Evonik-DSM JV、藻類からのオメガ3脂肪酸生産開始

| コメント(0)


EvonikとDSMは7月11日、米ネブラスカ州のJVでオメガ3脂肪酸の生産を開始した。

EvonikとDSMは2018年7月、折半出資による新会社Veramaris V.O.F.を設立した。

Veramaris は、天然の藻を由来とする飼料用のオメガ3脂肪酸エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)を製造する。

オランダのDSM Biotechnology 内に 本社を構え、アメリカ・ネブラスカ州Blair のEvonikの工場内に2億ドルを投じ、新工場を建設した。

EvonikのBlair工場では、長年にわたり、アミノ酸L-リジンの硫酸塩を50%以上含む動物用の飼料添加物である「Biolys」を発酵法で生産している。

JVは、ネブラスカ州Blair の設備で天然の微細藻類シゾキトリウム属Schizochytrium sp.を使い、大規模な発酵を行い、必須脂肪酸である2種類のオメガ3脂肪酸(EPAとDHA)を豊富に含んだ藻類油を生産することにより、天然の魚を使った餌に依存せずに、動物性タンパク質への高まる需要に責任をもって応えられるようになる。


① Sugarはコーンから得られる。藻のSchizochytrium sp.は工場で培養される。
② 発酵プロセスで、藻の細胞は幾何学的に増殖し、グルコースを
オメガ3脂肪酸に変える。
⑤ 藻類油中のオメガ3脂肪酸の濃度は50%を超える。


オメガ3脂肪酸は、ヒトと動物の体内のさまざまな機能にとって重要な多価不飽和脂肪酸で、オメガ3脂肪酸のEPAやDHAは、脂肪が多い魚(サケ、マグロ、マスなど)や甲殻類(カニ、ムール貝、カキなど)のような海産物に含まれている。

家畜用飼料には、魚油や魚粉といった限りある海洋資源を用いたオメガ3脂肪酸を添加するケースが大半を占めており、現在、魚油や魚粉の生産用に、1600万トンもの天然の魚が捕獲されている。


様々な国際的な保健機構が、海産物由来のオメガ-3脂肪酸(DHA+EPA)を毎日250~500mg(成人)摂取するように勧めており、鮭のような養殖魚は、オメガ-3脂肪酸の重要な栄養源として、ますます重要になっている。しかし、養殖鮭のオメガ-3平均含有量は、2005年から 2016年までの間に半減している。これは、鮭を養殖するために与える餌の種類が変わってきているからである。

天然の鮭は自然の食物連鎖でオメガ-3脂肪酸を得ている。海中の藻類がオメガ-3脂肪酸を含むが、これを動物性プランクトンが食べ、それを小魚が食べ、それを鮭などが食べる。

以前は、カタクチイワシやニシンのような鮮魚が鮭の養殖用飼料の60~80%を占めていたが、現在では20%まで減少している。ニシンのような天然魚が減少してきたことと、安い養殖魚の需要が高まったため、配合飼料が魚粉と魚油のような高いものからトウモロコシ、大豆、キャノーラ油など安価なものに変わっているためである。

EvonikとDSM が共同で開発した食物連鎖の最初の藻を直接使う製法により、天然の魚を使うことなしに、飼料用のEPA/DHAを生産できるようになった。

Veramaris のオメガ-3脂肪酸 1トンで天然魚60トンを救う。

今回の生産開始で、世界の鮭養殖事業のEPA/DHA需要の約15%を供給するとしている。これは、天然の魚120万トンから得られる量に相当する。

天然の藻を使うことにより、海洋生物や海洋における生物多様性の保護にも役立つ。

コメントする

月別 アーカイブ