Qualcomm、独禁法裁判で敗訴

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2017年1月17日、米公正取引委員会(FTC)はQualcommをスマホ用の半導体の独占で連邦地裁に訴えた。スマホ用モデムチップで圧倒的なシェアを持つQualcommが、その地位を背景に端末メーカーに対して不利な契約条件を無理強いしたり、過剰なライセンス料を要求するなど独占禁止法に違反する行為を行っているとした。

これについては、Qualcomm敗訴の可能性があり、米司法省の独禁法部門は5月2日、もしQualcommが有罪とされる場合、過度な罰則(remedy)が今後の5Gでの競争で米国が不利になることを懸念し、裁判所に対し、どんな罰則を与えるかについて注意深く考慮するべきだとし、罰則についてヒアリングを行うことを要請した。

過度に広範な罰則は5G技術とそれに依存する川下の利用技術の市場で競争力とイノベーションを下げる恐れがあるとし 、そうなれば、独禁法の罰則の適切な範囲を超えることとなるだけでなく、競争を助けるのではなく、競争を害する明確な可能性があるとする。

2019/5/8

なお、Qualcommのやり方の最大の被害者で、これまで企業としても争ってきたAppleは4月16日、Qualcommとの間で、Appleの契約メーカー(Contract manufacturers) との間のものも含めて、すべての訴訟を取り下げることで合意した。Appleとしては、iPhoneの5G対応を早期に進めるためにも、Qualcommとの和解を急ぐ必要があったとみられ、実質的にQualcommの勝利である。

2019/4/18 AppleとQualcomm、知財紛争で全面和解


この裁判は、カリフォルニア州北部連邦裁判所でLucy Koh 判事が担当する。( Lucy Koh 判事はKorea系女性裁判官で、Apple vs Samsung の裁判も担当した。)

2019年1月に審理が始まったが、5月21日判決があった。

Qualcommがモデム事業での圧倒的な地位を悪用し、不当に競争を抑圧しているとした。同社のライセンス慣行が数年間にわたり、半導体市場の一角で競争を抑制し、競合他社、スマホ市場、消費者に悪影響を及ぼしたとの判断を下した。

同社のライセンス慣行はCDMA(符号分割多重接続)と第4世代(LTE)移動通信チップ市場で競争を阻害した。同社と競合している通信用半導体チップメーカーと携帯電話メーカーだけでなく消費者にも被害を与えた。

同社は自社特許権に過度に高いロイヤルティーを付けて競合企業を市場から締め出すなど反独占法に違反した。端末卸売価格に一定の割合をロイヤルティーとして上乗せして年間約50億ドルを稼ぐ収益モデル自体も不公正要素がある。

そのうえでQualcommに対し、ライセンスのやり方を変え、供給凍結をほのめかすことなく、手頃な価格でのライセンス契約を再交渉するよう命じた。

知財ライセンスの購入をモデム供給の条件にしないこと、顧客と契約条件を真摯に再交渉するよう命じた。競合の参入を妨げる独占契約を結ばないよう、SEP (FRAND宣言した標準必須特許) ライセンスについてはルール通りに行うことを求めた。

命令を順守しているかどうかを、7年間にわたりFTCに報告することも義務付けた。

(1) Qualcomm must not condition the supply of modem chips on a customer's patent license status and Qualcomm must negotiate or renegotiate license terms with customers in good faith under conditions free from the threat of lack of access to or discriminatory provision of modem chip supply or associated technical support or access to software.

(2) Qualcomm must make exhaustive SEP (FRAND宣言した標準必須特許) licenses available to modem-chip suppliers on fair, reasonable, and non-discriminatory ("FRAND") terms and to submit, as necessary, to arbitral or judicial dispute resolution to determine such terms.

(3) Qualcomm may not enter express or de facto exclusive dealing agreements for the supply of modem chips.

(4) Qualcomm may not interfere with the ability of any customer to communicate with a government agency about a potential law enforcement or regulatory matter.

(5) In order to ensure Qualcomm's compliance with the above remedies, the Court orders Qualcomm to submit to compliance and monitoring procedures for a period of seven (7) years. Specifically, Qualcomm shall report to the FTC on an annual basis Qualcomm's compliance with the above remedies ordered by the Court.


この
判決は、Qualcommのビジネスモデルを問題視しており、スマートフォン業界を一変させる可能性がある。

Qualcommは同日、判事の結論、判事による事実の解釈および法の適用に強く反対するとし、控訴裁判所に控訴すると発表した。

FTCは「Qualcommの慣行が独占禁止法違反であるとする裁定は、経済の重要な分野における競争を維持するための重要な勝利だ」と述べた。



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