米司法省、反トラスト法でのGAFAの調査開始、FTCはFacebookに制裁金

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米司法省は7月23日、「市場を主導するオンライン・プラットフォーム」 に対して、反トラスト法違反の可能性を視野に調査を始めると発表した。

名指しはしていないが、検索(search)やソーシャルメディア(social media)、ネット通販(retail services online)を挙げ、「消費者・企業・起業家が、検索、ソーシャルメディア、オンラインでの小売サービスについて表明している広範な懸念を検討する」としている。

Googleの検索サービス、Amazonのインターネット通販、Facebookの会員制交流サイト、Appleのアプリ配信サービスが調査対象とみられる。

これらの各社が、市場支配力をどう獲得したか、競争を減らしたり、イノベーションを抑えたり、消費者の不利益になったりするなどの行為がないかを調査する。

M&Aが焦点の一つとされる。各社はシリコンバレーのベンチャー企業を次々と傘下に収めているが、その一部は「競争を脅かすライバル排除のため」とされる。データ寡占も問題となる。

反トラスト法部門トップを務めるMakan Delrahim 司法次官補は声明で「意味のある市場競争の規律がなければ、デジタル・プラットフォームは消費者の要求に応えない形で振る舞う可能性がある。調査ではこれらの重要な問題を検討する」と述べた。

米メディアによると、独禁法を所管する司法省と連邦取引委員会(FTC)は、司法省がAppleとGoogle、FTCはFacebookとAmazonの調査を担当することで合意してい た。今回の司法省の調査は、デジタル市場の寡占状況に懸念を示していたバー司法長官の意向とみられ、FTCとの合意に縛られずに実施されるという。

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別途、Facebokで最大8700万人分の個人情報が不正流用された事件の調査を進めていた米連邦取引委員会(FTC)は7月12日までに、同社に約50億ドルの制裁金の支払いなどを命じる和解案を決議した。

FTCは、英国のコンサルティング会社Cambridge Analytica がFacebookのユーザー数千万人の個人情報を不正に入手していた問題が2018年3月に発覚したことを受け、Facebookが個人情報を適切に管理していたかどうかについて調査を開始した。

この事件の概要:

2014年ごろに、ケンブリッジ大学に在籍するロシア系アメリカ人学者Aleksandr Kogan が、心理クイズアプリを作成した。

約30万ダウンロードされたそのアプリに仕組まれた Facebook APIを経由し、ダウンロード したユーザーとその友人ら約5000万人分のユーザー情報を Kogan 氏が取得した。
(ダウンロードした約30万ユーザー以外の5000万人ものユーザー情報を取得できたのは、当時のFacebook APIでは、ダウンロードしたユーザーのみならずそのフレンドリストに掲載された友人たちのデータにもアクセスが許されたから)

Kogan氏はそのデータを英国のCambridge Analytica Ltd (データマイニングとデータ分析を手法とする選挙コンサルティング会社)に売却、Cambridge Analytica はそれを利用し、米国大統領選挙でSteve Bannon 率いるトランプ陣営をはじめ複数の選挙活動をサポートした 。

Facebookは、Cambridge Analyticaによる利用者数千万人分ものデータ収集を数年前から認識していたにもかかわらず、情報を消去したというCambridge Analyticaの言い分をうのみにしていた。

Facebookは7月24日、制裁金50億ドルを支払うことに合意、調査が決着した。

和解案では、ユーザー情報の保護に関する最終決定はこれまでMark Zuckerberg CEOに一任されていたが、今後はこの体制を改め、プライバシー保護を監督する独立した取締役会委員会を設置する。

さらに、第三者が開発するアプリを今後も厳しく管理するほか、暗号化されていないパスワードを定期的に一掃することやセキュリティー目的で入手したユーザーの電話番号を広告のために使用しないことを義務づけた。新サービスに対してプライバシーの検証を行い、プライバシーに関する順守の証明や評価を新たに提出することも求めている。

Facebookは発表文で、「今回の和解で当社の業務のアプローチ方法に抜本的な転換が必要になり、当社のあらゆる段階でプロダクトを構築する人々に対する責任が増す」とし、過去に経験したのとは異なる規模でプライバシー保護に急旋回することになると表明した。

Facebookの事業モデルの中核である構造的なデータ収集慣行は今回の和解案でほぼ影響を受けない。

制裁金としては過去最高額ではあるものの、Facebookの事業運営にはあまり打撃を与えず、制裁金のうち30億ドルについては引当しているため損益面での打撃も少ない。

和解案はFTC委員のうち共和党系の3人が賛成、民主党系の2人が反対した。

米証券取引委員会がFacebookについて進めてきた調査も7月24日に決着した。Cambridge Analytica 絡みのデータ不正について、Facebookによる投資家への開示が不十分だったとして、SECは同社に制裁金1億ドルを科した。

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