ジャパンディスプレイは、台中連合の各社が6月14日に支援の内部機関決定を行うとの発表をしていたが、6月14日夕刻、まだ通知を受け取っていないと発表した。
「通知内容により関係者との再協議を要する場合は、速やかに協議を行い、その結果が決定次第開示する」としている。
企業連合のうち、台湾の1社が支援見送りを決めたことが分かったと報じられている。JDIの経営が想定以上に悪化していることなどから、出資をめぐる条件が折り合わなかった。
JDIは17日、台湾タッチパネル大手の宸鴻光電科技から交渉離脱の通知を受けたと発表した。
6月18日には定時株主総会を開く。元々、台中連合による支援はこれには間に合わず、追って臨時総会を開くとしていたが、経営不安は解決すると説明する予定であった。
先行きが不明のままで、どうするのだろうか。
なお、シャープの戴正呉会長兼社長は6月14日、日本経済新聞の取材で、ジャパンディスプレイの支援も「要請があれば検討する」と述べたとされる。
シャープの再建を巡っては、経産省の意向を受けた産業革新機構と鴻海が争った。
経産省には、革新機構がシャープに出資した上で液晶部門を分離させてジャパンディスプレイと統合させる 意向があったとされる。
支援の内容の差と、会社の解体を嫌う経営陣の意向から鴻海に決まった。
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経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は5月30日、同社に対する支援策が確定したことを発表した。
JDIでは台中連合の金融支援を確定させるべく、関係各社に協力を要請し、下記の協力を得た。
1) Apple社:当面の財務強化に対する協力として、前受金に対する債権相殺金額を、2年間にわたり 、従来の合意条件に対して半額繰り延べ。発注の増量についても真摯に協議。
2) 現在の筆頭株主のINCJ(旧 産業革新機構) 資金面の協力を強化
以上の協力を得たのを受け、台中連合は総額800億円の支援について、6月14日に各社の内部機関決定を行う旨、連絡してきた。
JDIの定時株主総会(6月18日)での承認は間に合わないが、年内に行う臨時株主総会で承認を得て、実行する。
2019/6/3 ジャパンディスプレイ、支援が進展
この各社の内部機関決定がまだなされていない。
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ジャパンディスプレイ(JDI) は5月15日、2019年3月期の決算を発表した。
特別損失で白山工場資産減損 747億円を含む752億円を計上した。
同時に、同社は構造改善策を実施することを発表した。
・ 1,000人規模の早期既報退職を上期中に募集
・ 役員報酬及び管理職等の賞与減額等構造改革費用は約100億円、効果は年間ベースで約200億円と見ている。
2019/5/17 ジャパンディスプレイ、5年連続赤字
JDIは6月12日、この構造改革の実施と、合わせて執行体制の刷新に関する発表を行った。
上記の発表後、具体的内容を検討してきたが、6月12日開催の取締役会において、 下記を決議したとしている。
1) 今後の需要の大幅回復の見込みが立たないモバイル事業の縮小と、これに伴う白山工場の一時稼働停止 及び茂原工場後工程ラインの閉鎖
2)人員削減
3) 役員報酬及び社員給与等の削減
4) 執行体制の刷新
1) 工場停止
従来取り組んでいる車載・ノンモバイル事業の強化を継続する一方で、モバイル事業については縮小し、生産及び一部生産設備の集約を図る。
スマートフォン向けディスプレイの生産拠点の一つである白山工場においては、一時稼働を停止
モバイル事業用の後工程生産の縮小のため、 茂原工場後工程ラインを閉鎖
同社の工場は下記の通り。
元の持ち主 今回決定 簿価 石川工場 東芝モバイル(松下電器) 白山工場 JDIとして新設
Appleからの前受け金で建設2016/12 稼働 2019/7~2019/9 停止
9月末までに再稼働等の判断約1000億円 鳥取工場 ソニーモバイル(鳥取三洋) 東浦工場 ソニーモバイル 茂原工場 日立ディスプレイズ 2019年夏から有機EL量産開始 2019/9
後工程ライン(V2ライン)閉鎖
生産設備の除売却等約3億円 能美工場 東芝モバイル(東芝) 停止→ 産業革新機構に譲渡
→ JOLEDに深谷工場 東芝モバイル(東芝) 2016/4 閉鎖
参考 海外工場
