英国の Reckitt Benckiser 、オピオイド中毒治療薬問題で米司法省に14億ドル支払い

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米司法省は7月11日、英国の日用品メーカー Reckitt Benckiser Groupが、元の子会社のオピオイド中毒治療薬Suboxone にからむ問題の解決のため、14億ドルを支払うことで合意したと発表した。

Suboxoneの売上高の没収で647百万ドル、連邦政府と州政府との民事の和解で700百万ドル、FTCとの和解で50百万ドルとなっている。

同社は、同社としては常に法律を守っており、違法なことをしたということを明確に否定するが、訴訟継続のコストや不確実性等を勘案し、和解することが会社と株主にとってベストであると判断したとしている。
犯罪の解決策ではなく、法律違反や、会社と従業員の違法行為を認めるものではないとしている。

Reckitt Benckiserは、英国バークシャーに本社を置く、トイレタリー分野を中心とした日用品・医薬品・食品メーカー。1999年12月に、イギリスを拠点とするReckitt & Colman plc と、オランダを拠点とするBenckiser NV.が合併して発足した。2010年6月にコンドームのメーカー SSL Internationalを買収した。現在、世界約60ヵ国に事業所を置き、200か国以上で製品を販売している。

売上高の60%がHealth分野、残り40%がHygiene Homeとなっている。

日本で販売されている製品は次の通り。

女性用脱毛剤 Veet、ニキビ治療薬 Clearasil、薬用石鹸 ミューズ、自動食洗器専用洗剤 フィニッシュ、芳香消臭剤 Air Wick、フットケア用品 Dr. Scholl's 、コンドーム Durex など。

付記 

Dr.Scholl ブランドは北米とラテンアメリカではBayerが所有(Merck & Co. から買収)。Bayerは2019年7月、米の投資会社Yellow Wood Partnersに売却した。
その他の地域はReckitt Benckiserが所有していたが、2014年7月にドイツのprivate equity会社のAureliusが買収した。但し、RBジャパンの販売製品には今もDr.Schollが含まれている。

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オピオイド (Opioid) は、ケシから採取されるアルカロイドや、そこから合成された化合物、また体内に存在する内因性の化合物を指し、鎮痛、陶酔作用がある。

骨折や慢性疼痛、歯科治療で最もよく処方される「ヒドロコドン/アセトアミノフェン配合剤」「オキシコドン/アセトアミノフェン配合剤」「サボキソン」などのオピオイド鎮痛薬は、疼痛管理には非常に効果的だが、常習性があり、また薬剤の高用量の摂取では昏睡、呼吸抑制を引き起こす。

米疾病管理予防センター(CDC)によると、過量服薬による死亡の多くにオピオイドが関与しており、処方箋薬のオピオイドによる死亡は1999年から4倍に増加している。

過去20年で20万人の米国人が死んだオピオイド危機について、トランプ大統領は2017年に public health emergency と呼んだ。

保健福祉省は、2017年4月にオピオイドの包括的対策である「5つの重点戦略」を定め、これに基づき諸政策を進めている。
同戦略は、1)よりよい予防、治療および回復サービスの推進、2)オピオイド乱用に関するデータの作成、分析、3)より的確、無駄のない疼痛管理、4)摂取過剰に拮抗する薬剤開発の推進、5)疼痛とオピオイド依存症の研究促進である。

問題となった治療薬Suboxoneは オピオイドによる陶酔感を減少させ、オピオイドの継続使用を魅力的でないものにさせるもので、4) に関するものである。Suboxone とその原体の buprenorphine は強力な、常習性のあるオピオイドである。

今回の事件は、Reckitt Benckiser Groupの子会社が、米国が全力で取り組んでいるオピオイド危機を悪用して、利益を得たとされる。 販売手法が問題とされたもので、製品そのものが問題ではない。

FDAは2018年6月にSuboxone舌下フィルム剤のジェネリック品を承認した。米Mylan Technologies Inc. とインドのDr.Reddy's Laboratories SAの2社が承認取得した。

「FDAは、オピオイド使用障害治療法改善への進歩にまた新たな歩みを刻み、薬剤を必要とする患者にアクセスしやすいものにした」としている。

司法省では、同省はオピオイド危機への対応で全力を尽くしており、今回の決定は関係各省庁の継続した協力の果実であるとしている。


Reckitt Benckiser Groupの処方箋薬の100%子会社
Reckitt Benckiser Pharmaceuticals Inc.(その後 Indivior Inc.は米国でオピオイド中毒の治療薬Suboxone を販売していた。中毒患者が治療を受ける際に、離脱症状を避けるために投与する承認を受けている。オピオイドによる陶酔感を減少させ、オピオイドの継続使用を魅力的でないものにさせる効果がある。

2014年4月にバージニア州の陪審員は、Indivior が違法にSuboxoneの処方を増やすべく全国的な計画を実行したとして起訴した。

Reckitt Benckiser Groupは、この起訴後の2014年12月に Indivior Inc.をスピンオフした。現在は無関係となっている。

この司法裁判は2020年5月に開始される。

訴状によると、同社は 舌下フィルム剤のSuboxone (Suboxone Film) を全国の医師、薬剤師、Medicaid 担当官に、実際には実証されていないのに、他の薬剤と比べて乱用性が少なく、より安全であると称して販売促進を行った。

また、患者に対してインターネットや電話で "Here to Help" と宣伝し、Indivior を売りつけた。法で認められている以上の多くの患者に、高濃度で、認められていないやり方でSuboxoneを処方することが分かっている医師を紹介していた。

また、小児科分野で懸念があるとして、Suboxoneの錠剤をやめると発表した。実際はFDAが錠剤のジェネリック品を承認するのを遅らせるのが目的であった。

この作戦は大成功で、数千人の中毒患者がSuboxone Filmを使用し、その結果、Medicaid programsのコストが増大した。

Reckitt Benckiser Groupは、当時の親会社として、この司法裁判に被告とされるのを避けるため、Indivior 販売収入の647百万ドルの没収に応じた。更に米国で3年間、製造・販売を行わないことを約束するとともに、捜査に全面的に協力することで、不起訴合意(Non Prosecution Agreement)を結んだ。

このSuboxone のマーケティングの結果、政府のヘルスケアに偽りの請求が殺到したことについての民事訴訟の解決のためReckitt Benckiser Groupは700百万ドル(連邦政府に500百万ドル、和解に参加する各州に200百万ドル)を支払う。

別途、Suboxoneのジェネリック品の販売を阻害したことで、Federal Trade Commission Actに反し、競争面で不公正なやり方で事業を行った問題の解決のため、50百万ドルを支払う。同グループは現在、医薬品を製造販売していないが、米国で販売を開始する場合はFTCに連絡する。

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起訴されているIndivior Inc.は、今回のReckitt Benckiser Groupの和解については情報はないとしている。

同社はこれまで、徹底的に戦うとしている。 万一に備え、438百万ドルを引当て手数料いるが、弁護士からはこれで十分であるとの報告を受けているとしている。

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