国際石油開発帝石(INPEX)は6月16日、インドネシアのアラフラ海Masela 鉱区Abadi LNGプロジェクトの改定開発計画について、インドネシア政府当局と基本合意書を締結した。
基本合意書は、概念設計(Pre-FEED)作業終了後に実施した改定開発計画に関する協議において、本プロジェクトの経済性を確保するために、政府当局と事前に合意した事項を規定したもの。
今後、政府当局との間で、改定開発計画の提出及び承認、生産分与契約の修正及び延長等の諸手続きを開始する。
国際石油開発帝石(INPEX) は1998年11月にインドネシア政府の公開入札により Masela鉱区の権益を取得、その後、オペレーターとして探鉱作業を推進し、2010年12月に第一次として LNG年産250万トンをFLNG方式で開発する開発計画がインドネシア政府より承認された。
その後の変遷で年産950万トン規模 の陸上LNG計画で再スタートする。
同社の 上田社長は10年弱の遅れについて「全体ではプラスの面の方が大きい」との認識を示した。
2018年に生産を始めたオーストラリアの大型LNG事業からの技術やノウハウの移行が可能である点などを理由に挙げた。
豪州プレリュードFLNGプロジェクトは2019年3月にコンデンセートの出荷を開始、2019年6月にLNGの出荷を開始した
2018/12/28 国際石油帝石、豪州プレリュードFLNGプロジェクトの生産開始
アバディLNGプロジェクトの概要
鉱区 | インドネシア共和国マセラ鉱区 |
鉱区期限 | 現行鉱区期限2028年に、期間追加(7年)を申請中、更に延長(20年)を申請予定。 (2055年11月15日までを申請予定) |
鉱区面積 | 約2,503平方キロメートル |
水深 | 400~800メートル |
鉱区位置 | マルク州サムラキ市沖合約150キロメートル
|
生産規模 | 天然ガス 総生産量(LNG換算)年産1,050万トン ・LNG年産950万トン規模 ・鉱区周辺地域の現地需要向けにパイプラインガス供給を予定 コンデンセート 日量最大約3.5万バレル規模 |
権益比率 | インペックスマセラアラフラ海石油:65%(オペレーター) SHELL:35% |
その他 | 2017年6月にインドネシア政府からNational Strategic Projectに、 さらに9月にはPriority Infrastructure Projectに認定 |
LNGプラントの設置場所については触れていないが、2015年9月にインドネシア政府の海洋担当調整省はガス田から373マイルのパイプラインでAru 島に運ぶ案を主張しており、ここであると思われる。
経緯は次の通り。
国際石油開発帝石(INPEX) は1998年11月にインドネシア政府の公開入札により Masela鉱区の権益を取得した。
その後、オペレーターとして探鉱作業を推進し、2000年に掘削した試掘第1号井によりAbadi ガス田を発見した。その後、6坑の評価井掘削を含むガス田評価作業を実施し、同ガス田にはLNG開発に十分な天然ガス埋蔵量を確認した。
2010年12月に第一次として LNG年産250万トンをFLNG方式(浮体式LNG生産施設)で開発する開発計画がインドネシア政府より承認された。
参加権益比率はINPEXが90%(オペレーター)で、 インドネシアの有力エネルギー企業PT Energi Mega Persada社の子会社PT EMP Energi Indonesia(EMPI)が10%となったが、2013年6月にEMPIの権益を買収し、INPEXが65%(オペレーター)、Shell 35% の体制となった。
その後、天然ガス埋蔵量の増大が確認され、2014年にLNG能力を3倍の750万トンに拡大したFLNG方式での「改定開発計画」の承認を申請した。
申請を受けたインドネシア政府の内部で意見が分かれた。
2015年9月に海洋担当調整省は陸上案を主張した。
Abadiガス田から373マイルのパイプラインでAru 島に運び、陸上でLNGにすれば、建設費は160億ドルで、洋上の場合の220億ドルにくらべ、60億ドルの節約になるとコストダウンになるだけでなく、近辺の地域の経済発展にも役立つと主張した。
エネルギー鉱物資源省と石油·ガス上流レギュレータは、 洋上なら148億ドルで、陸上より45億ドル安いと主張し た。
ジョコ大統領は2016年3月23日、陸上に建設すべきだとする政府方針を決定した。
INPEXは4月1日にインドネシア政府より陸上LNGによる開発計画の検討を求める内容の通知を受領した。
2016/3/29 国際石油開発帝石、インドネシア政府方針でLNG計画を大幅変更へ
その後、LNG価格は世界的に大きく下落し、計画の存続に疑念が生じた。
Inpexはその後、政府当局との経済性確保を含めた協議を続け、その結果を踏まえて2018年3月に、年産950万トン規模を想定する陸上LNGのPre-FEED作業の開始の決定に至った。
コメントする