Suzhou JDI Electronics 江蘇省蘇州市 素尼移動顕示器(蘇州)を買収 Nanox Philippines Philippines ナノックスより、81%取得 Kaohsiung Opto-Electronics Taiwan 旧 高雄日立電子 Suzhou JDI Devices 江蘇省蘇州市 旧 日立顕示器件(蘇州) 2018/5 株式持分を全て譲渡 Shenzhen JDI 広東省深圳市 旧 深圳日立賽格顕示器 2018 中国企業に売却
白山工場の再稼働等の判断は9月末までに行う。
なお、 今後の顧客需要の動向により、白山工場の資産についての減損損失400~500億円を特別損失として計上する可能性がある。
また、白山工場の再稼働を行わなかった場合には、追加の特別損失として、工場運営に係る違約金や補助金返済等100~200億円が発生する可能性がある。
付記 2019/9/13 「2019/10以降も稼働停止継続」と発表
「白山工場の一時稼働停止決定後、顧客からの受注拡大に努めるとともに、顧客の需要動向を注視してまいりましたが、現時点では、稼働の再開により利益を創出するだけの需要増は見込めておりません。
一方、Harvest Tech Investment Managementから将来のOLEDディスプレイの量産拠点の候補として白山工場を活用する案が示されており、その可能性についても協議を開始しております。
こうした状況を踏まえ、当社は当面の間、白山工場の稼働停止を継続することといたしました。
また、茂原工場後工程ラインにつきましては、2019年8月末までに生産を終了しております。」白山工場は液晶パネルのみで、需要回復は望めない。有期ELへの転用には少なくとも数百億円規模の投資が必要とされる。
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白山工場は第6世代(1500×1850ミリメートル)液晶新工場で、1,700億円を投じて建設し、3年前に完成したばかり。前年度に減損損失を計上したとはいえ、休止の件はこれまで出ていなかった。
台中連合が6月14日の内部機関決定に踏み切ったのには、Appleが発注の増量についても真摯に協議するとしたのも一つの理由であろう。
工場を停止するのは、Appleからの注文がほとんどないことを意味する。JDIは今回、白山工場の再稼働を行わなかった場合についてさえ触れている。
そのような状況で台中連合が出資するであろうか。
問題は、JDIと Apple の契約である。この前受金の契約には下記の条項がある。
・JDIは年間2億ドルまたは売上高の4%のいずれか高い金額を四半期ごとに返済する。(今回、一部条件緩和)
・JDIの現預金残高は300億円以上を維持する。
・上記2つの条項を守れなければ、Appleは、前受け金の即時全額返済、または白山工場の差し押さえを要求できる権利を持つ。
工場を停止したままで返済を続けるのは困難である。
この投資は社内で異論が浮上する中、革新機構から派遣された社外取締役が決定を主導したとされる。液晶から有機ELへの移行という技術トレンドを読み誤った。
また、Appleのために、Appleの資金で建てた工場であり、本来なら、Take or Pay 条項を入れるべきであった。何の条件もなしに義務だけというのは考え難い。
そもそもは、テレビ用液晶パネルが競争力を失った時点で、中小型ならやっていけるとした判断自体が無理であったようだ。
2) 人員削減
(1)国内における希望退職者の募集
①募集人数:1,200名
②募集対象者:2020年3月31日時点で40歳以上の社員(JOLED出向者、海外出向者含む)
(注1)白山工場組織、V2ライン及び西日本オフィスの各拠点における勤務者については、年齢の制限を設けない
(注2)2019年6月1日現在の国内社員及び出向者の数 4,635名退職希望者には退職金規則に定める退職金に加え、退職特別加算金を支給する。また、希望者に対しては再就職の支援を行う。
(2)海外販売子会社における人員の削減
スマートフォン向けディスプレイを主として販売する中国の海外販売子会社において、数十名程度の人員削減を実施
早期割増退職金として約90億円の特別損失を計上する。人員削減で年間200億円のコスト削減を図る。
3) 役員報酬、管理職給与及び一般社員賞与等の減額等
4) 執行体制の刷新
9月30日辞任 代表取締役社長兼社長執行役員CEO 月﨑義幸 10月1日就任 取締役会長 社外取締役 橋本孝久 社長執行役員兼 CEO 常務執行役員CFO 菊岡稔
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