文科省は8月下旬までに東大の研究実施を正式に認める見通しで、東大は認められ次第、研究に着手する。
人間と別の動物が混ざった生物が生まれるなどの懸念からこれまで国内では禁止されていたが、本年3月に文科省は、動物性集合胚の取扱いの見直しに係る「特定胚の取扱いに関する指針」及び「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律施行規則」の全部を改正、この研究も可能となった。
膵臓を作る能力のないマウスやラットの受精卵にヒトのiPS細胞を注入し、人と動物の細胞が混ざった「動物性集合胚」をつくる。
これを代理母であるネズミの子宮に入れる。妊娠や胎児の発育過程に沿って育てることで、人の細胞でできた膵臓などをもつ動物の胎児が育つ。
この胎児の臓器を移植に使えば、他人の臓器を使う脳死移植のような拒絶反応が起こりにくく治療が可能になる。
今回は、出産後、最長で2年間観察する。母体内である程度育った段階で、赤ちゃんの脳を調べ、ヒトの細胞の割合が30%を超えた場合は実験を中止する。肝臓や腎臓でも試みる。
将来、臓器のサイズが人間に近いブタやヒツジの体内で人間の臓器を作ることができれば、慢性的に不足する移植用臓器として使える可能性がある。
現在、日本で臓器提供を待っている患者は約14,000人いるが、そのうち移植を受けることができるのは年間約300人ほどに過ぎない。また、日本だけでなく世界的にも移植用臓器の不足が深刻な問題となっている。
中内特任教授はスタンフォード大教授を兼任し、米国で人間の膵臓を持つ羊を作製する研究を進めてきた実績を持つ。
2019年3月の「動物性集合胚の取扱い」改正の主な内容は次の通り。
動物性集合胚の作成目的:「移植用ヒト臓器の作成に関する基礎的研究に限る」を削除動物性集合胚の取扱期間 :「作成から原始線条が現れるまでの期間(最長14日)」以後の取扱いを可能とする。
動物性集合胚の胎内移植の取扱い:「人又は動物の胎内への移植は禁止 」→ 動物の胎内への移植を可能とする。
ーーー
慈恵大学・東京慈恵会医科大学、明治大学、バイオス、ポル・メド・テック、大日本住友製薬は4月5日、iPS細胞を用いた「胎生臓器ニッチ法」による腎臓再生医療の2020年代での実現を目標として、共同研究・開発などの取り組みを開始すると発表した。
「胎生臓器ニッチ法」とは、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科学横尾隆教授らの研究成果で、動物の発生段階である胎仔の中で臓器が発生する場所に、別の動物から目的とする臓器の前駆細胞を注入し、臓器に分化誘導する方法。
2019/4/9 腎臓の再生医療実現に向けた取り組み開始
コメントする