米最高裁、壁建設予算使用の差し止め命令を破棄

| コメント(0)

米連邦最高裁は7月26日、トランプ政権が南西部国境の壁建設費に国防総省の予算25億ドルを使用することの違憲性を争う裁判で、訴訟終結まで予算使用の一時差し止めを認めた下級審の決定を覆し、 訴訟継続中の予算使用を認める判断を下した。

9人の判事は5対4に分かれた。保守派判事は全員が政権を支持、訴訟継続中に建設を続けることを認めた。リベラル派判事のうち3人は現時点で国防費の使用を認めないとの意見で、もう1人は業者との契約締結のための使用は認めるが、実際の建設への使用は禁じるとの見解だった。

トランプ大統領はツイッターで喜びを示した。

Wow! Big VICTORY on the Wall.
The United States Supreme Court overturns lower court injunction, allows Southern Border Wall to proceed.

Big WIN for Border Security and the Rule of Law!

ーーー

Such a big victory of our Country! "Supreme Court approves Trump Administration plan to use Military Funds for the Wall."
We will be fully reimbursed for this expenditure, over time, by other countries.

Nancy Pelosi 下院議長のツイート:

This evening's Supreme Court ruling allowing Donald Trump to steal military funds to spend on a wasteful, ineffective border wall rejected by Congress is deeply flawed.
Our Founders designed a democracy governed by the people -- not a monarchy."

しかし、今回の決定は今後の壁建設が問題ないということを意味しない。

最高裁は通常、決定の理由を説明しないが、今回は以下の簡単な説明をした。

政府はこの段階で、原告にはペンタゴンの資金を流用する決定について訴訟を提起する権利が無いことを十分に示した。

これから見ると、多数派5人は原告( Sierra Club と南部国境コミュニティ連合)には訴訟の権利がないという政府の主張に賛成したことを意味する。
同様の訴えをしている20の州や米国下院については、もっと強い立場であり、どうなるか分からない。

ーーー

米カリフォルニア州の連邦地裁のHaywood Gilliam Jr. 判事は5月24日、大統領権限で国防予算をメキシコ国境沿いの壁建設に振り向ける計画について、一部を暫定的に差し止める判断を下した。

政権が壁建設に使用しようとしている67億ドルのうちの、アリゾナ州とテキサス州の2つの地域で51マイルの壁を建設するための10億ドルについてである。

壁建設に反対する Sierra Club と南部国境コミュニティ連合を代表してAmerican Civil Liberties Union が行った訴訟に対するもの。5月25日にも壁の建設作業が開始される予定であった。

Gilliam Jr. 判事は6月28日、カリフォルニア州とアリゾナ州の間の79マイルの壁についても15億ドルの予算転用を禁止した。

連邦第9区巡回控訴裁判所(サンフランシスコ)は7月3日、合計25億ドルの計画を差し止める地裁の仮命令を支持した。地裁に続いて高裁も、議会の承認を得ずに予算の使い道を変えるのは違法だと判断した。

3人の判事の意見が分かれた。うち 2人が、政権は議会の承認なしに予算を流用する権限を持たないとする地裁の判断を支持した。

2019/7/6 メキシコの壁建設、控訴裁も国防費流用を認めず 

ーーー

現在の最高裁判事は次の通り。
性別 年齢 人種背景 指名した大統領 就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 70歳 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
Ruth Bader Ginsburg 女性 85歳 ユダヤ系 Bill Clinton 1993年8月10日 リベラル
Stephen Breyer 男性 80歳 ユダヤ系 1994年8月3日 リベラル
John Roberts  長官 男性 63歳 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 68歳 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 64歳 ラテン系 Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 58歳 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 51歳 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 53歳 白人系 2018年10月6日 保守


米上院本会議は4月7日、トランプ大統領が保守派のNeil Gorsuch 連邦控訴裁
判事を最高裁判事に指名した人事を 54 対 45 の賛成多数で承認した。承認は、「核オプション」(nuclear option)と呼ばれる禁じ手を使って行われた。

2017/4/8 米上院、異例の手続きで最高裁判事を承認 

トランプ大統領は2018年7月9日、7月31日付で引退するAnthony Kennedy判事(81歳)の後任として、首都ワシントン連邦巡回区控訴裁判所のBrett Kavanaugh判事(53) を指名した。

Kennedy判事は保守系中道で、「スイングボート」として、リベラル派4人と保守派4人の間で判決を左右してきたが、今回の筋金入りの保守派のKavanaugh 判事の指名で保守派5人、リベラル派4人となり、保守派が優勢となった。

保守派 Kennedy
保守系中道
(swing)
リベラル派
以前 4 ← 1 → 4
2016 Scalia 判事死去 3 ← 1 → 4
2017 Gorsuch 就任 4 ← 1 → 4
2018 Kennedy 引退、Kavanaugh指名 5 4

2018/7/10 トランプ大統領、最高裁判事を指名

米最高裁は2018年12月21日、国境を不法に越えた中南米などの人々による難民申請を制限する大統領令について、その効力を停止した司法判断に対するトランプ大統領の差し止め請求を却下した。

保守派のロバーツ長官が差し止め支持に回り、賛成5人、反対4人で差し止め支持となった。

トランプ大統領は10月のKavanaugh判事の就任で保守派を5人とし、最高裁で思い通りの判決を獲得できるとみていたが、Roberts 長官が差し止め支持に回り、思惑が外れた。

 2018/12/24 トランプ政権の難民申請禁止令、最高裁も差し止め支持 

今回はトランプ大統領による指名が大統領を助けた。

コメントする

月別 アーカイブ