秋田の石炭火力 着工見送り

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両社は県有地の秋田湾産業新拠点に出力65万キロワットの石炭火力発電所2基を建設する計画で、環境影響評価(アセスメント)の手続きは既に終えている。環境アセスの評価書では、着工時期を当初計画通り「2019年8月」と記載。2024年の運転開始を目指していた。

事業の実施に際しては、利用が可能な最良の技術(Best Available Technology:BAT)である超々臨界圧(USC)発電設備の導入により、電源の高効率化や低炭素化に貢献し、適切に環境設備を配置することで、硫黄酸化物や窒素酸化物、ばい塵の排出も抑制するとしていた。

【発電設備の完成予想図】


計画のアセスに対しては環境相が2018年9月、「CO2排出削減の具体的道筋が示されないまま容認されるべきではない」とする意見を経済産業相に提出。経産相はこれを踏まえ、一層のCO2排出削減に努めるよう勧告していた。

2018年9月28日 環境省

事業者である丸紅、関電エネルギーソリューションに対し、世界の潮流に逆行するような地球温暖化対策が不十分な石炭火力発電は、是認できなくなるおそれもあること等を踏まえ、

(1)石炭火力発電に係る環境保全面からの事業リスクが極めて高いことを改めて強く自覚し、2030年度及びそれ以降に向けた本事業に係る二酸化炭素排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討することを含め、あらゆる選択肢を勘案して検討すること、

(2)とりわけ、 本事業者については、現在高効率のガス火力等を有している本事業者のグループ会社等との共同実施により、2030年度までに同目標の達成を目指すとしているものの、引き続きその達成に向けた努力が必要不可欠であること、

(3)そのほか大気環境、水環境及び廃棄物に係る適切な環境保全措置の検討等を求めている。

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2018年10月30日 済産業大臣勧告

  • 石炭火力発電を巡る環境保全に係る国内外の状況を十分認識し、本事業を検討すること。
  • このような国内外の状況を踏まえた上でなお本事業を実施する場合には、ベンチマーク指標の目標を確実に達成するとともに、共同実施者を含む事業者全体として、2030年以降に向けて、更なる二酸化炭素排出削減を実現する見通しをもって、計画的に実施すること。
  • 本事業の工事の実施及び施設の供用に当たっては、二酸化炭素の排出削減対策をはじめ、排ガス処理設備の適切な運転管理及び騒音・振動の発生源対策等による大気環境の保全対策、排水の適正な処理及び管理による水環境の保全対策等の環境保全措置を適切に講ずること。
  • その他、大気環境、水環境、廃棄物等について勧告。

両社は環境保全対策を実施して計画を進める考えを示していた。

なお、2019/2/21付の日本経済新聞は、「関電・丸紅、秋田石炭火力見直し バイオマス転換も」というタイトルで以下のように報じたが、その後、両社の発表はない。

秋田市での大型石炭火力発電所の事業計画を見直す。石炭だけを燃料にする想定だったが、木質チップを混ぜるバイオマス混焼や液化天然ガス(LNG)への切り替えを軸に検討する。石炭火力は二酸化炭素(CO2)排出が多く、環境対策費がかさむ傾向にあり、大手各社の計画変更や撤回が続いている。


参考

中国電力とJFEスチールが共同出資した「千葉パワー」は2018年12月27日、千葉市のJFEスチール東日本製鉄所構内で計画していた石炭火力発電所「蘇我火力発電所」の建設を中止すると発表した。

出光興産、九州電力、ならびに東京ガスは1月31日、千葉県袖ケ浦市にある出光興産所有地を活用した千葉袖ケ浦エナジーの石炭火力発電所の共同開発を断念すると発表した。

2018/12/30 千葉の石炭火力計画中止 & 付記


電源開発、大阪瓦斯および宇部興産が出資する山口宇部パワーは2019年4月24日、宇部市西沖の山で進めてきた西沖の山発電所新設計画に関し、今後、計画変更を検討し、環境影響評価手続を休止すると発表した。大阪ガスが、本計画からの撤退を決定した。

これらは、今回の秋田計画と同様、全て超々臨界圧石炭火力計画である。

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この事業を関電とともに推進している丸紅は2018年9月18日、脱石炭火力発電の方針を発表している。

サステナビリティへの取組み方針に関するお知らせ
(石炭火力発電事業及び再生可能エネルギー発電事業について)

丸紅は、気候変動を人類共通の重要な課題と認識している。地球環境と社会との共存共栄を脅かす問題であり、早急に取組むべき課題であると考えている。

サステナビリティ経営推進の一環として、丸紅の石炭火力発電事業及び再生可能エネルギー発電事業に関する取組み方針を定めた。

1. 脱石炭火力発電へのプロセス

石炭火力発電事業によるネット発電容量を、2018年度末見通しの約3GWから2030年までに半減させる。また、新技術の導入等による保有資産の効率化、環境負荷軽減を積極的に推進する。

2. 新規石炭火力発電事業への取組み

新規石炭火力発電事業には原則として取組みません。

但し、BAT(Best Available Technology, 現時点では超々臨界圧発電方式)を採用し、国家政策に合致した案件については取組みを検討する場合もある。

3. 再生可能エネルギー発電事業への積極的な取組み

再生可能エネルギー発電事業の拡大に向け、再生可能エネルギー電源の比率を、ネット発電容量ベースで現在の約10%から2023年までに約20%へ拡大することを目指す。

秋田計画は超々臨界圧発電ではあるが、環境省意見などからみて、国家政策に合致したものではない。

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