米、中国スパコン大手を禁輸対象に指定

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米商務省は6月21日、輸出管理法に基づき安保上懸念がある企業を列挙したEntity List (規則 744.11(b) )にスーパーコンピューター大手5社とそれぞれのグループ会社を追加した。

付記

米商務省のBureau of Industry and Security (BIS) は8月13日、中国国有の原子力発電最大手、中国広核集団 とその子会社をEntity List (事実上の禁輸リスト)に加えると発表した。

米国の原子力技術を軍事転用しているとして、米国製品の販売を阻止する。原発は中国がハイテク産業育成策「中国製造2025」で掲げる重点分野 で、米政権は禁輸措置などを駆使して中国ハイテクへの締め付けを強めている。

Entity Listに載ったのは下記の各社:

China General Nuclear Power Corporation (CGNPC) 別名China Guangdong Nuclear Power Corporation
China General Nuclear Power Group
China Nuclear Power Technology Research Institute Co. Ltd.
Suzhou Nuclear Power Research Institute Co. Ltd.



Entity
List 対象は、これまでは、大量破壊兵器(WMD)プログラム、テロリズム又はその他の行為のリスクをもたらす恐れのある企業が対象であった。

「知財戦争」に適用したのは、2018年10月29日に中国の福建省晋華集成電路(Jinhua Integrated Circuit Company:JHICC)、本年5月15日の華為技術(Huawei)の2つである。

2019/5/16 米国、Huawei を対象に2施策

実は、2015年2月18日に中国のスーパーコンピューター関連4社が、米国製の部品を使ったスパコンで核爆発演習、兵棋演習をサポートしているとして指定されている。

National Supercomputing Center Changsha (NSCC-CS)、National Supercomputing Center Guangzhou (NSCC-GZ)、
National Supercomputing Center Tianjin (NSCC-TJ)、
国防科技大学(National University of Defense Technology:NUDT)

このうちの 国防科技大学(NUDT) は、Entity List に載り、禁輸対象になっているが、湖南国防科技大学の名を使って部品を輸入しているとされ、今回湖南国防科技大学が追加指定された。

今回、中国政府系のスパコン大手の曙光信息産業のほか、米半導体大手Advanced Micro Devices (AMD)と合弁を組む天津海光先進技術投資有限公司(THATIC)など計5社と関連会社が指定された。

商務省は、スパコンが「核爆発のシミュレーション」などの軍事目的に利用されていると指摘。無錫江南については、中国人民解放軍の傘下にある研究施設が所有者で「中国軍の近代化を使命としている」とした。

AMDの合弁会社 Hygon と HMC もリストに含まれている。

米国は核開発への影響を懸念して2015年にXeonプロセッサの中国での販売を禁止し、さらにCPUの設計開発製造に関する技術の中国への移転にも制限をかけている。
そのため、単純に中国内でx86互換CPUを製造するのは困難。

AMDとTHATICは合弁で海光微電子技術有限公司(HMC)と成都海光集成電路設計有限公司(Hygon)を設立。まずHMC(AMDが51%出資する子会社)にx86に関連する知的財産の利用権を与え、さらにHMCがこの知的財産権の利用ライセンスをHygonに与えてHygonがチップを設計。続いてこの設計をHygonがHMCに売却し、HMCがチップを生産。これをHygonが販売するという形でこの問題を解決したという。
HMCはAMDが51%出資しておりAMDの傘下企業と見なされるため、こういったスキームが可能になった。

しかし、今回はこれらJV2社も指定された。AMDは今後両社に技術を供与できない。

今回のリスト

天津海光先進技術投資有限公司(THATIC) Chengdu Haiguang Integrated Circuit 成都海光集成電路設計有限公司(Hygon)
Chengdu Haiguang Jincheng Dianlu Sheji
Chengdu Haiguang Microelectronics Technology 海光微電子技術有限公司(HMC)
Chengdu Haiguang Wei Dianzi Jishu
Higon Higon Information Technology
Haiguang Xinxi Jishu Youxian Gongsi
THATIC
Tianjing Haiguang Advanced Technology Investment
Tianjing Haiguang Xianjin Jishu Touzi Youxian Gongsi
Sugon(曙光信息産業)
 中国政府系のスパコン開発大手
 中国科学院が出資
Dawning
Dawning Information Industry
Sugon Information Industry
Shuguang
Shuguang Information Industry
Zhongke Dawn
Zhongke Shuguang
Dawning Company
Tianjin Shuguang Computer Industry.
無錫江南計算技術研究所
(
Wuxi Jiangnan Institute of Computing Technology)
Jiangnan Institute of Computing Technology
JICT
(既に指定)
 
国防科技大学(NUDT)
(追加)
 湖南国防科技大学


無錫江南計算技術研究所のスーパーコンピューターの「神威太湖之光」は、6月17日発表のスパコン計算速度の世界ランキングで3位に入った。
首位は米のOak Ridge National Laboratoryの「Summit」、2位は同じく米のLawrence Livermore National Laboratoryの「Sierra」で、日本からは産業技術総合研究所の「AI橋渡しクラウド(ABCI)」の8位が最高。東京大・筑波大の「オークフォレスト・パックス」は16位、理化学研究所「京」は20位だった。


国防科技大学(NUDT) は既に指定されているが、湖南国防科技大学の名を使って部品を輸入しているとして、湖南国防科技大学を追加指定した。


今後、日本企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出、再輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

「再輸出」の規制は米国の国内法を海外の国にも適用する「域外規制」であり、もし、日本企業がこれに違反し、米国品を再輸出した場合には、罰金、禁固、取引禁止顧客としての指定、米国政府調達からの除外等が課せられ、そのため実質的に米国との取引が以後出来なくなる事態が生じる。

「域外規制」では、中国などへの輸出の場合は米国品が25%以上含まれておれば、再輸出となり、規制対象となる。
(イラン、北朝鮮、シリア、スーダン向け輸出については米国品が10%以上)

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