EUと南米南部共同市場(Mercosur)、FTAで基本合意 

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EUと南米南部共同市場(Mercosur:アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ4か国) は6月28日、自由貿易協定(FTA)について基本合意に達した。足掛け約20年の交渉がようやく実を結んだ。

なお、Mercosur加盟4か国は欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国(アイスランド、スイス、ノルウェー、リヒテンシュタイン)との間でもFTA交渉を行っており、ほぼ合意に達しているとされる。

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Mercosur(Mercado Común del Sur)は英語では Common Market of the South で、1995年1月1日にアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイの南米南部諸国の関税同盟として発足した。域内の関税撤廃等を目的とする。

2012年7月31日にベネズエラ 正式加盟したが、創設4ヵ国の外相は2016年12月2日、ベネズエラに対して加盟国資格を一時停止すると通知した。2012年の正式加盟から4年以内にメルコスール規則を国内で制度化するという約束を履行できていないというのが理由 である。(ベネズエラのマドゥロ大統領は、思想の異なる国を排除しようとするクーデター行為だと非難した。)

2012年12月ボリビア加盟議定書に署名し たが、各国議会の批准待ちで、正式にはまだメンバーではない。

準加盟国は、チリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、ペルー、スリナムの6か国。

Mercosur (アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)とEUは2000年にFTA交渉を開始したが、EUが牛肉の輸入急増 を懸念、Mercosurが自動車市場など一部工業製品の市場開放に消極的なことから交渉は難航していた。

2003年にブラジルとアルゼンチンに左派政権が成立したことも影響し、交渉を中断し、その後、再開と中断を繰り返した。

2015年にアルゼンチン、2016年にブラジルで政権交代があり、交渉を再開、今回政治合意に達した。EUと米国との間の貿易交渉が凍結状態になったことを受け、EUが交渉を加速化させた。

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Mercosurの人口は260百万人で、EUとMercosurを合わせた人口は780百万人に達する。

現在の双方の貿易額はモノが880億ユーロ、サービスが340億ユーロとなっている。EUのモノの輸出は450億ユーロ、輸入が430億ユーロでほぼ均衡している。サービスでは230億ユーロの輸出、110億ユーロの輸入で約2倍である。

協定で、最終的にEUのMercosur向けのモノの輸出の91%がなくなる。EU企業にとり、最終的に年間40億ユーロの関税がなくなる。

産業品の場合、自動車 (関税 35%)、自動車部品 (14-18%)、機械 (14-20%)、化学品 (up to 18%)、医薬品 (up to 14%)、衣料、履物 (35%)、織物 (26%) など。

農産物では、チョコレート・菓子 (20%)、ワイン (27%)、酒類 (20 to 35%)、ソフトドリンク (20 to 35%)

チーズなどの酪農品についても、輸入割り当てはあるが、現在28%の関税が無税になる。

逆に、最終的にEU向けのMercosurのモノの輸出の92%の関税がなくなる。

食品衛生や動植物の衛生植物検疫措置 (SPS)はEUの最高水準が適用される。食品衛生についてはEU産も輸入品も変わらない。

欧州委員会発表 http://europa.eu/rapid/press-release_IP-19-3396_en.htm

EUは自動車など工業品の市場アクセスに期待している。MercosurとのFTAが発効すれば、EUが受けられる関税削減の恩恵は日本との貿易協定の4倍 にもなるとされ、EUがこれまでに締結したどの貿易協定よりも大きくなる可能性がある。

参考 EUの対カナダ、対日本、対Mercosur のFTAの対比:EUにとって関税削減の恩恵は大きい。(Wall Street Journal)


Mercosur側は牛肉や砂糖などの農産品の輸出を拡大させたい考え。ブラジルはオレンジジュース、インスタントコーヒー、果物などの一部農産品の輸入関税が撤廃され、肉類、砂糖、エタノールなどの市場アクセスが改善されるとし、向こう15年間にわたりブラジル経済の押し上げ要因となるとの見方を表明 している。

なお、双方とも関税がなくなるまでには時間がかかる。

EUとMercosurのFTAは暫定合意に至った が、FTAの発効にはEU加盟国のほか欧州議会の支持を得る必要があり、簡単ではない。

EU内ではフランスなどが牛肉輸入の急増による影響を懸念しているほか 、欧州議会選挙で勢力を強めた環境団体がMercosurとのFTA締結で森林破壊が一段と進む恐れがあると主張し反対している。

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