アップル、対中関税引き上げ反対の書簡; Dell、HP、Intel、Microsoftも4社共同で

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米中貿易摩擦が高まりを見せるなか、Appleは6月17日、Robert Lighthizer 米国通商代表に対して公開書簡を送付した。

米国が中国からの輸入品 約3000億ドルに対し最大25%の関税をかける第4弾制裁に反対するもの。


内容は次の通り。

今回の案ではAppleの主要製品( iPhone, iPad, Mac, AirPods, AppleTV)の全てと米国で修理に使用する部品やバッテリーが含まれている。また、モニターやキーボードのようなアクセサリーも含まれている。

我々は政府に対し、これら製品に関税を掛けないよう、強く要請する。

Tariff Code Apple Products
8517120050 iPhone
8471300100 MacBook, iPad, iPod Touch
85176200 Apple Watch, AirPods, HomePod, BeatsWL, AirPort, Time Capsule
8471490000 iMac
8517700000 iPhone repair parts
8525501000

8528520000
8471602000
8518302000
9113908000
AppleTV

Computer Monitors/MB Monitor Modules
Keyboards
Wired headphones/earphones
Wired speakers
8507600020 Batteries, battery cases


(Appleの経済的貢献)

Appleは米国で最大の雇用者の1つである。直接従業員、製造・販売面での協力会社の従業員、成長するアプリケーション分野で生計を立てる米国人を含めて50州全てで200万以上の雇用に責任を持っている。

2018年に減税案が通り、我々は米国経済に対し、5年間で3500億ドル以上の直接貢献を行う意向を表明し、それを実行しつつある。いくつかの新しい拠点を開き、米国で新たな雇用をつくった。

Appleはまた、政府への米国最大の納税企業であり、さらに地方の固定資産税やSales tax、従業員の税で毎年数十億ドルを払っている。

最後に、Apple製品は米国の家庭、学生、企業、政府組織、学校、病院などで、連絡、教育、健康改善、創造などのために使われている。

(関税の影響)

Apple製品への米国の関税はAppleの米国経済への貢献を減らす結果となる。

米国の関税は、Appleのグローバルな競争力への重荷となる。グローバル市場で競合する中国企業は米国市場ではあまり活動しておらず、米国関税の影響を受けない。米国企業以外の競合企業も同様である。このため、米国の関税は我々のグローバルな競争相手に塩を送ることとなる。

(結論)

我々はこの関税案を進めないよう、強く要請する。

ーーー

Appleは、関税が掛けられた場合、値上げするのかどうかについては触れていない。

政府への関税取り止め要請とは別に、Appleは主要取引先に対し中国での集中生産を回避するよう要請したという。日本経済新聞が報じた。

米中貿易戦争の激化と中国の人件費高騰を受けリスクを分散する目的で、Apple向けの中国生産のうち15~30%を海外に分散するよう検討を促した。
Appleの調達額は10兆円を超え、同社製品の9割超は中国で生産されているとされる。

日経アジアレビューによると、アップルから要請を受けた主要取引先は、iPhoneの組み立てを行っている台湾の鴻海精密工業、和碩聯合科技(Pegatron)、緯創資通(Wistron)のほか、MacBookを生産する広達電脳(Quanta Computer)、iPadを生産する仁宝電脳工業(Compal)、 AirPodsを生産する英業達(Inventec)など。

メキシコ、インド、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどが有力な候補地に挙がっている。

ーーー

Dell Technologies、HP、Intel、Microsoft の4社は6月17日、USTRに共同で書簡を送った。

米国の主要イノベーターとして知的財産保護の重要性を認識しており、アンフェアは知財慣行への政府の対応には感謝するが、ラップトップコンピューターやタブレットに対する今回の関税引き上げ案は中小企業、幅広い消費者、デバイスの製造業者を含めた多くの米国企業を不相応に傷つけることになる。同時に、それらへの関税はUSTRが是正しようとしている中国の貿易慣行を是正することにならず、逆に、米国の技術的リーダーを傷つけ、革新を行い、グローバル市場で競争する力を弱めることとなる。

このため、これら製品を除外することを要請するとし、以下の背景説明をしている。

I.  4社は主導的イノベーターであり、雇用を創っている。

II.  関税は米国の企業、消費者、学校を不相応に傷つける。

米国のラップトップメーカーは米国消費者を満足させるため、中国に頼っている。

 1) 消費者への害

Consumer Technology Association の試算では、米国の価格は少なくとも19%(平均価格のラップトップで1台 120ドル程度)上昇する。
価格に敏感な消費者は購入を止め、古いものを使ったり、使うのを止めるかも知れない。

予算が決まっている学校は大変だ。学校での1人1台がやれなくなる。

 2) 中小企業への害

米国には3千万の中小企業があり、米国の雇用の半分を占めるが、業務の効率化のためラップトップを使っている。

 3) イノベーションへの害

ラップトップのメーカーも著しく傷つけ、米国が技術面で引っ張っていく能力を害する。

関税をフルには負担できず、値上げせざるを得ないが、値上げで需要が減少する。

長期的に革新能力を失い、米国の技術面でのリーダーシップを維持できなくなる。

米国以外の競争相手は、米国市場でのシェアが少ないため、被害も少なく、相対的競争力が増すことになる。

III. 関税は中国のアンフェアな知財慣行の是正に役立たない。

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