中国は2018年7月以降、特定の米国産品に報復関税を課しているほか、国有企業が購入を減らしたり輸入時の審査手続きを遅らせたりしている。この結果、大豆の2018年の対中輸出は7割超減り、市場価格も下落し、幅広い農産品に悪影響が出ている。
米農務省は5月23日、「不当な報復と貿易障壁で被害を受けた農家に対する支援策」を発表した。発表文は次の通り。
トランプ大統領が農務長官に指示し、政府が引き続き自由でフェアで互恵的な貿易に向け努力し、長期的に米国の農業がグローバルに競争するのを助ける一方で、米国の農業生産者を支えるための救済策を立てるよう指示した。
特に大統領は、農務省に対し、160億ドルの支援を認めた。これは米国の農産品に対する不当な報復やその他の貿易障壁に対応するものだ。
この計画は農業生産者を助けるもので、大統領は長期的な市場バリアに対応する。
中国は長い間ルールに沿っておらず、大統領は米国は最早、彼らのアンフェアな貿易慣行、知財盗用に我慢できないとの明確なメッセージを送った。大統領が愛する米国の農家や畜産業者は貿易摩擦の影響を受けている。今回の計画は、彼らが中国や他の貿易相手からの不当な報復関税の影響を受けないことを保証するものだ。
中国の報復関税や市場のひずみは多くの米国のコモディティ:大豆、コーン、小麦、綿花、コメ、ソーガム、ミルク、豚、果物、ナッツ、その他に悪影響を与えてきた。高関税のため新市場を探さざるを得なくなった。中国向け出荷は異常に厳密な通関手続きで時間がかかり、品質劣化を生み、日持ちのしない製品は売れなくなる。
具体的な支援は次の通り。
1) 2019年 市場活性プログラム(Market Facilitation Program):145億ドルを直接生産者に支払い
商品金融公社(CCC)の法的権限の下、米国農務省の農業サービス局が主管となり、大豆をはじめとする農産物の生産者に対し、植え付け面積に指定の単価を掛け合わせることによって算出される金額を直接支払う。
対象品:alfalfa hay, barley, canola, corn, crambe, dry peas, extra-long staple cotton, flaxseed, lentils, long grain and medium grain rice, mustard seed, dried beans, oats, peanuts, rapeseed, safflower, sesame seed, small and large chickpeas, sorghum, soybeans, sunflower seed, temperate japonica rice, upland cotton, and wheat
何を植えるかに関係なく、これらの植え付けに地方ごとの一定率を乗じて支払う。合計植え付けは2018年のものを超えない。
その他に、酪農業、果物等への支援
3回分割で支払いが行われる。
2) Food Purchase and Distribution Program (FPDP) 14億ドル
報復で影響を受けた余剰コモディティの購入(フードバンク、学校、低所得者向け販売店向けに配る)
果物、野菜、加工食品、ビーフ、ポーク、ラム、鶏肉、ミルク等
3) Agricultural Trade Promotion Program (ATP) 1億ドル
生産者のために新しい輸出市場を開発するのを支援
米政権は5月10日午前0時1分、2千億ドル分の中国製品に課す制裁関税を現在の10%から25%に引き上げた。
この日、Trump大統領はツイッターを連発した。
このなかに次のものがある。
今や2500億ドルの中国からの輸入品に25%の関税がかかる。大金の関税が直接、政府に入る。
追加で入る1000億ドルの関税で米国の農家から農業製品を購入する。中国がこれまでに買ったよりもはるかに多額だ。これを貧しく、飢えた国々に人道援助の形で供給する。
2019/5/11 中国製品の制裁関税についてのTrump 大統領のツイッター
大統領は政府に入る追加関税は中国が支払うものと信じており、その金で農産品を買って農家を救済し、それを飢えた国に人道援助で供給する、結構なことだとしている。
今後は別だが、少なくとも今までは、大統領の主張が正しいようだ。追加関税のかなりの部分を中国の輸出業者が値引きの形で負担している。
2019/5/13 米国の中国製品への追加関税の影響
今回の支援策はこれとは関係なく、農家の不満を抑えるために、追加予算や新しい法律の承認などを必要としない範囲で支援を行うものである。
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