欧州委員会、Qualcommに制裁金

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欧州委員会は7月18日、米半導体大手 Qualcommが 、競合企業を市場から閉め出すために、スマートフォンなどに使う3Gのチップセットを製造コストを下回る価格で販売し、EU競争法(独占禁止法)に違反したとして242百万ユーロ(約290億円)の制裁金を科したと発表した。

問題となったのは、第3世代 (3G) 移動通信テクノロジーの1つ Universal Mobile Telecommunications System ("UMTS")。

欧州委員会によると、Qualcommは2009年央から2011年央にかけて、略奪的価格設定("predatory pricing")を行った。当時の主たるライバルの英国の Icera を市場から締め出すため、UMTS chipset をコストを下回る価格で戦略的に重要な2社、中国のHuawei と ZTE に販売した。

丁度、Icera が高品質のUMTS chipsetの供給を始め、Qualcommの製品の強敵となりつつある時であった。

欧州委員会は2015年7月に正式調査を開始した。2015年12月にQualcommに問題ありとの通知(statement of objections)を送った。2017年3月に情報を要求した。
2017年6月にQualcommは欧州第一審裁判所に欧州委員会の決定の無効化の申請を行った。
2017年7月に裁判所は申請を却下、本年4月に欧州委の決定を支持した。Qualcommは裁判所の決定を不服とし、上告した。

欧州委員会は、Qualcomm製品の価格とコストの対比及び、Qualcommの行動がIceraが市場を拡大しようとするのを妨げる目的であったことを示す幅広い証拠を基に、Qualcommが略奪的価格設定を行っていたと結論づけた。

価格とコストの対比で、値引きがQualcommの全体の損益への影響を抑えつつ、Iceraの事業へのマイナスの影響を最大限にするものであったことが分かった。またQualcommの行動が正当化できるだけの効能を生んだという証拠もない。

これを基に、欧州委員会はQualcommの行動が競争に大きなマイナスの影響を与えたと結論付けた。

制裁金の242, 042 千ユーロは2018年のQualcommの売上高の1.27%に相当する。EUのガイドラインでは、制裁金はQualcommの欧州経済領域(EEA:EU各国とアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー)でのUMTS chipsetの直接及び間接売上高に対して課せられる。

欧州委員会はまた、Qualcommに対して今後、同様の行動を行わないよう命じた。

Margrethe Vestager 欧州委員(競争政策担当)「Qualcomm の戦略的行動は市場における競争とイノベーションを阻害し、消費者の選択を制限した」と述べた。


Qualcommの
略奪的価格設定で被害を受けた英国のIcera は2011年5月に米国のグラフィックスチップやボードを開発する米国のNvidiaに367百万ドルで買収された。

Nvidiaはタブレットでようやく携帯端末市場に参入したが、モデム技術を持っていなかった。
このため、携帯機器に不可欠な第3世代移動通信テクノロジーを持つIceraに目を付けた。

NVIDIAではその後、製品を発売したが採用する端末メーカーはほとんどなく、NVIDIAは2015年5月、Iceraモデム部門を2016年第2四半期に終了すると発表した。


本件は、米国のQualcommが中国の
Huawei と ZTE に安売りをしたもので、それ自体では欧州の消費者に害を与えるものではない。しかし、重要な需要家への販売で略奪的価格設定を行って、強敵となりつつあった英国の同業者の事業を妨げ、結果として欧州市場における独占的地位を獲得したことを問題にした。

発表文では、「KualcommはIceraが市場で競合するのを阻害した」とし、「2011年5月にIceraは米国のNvidiaに買収され、Nvidiaは2015年にこの事業を止める決定をした」としている。

結果的に欧州の消費者に害を与えれば違反となる。日本企業が「欧州でほとんど売っていないのを理由に多額の制裁金を課せられる」というケースもあった。

欧州委員会は2007年1月、電力用ガス絶縁開閉装置で国際カルテルを結んでいたとして日欧10社に7億5千万ユーロの制裁金支払いを命じた。

各社は連絡をとりあって割当数量比率で受注できるよう調整し、最低価格を決めていた。また、日本企業は欧州で販売せず、欧州企業は日本で販売しないことも決めていた。

2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金

Qualcommは以下の発表を行った。

Qualcommは欧州第一審裁判所に上告する。

欧州委員会は何年にもわたり調査をしたが、需要家両社はQualcommを選んだのは価格のためではなく、競争相手の製品が技術的に劣っているからとしている。

今回の決定は法的にも、経済原則からも、市場の事実からも誤っており、上告で逆転を期待している。

委員会の決定は、非常に短期間の、非常に少量のチップのコスト以下での販売を問題にする珍しいもので、前例もない。Iceraが被害を申告したが、Iceraは数億ドルでNvidiaに買収され、数年間は関係市場で競合を続けた。

Qualcommは欧州委員会の調査に協力してきた。欧州委員会は非競争的な行動を示す事実がないことが分かる筈だ。

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