ首相は6月30日までに離脱することを目指し、労働党と協議を続けてきたが、合意に達せず、欧州議会選挙に参加せざるを得なくなった。

欧州議会は新議会(2019~2024年)の開会初日時点の全加盟国から直接選ばれた議員で構成することが法的に義務付けられており、今回は7月2日がその日に当たる。

EUとのBrexit合意書では、「英国が欧州議会選挙に参加せず、かつ5月22日までに協定書を批准しない場合、5月31日に終了する」となっており、「合意なき離脱」となってしまう。

リディントン国務相は、「現在の目標は、欧州議会の新会期が始まる7月2日までに離脱を完了させること。英議会が夏季休会に入る(通常は7月半ば)までには「確実に」この問題を解決したい」とした。

しかし、労働党のコービン党首は5月17日、メイ首相に宛てた書簡で、離脱を巡る与野党協議の打ち切りを求めた。「重要政策で与野党の溝を埋めることができないことが明らかになった」としている。

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