米国、対メキシコの追加関税見送り、メキシコ政府と対策で合意

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トランプ大統領は6月7日、メキシコからの全輸入品に対する5%の関税発動を「無期限」で見送るとツイッターで発表した。メキシコが米国への不法移民流入を防ぐための対策を取ることで合意した。

詳細は国務省が発表するとしている。

I am pleased to inform you that The United States of America has reached a signed agreement with Mexico.

The Tariffs scheduled to be implemented by the U.S. on Monday, against Mexico, are hereby indefinitely suspended.
Mexico, in turn, has agreed to take strong measures to stem the tide of Migration through Mexico, and to our Southern Border.

This is being done to greatly reduce, or eliminate, Illegal Immigration coming from Mexico and into the United States.

Details of the agreement will be released shortly by the State Department. Thank you!

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トランプ米大統領は5月30日、メキシコが米国への不法移民流入を止めるまで同国からの輸入品に関税を課すと表明した。

米国を脅かす非常事態に対応するため、大統領に商業活動を規制する権限を与える「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づき、関税を課するもので、メキシコが対策を取るまで、下記の通り、順次税率を引き上げる。

6月10日から 5%、7月1日に10%、8月1日に15%、9月1日に20%、10月1日に25%とし、問題解決までこれを維持する。

2019年6月1日 米政権、メキシコからの全輸入品に関税、移民問題解決まで毎月税率引き上げ


これについては、与党の共和党の議員も適用阻止を求め、メキシコ政府との交渉で解決策を見いだすようここ数日間、トランプ米政権に要請してきた。

共和党上院議員の大半は国境対策強化を強いる手段として関税を使うことに反対しており、大統領としての法的権限の選択を疑問視し、関税発動の阻止へ議会で行動することを検討している。


しかしトランプ大統領は6月4日夜のツイッターで、6月10日にメキシコからの輸入品すべてに5%の関税賦課を始めるとの警告は「はったりではない」と言明。面目を保つために安易に合意をまとめることには一切関心がないと明確にした。

Can you imagine Cryin' Chuck Schumer (民主党上院総務)saying out loud, for all to hear, that I am bluffing with respect to putting Tariffs on Mexico.

What a Creep. He would rather have our Country fail with drugs & Immigration than give Republicans a win. But he gave Mexico bad advice, no bluff!


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メキシコのエブラルド外相は6月5日~6日に関税措置の撤回に向けてペンス米副大統領、ポンペオ国務長官らと会談した。

この結果、今回の合意に達した。

国務省の発表(U.S.-Mexico Joint Declaration は次の通り。

中米からメキシコを経由して米国に入る移住者の急増で、両国は、人道的な緊急事態と安全保障の問題を早期に解決する必要性を認識する。両国は直ちに共同で永続的な解決を目指し協力する。

1)メキシコ側

移住者を抑えるため前例のない手段を取る。国家警備隊を国境を中心に全国に配置する。移住を斡旋、アレンジする組織や違法な資金・輸送ネットワークを潰すべく決定的手段を取る。
メキシコと米国は情報交換や共同行動など、相互協力を強化する。

2)  Migrant Protection Protocols(トランプ政権が2019年1月より開始した移民政策 )

「メキシコから米国に到着した外国人で、明らかに許可されない者と退去手続き中の者」は、裁判所による手続きの間、メキシコに送還し、待機させるというもの。
トランプ大統領は2018年12月の発表時「メキシコ残留」政策と呼んでいた。

2019年1月にカリフォルニア州サン・イーサイドロの難民申請者から適用を開始し、その後、カレクシコやエルパソにエリアを拡大していた。

米国は直ちにMigrant Protection Protocolsを国境全体で実施する。
メキシコとの国境を越えて難民申請をするものは直ちにメキシコに戻され、そこで申請結果を待つ。

メキシコは、それらのものが申請を待つ間、メキシコに入るのを人道的見地から認める。職やヘルスケア、教育の面倒を見る。

米国は出来る限り早く申請の結論を出す。

3) これらの対策が効果が出ない場合、再度協議し、90日以内に結論を出す。

4) 地域戦略

メキシコのロペスオブラドール大統領は、移民の北上を抑えるため、貧困に悩むメキシコ南部やホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの開発支援でメキシコと協力するようトランプ米大統領に働き掛けてきた。

2018年12月18日に両国はこの必要性を認める声明を出し、米国は同地域の開発に数十億ドル規模の投資を行うこととした。

今回、両国はこの声明を確認し、メキシコがこの目的達成のためにエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスとともに行うなうComprehensive Development Plan を歓迎する。

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トランプ大統領の追加関税を使った脅迫外交がひとまず成功した。

しかし、米国が密入国の流入を阻止できないのをメキシコが阻止できるとは考えにくい。実際に流入が減らなかった場合に再び問題が再燃する恐れがある。

付記

メキシコのエブラルド外相は6月10日、米と合意した不法移民対策が45日間で中間評価されることを明らかにした。米側に不十分と判断されれば追加措置を取り、最終的に90日間で追加関税発動の是非を含めた結論が出される。



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