メキシコとの国境の壁建設、連邦地裁が一部を暫定差止

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米カリフォルニア州の連邦地裁は5月24日、大統領権限で国防予算をメキシコ国境沿いの壁建設に振り向ける計画について、一部を暫定的に差し止める判断を下した。

トランプ大統領は2月に非常事態宣言を出し、議会の反対を押し切って壁建設の予算を確保したが、司法が待ったをかけた。

同様の訴訟は他にも起こされているが、差し止めの判断が示されたのは初めて。トランプ大統領は最高裁まで争う構えを見せており、法廷闘争は続く見通し。

トランプ大統領は2月15日、「非常事態」を宣言した。

財務省の没収資金から6億ドル、国防総省の反麻薬プログラムから25億ドル、軍事施設建設費から36億ドルを流用する。

2月18日、カリフォルニア州を筆頭に16の州がトランプ政権を提訴した。

2019/2/18 米国予算案 成立、大統領は同時に非常事態宣言で他予算を壁建設に流用へ

トランプ大統領は3月15日、国家非常事態宣言を巡り議会が可決した同宣言を無効とする決議案に拒否権を発動した。

2019/3/15 米議会、非常事態宣言の阻止決議 トランプ氏拒否権へ  

下院は3月26日、大統領の拒否権を覆すための採決を行ったが、必要な2/3の賛成票を得られなかった。共和党からは14人しか賛成しなかった。

2019/3/27 米下院、非常事態宣言無効化に対する大統領の拒否権発動の阻止に失敗 

米民主党が主導する下院は4月5日、トランプ大統領の国家非常事態宣言に基づいて政権がメキシコ国境の壁建設を進めるのは合衆国憲法に違反するとして、宣言に基づく建設費捻出の違憲確認と支出差し止めなどを求めて首都ワシントンの連邦地裁に提訴した。

2019/4/8 米下院、国境の壁建設は憲法違反として提訴

今回の司法判断は、カリフォルニア州の連邦地裁のHaywood Gilliam Jr. 判事によるもので、壁建設に反対する Sierra Club と南部国境コミュニティ連合を代表してAmerican Civil Liberties Union が行った訴訟に対するもの。5月25日にも壁の建設作業が開始される予定であった。

壁建設のために防衛予算から流用する資金は議会から使用を認められたものではないと理由で、資金使用を一時的に停止することを命じた。

政権が壁建設に使用しようとしている67億ドルのうちの、アリゾナ州とテキサス州の2つの地域で51マイルの壁を建設するための10億ドルについてである。

判事は次のように述べた。

議会が資金使用についての行政の要求を拒否した時に、行政が議会の承認なしに他の方法でその用途に資金を使うのは、建国時に遡る基本的な権力分立の原則に反するものだ。

原告が、国の行動が決められた権限を超えるものであり、その行動から回復不能の被害が生じるということを証明するだろうと思われるため、最終判断をする前に、一時停止命令を出す。

この裁判には、カリフォルニア州と他の19 州の連合による提訴も含まれているが、判事はこれについての一時停止命令は出さなかった。(緊急性を判断か?)
但し、最終判断のための審議にはこれを含めることを認めた。

最終判断のための審議は6月5日に行われる。原告側がより広範囲の差し止めや訴訟を起こす利益に関し陳述を行う。


これとは別に、5月23日にWashington D.C. の連邦地裁でも米下院が提訴した裁判が行われ、原告の下院側は国防総省予算からの流用の51億ドルについて権限分立原則に違反すると主張した。




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