欧州議会選挙は5月23日~26日に行われた。欧州議会議員は任期が5年。総議席は751で、国別に議席数が決まっている。
英国は、本土が70議席、北アイルランドが3議席の合計73議席で、英国は10月末にはEUから離脱するが、規定上、選挙を行った。
英国では5月23日に実施され、Brexit党が29名で最多数となった。与党と労働党は惨敗した。
2019/5/29 欧州議会選挙で英国の与党と最大野党が敗北
欧州議会では、出身国での所属政党ではなく、イデオロギーが近似する議員で会派を作っている。
選挙の結果は下記の通りで、欧州政治の分極化を浮き彫りにした。
これまでの主流の欧州人民党(中道右派)と社会民主進歩同盟(中道左派)が大きく議席を失い、初めて過半数を割り込んだ一方、同じ親EUの欧州自由民主同盟が大きく伸びた。
EU懐疑派では、イタリアの極右「同盟」やフランスの極右「国民連合」、ドイツの極右「ドイツのための選択肢」などの入る、EUとの対峙も辞さない強硬な懐疑派がいずれも伸長した。
しかし、懐疑派の極左は席を失って、全体ではあまり変わらず、EU懐疑派が独り勝ちして欧州統合に強くブレーキがかかる事態はひとまず回避した。
今後は親EU派が結束できるかが焦点となる。
今回 | 前回 | 増減 | |||
欧州人民党(EPP) | 中道右派 | 179 | 215 | -36 | 戦後欧州の安定を支えてきた。 初めて過半数を割り込んだ。 |
社会民主進歩同盟(S&D) | 中道左派 | 153 | 190 | -37 | |
欧州自由民主同盟(ALDE&R) | 中道 | 105 | 70 | 35 | 「最も議席数を伸ばしたのは、大衆迎合主義(ポピュリズム)政党でも極右でもなく、われわれ親EUグループだ」 |
欧州緑グループ・欧州自由同盟 (Greens/EFA) |
69 | 50 | 19 | ||
(親EU 合計) | (506) | (525) | (-19) | ||
欧州保守改革G (ECR) | EU懐疑派 | 63 | 74 | -11 | |
国家と自由のヨーロッパ(ENF) | 極右 | 58 | 39 | 19 | イタリアの極右「同盟」やフランスの極右「国民連合」 (それぞれ国内で第1党を獲得している。) |
自由と直接民主主義のヨーロッパ (EFDD) |
54 | 46 | 8 | ドイツの極右「ドイツのための選択肢」、英・独立党、伊・五つ星等など | |
欧州統一左派・北方緑の左派同盟 (GUE/NGL) |
極左 | 38 | 52 | -14 | |
(EU懐疑派 合計) | (213) | (211) | (2) | ||
無所属 | 8 | 15 | -7 | ||
未定(新規当選など) | 24 | 0 | 24 | ||
合計 | 751 | 751 | 0 |
今後、 今秋にそろって任期切れを迎える欧州連合(EU)機関トップ(欧州委員長、大統領、欧州議会議長、ECB総裁など)の後任選びが本格化 する。これらを一体で決めるため、各国で綱引きが行われる。
欧州議会選挙を受け、EUは5月28日に非公式首脳会議を開き、10月末に5年の任期が切れるJean-Claude Juncker 欧州委員長の後任選びなどについて協議した。
これまでは欧州議会の第一会派が擁立する「筆頭候補」が選任されたが、今回は従来方法を見直し、筆頭候補が自動的に選ばれる方式を採らないことを確認した。
今回の選挙では、親EUの二大会派が議席を減らす一方で、右勢力や「緑の党」が伸長し、多極化が進んだ。
EUの意思決定がより困難になることを懸念し、欧州委員長には、首脳らと欧州議会の双方から幅広い支持を得られる人選が必要との認識で一致した。
今回は特に、フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相が対抗している。
欧州委員長の候補には、下記の名が挙がっている。
出身 | 現職 | 会派 | ||
Manfred Weber | ドイツ | 欧州議員 | 欧州人民党 (中道右派) |
組織トップの経験なし |
Frans Timmermans |
オランダ | 欧州委 第一副委員長 |
欧州社会・進歩連盟 (中道左派) |
ユンケル委員長右腕 |
Margrethe Vestager | デンマーク | 欧州委員 (競争政策) |
欧州自由民主同盟 (リベラル) |
米のIT大手と対決 初の女性委員長狙う |
Michel Barnie | フランス | Brexit 主席交渉官 |
欧州人民党 (中道右派) |
メルケル首相は最大会派欧州人民党のWeber欧州議員を推すが、マクロン大統領は、「カリスマ性と経験ある人物がふさわしい」と主張、それを満たす候補として他の3人を挙げている。
コメントする