「イグ・ノーベル賞」の授賞式が9月12日、米ハーバード大で行われた。
5歳児の唾液の量が1日約500mlであることを明らかにした渡部茂・明海大教授らのチーム5人が化学賞を受賞した。
複雑な機器は使わず、子供が紙コップの中に吐いた唾液を量るという地道な取り組みが評価された。
渡部さんたちは5歳の子供30人に協力を求め、食べ物をかんでいる時と何もしていない時でそれぞれ5分間、紙コップに唾液を吐いてもらい、その量を調べた。
それぞれの唾液の量と、子供が1日に費やす食事の時間とそれ以外の時間などを基に、1日の唾液の量は約500 ml と割り出し、論文にまとめた。
渡部さんによると、論文を発表した1995年頃、虫歯予防に重要な役割を果たす唾液の研究は少なく、論文は今も世界中の研究者が引用しているという。
2019年の受賞は以下の通り。
医学賞
Collecting evidence that pizza might protect against illness and death, if the pizza is made and eaten in Italy ピザは病気あるいは死の予防となるが、ただしそのピザはイタリア製かつイタリアで食べた場合、という理論を裏付けるデータを導いた。 |
医学教育賞
Using a simple animal-training technique-- called "clicker training" --to train surgeons to perform orthopedic surgery 整形外科医の手術の訓練には簡単な動物訓練技術、クリッカートレーニングを使う。 |
生物学賞
Discovering that dead magnetized cockroaches behave differently than living magnetized cockroaches. 磁場に置いた死んだゴキブリは、磁場に置いた生きているゴキブリと違う動きをすることを発見 |
解剖学賞
Measuring scrotal temperature asymmetry in naked and clothed postmen in France 裸のときと服を着たときの、フランスの郵便配達人の陰嚢の温度の非対称性を測定 |
化学賞
Estimating the total saliva volume produced per day by a typical five-year-old child |
工学賞
Inventing a diaper-changing machine for use on human infants 幼児向けおむつ交換器の発明 |
経済学賞
Testing which country's paper money is best at transmitting dangerous bacteria どの国の紙幣が危険なバクテリアを移すのに最適かのテスト |
平和賞
Trying to measure the pleasurability of scratching an itch かゆみを掻くことで得られる快感を測定 |
心理学賞
Discovering that holding a pen in one's mouth makes one smile, which makes one happier -- and for then discovering that it does not 最初に、ペンを口の中で吸うと人は笑顔になり、その人は幸せになるということを発見したが、後になり、そうではなかったということを発見 |
物理学賞
Studying how, and why, wombats make cube-shaped poo ウォンバットはどのように四角い糞をするのか、そしてそれはなぜか
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過去のイグ・ノーベル賞については、下記を参照。
2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞 2007/10/8 2007年イグ・ノーベル賞 2008/10/4 2008年イグ・ノーベル賞 2009/10/3 2009年イグ・ノーベル賞 2010/10/7 2010年ノーベル化学賞とイグ・ノーベル賞 2011/10/1 2011年度イグノーベル賞 2012/9/25 2012年 Ig Nobel 賞に日本人の「スピーチジャマー」 2013/9/16 2013年 Ig Nobel 賞、日本の2チームが受賞 2014/9/20 2014年イグ・ノーベル賞 2015/9/22 2015年 イグノーベル賞 2016/9/24 2016年 イグノーベル賞 2017/9/15 2017年 イグノーベル賞 2018/9/18 2018年 イグノーベル賞
日本人の受賞は次のとおりで、2005年までに11件、2007年からは13年連続で14件(2013年は2件)で、合計25件の受賞となった。
なお、2008年の認知科学賞と、2010年の交通計画賞は、同一テーマの研究の延長で受賞している。
(敬称略)
名前 | 受賞 | |
1992 | 神田不二宏ほか (資生堂研究センター) |
薬学賞 足の匂いの原因となる混合物の解明 |
1994 | 気象庁 | 物理学賞 地震が尾を振るナマズによって引き起こされるかどうかを7年間研究した功績 |
1995 | 渡辺茂(慶應義塾大学) 坂本淳子 脇田真清(京都大学) |
心理学賞 ハトの絵画弁別(ハトを訓練してピカソとモネの絵を区別できるようにした)功績 |
1996 | 岡村長之助 (岡村化石研究所) |
生物学的多様性賞 岩手県の岩石から古生代石炭紀(約3億年前)の石灰岩中に超ミニ恐竜化石を 発見した功績 (小さな石を顕微鏡で見て超ミニ恐竜化石だと主張して発表) |
1997 | 舞田あき(バンダイ) 横井昭宏(ウィズ) |
経済学賞 バーチャルペット(たまごっち)の開発によりバーチャルペットへの労働時間を 費やさせた功績 |
1997 | 柳生隆視 他 (関西医科大学) |
生物学賞 様々な味のガムをかんでいる人の脳波を研究 |
1999 | 牧野武 (セーフティ探偵社) |
化学賞 妻や夫の下着に適用して精液の跡を発見できる浮気検出スプレーの開発. |
2002 | 佐藤慶太(タカラ社社長) 鈴木松美(日本音響研究所) 小暮規夫(獣医学博士) |
平和賞 コンピュータ・ベースでの犬と人間の言葉を自動翻訳するデバイス「バウリンガル」開発 |
2003 | 広瀬幸雄 教授 (金沢大学) |
化学賞 銅像に鳥が寄りつかないことをヒントに、カラスを撃退できる合金開発 |
2004 | 井上大佑 | 平和賞 カラオケを発明し、人々に互いに寛容になる新しい手段を提供 |
2005 | 中松義郎 (ドクター中松) |
栄養学賞 36年間にわたり自分が食べたすべての食事を撮影し、食べ物が頭の働きや体調に 与える影響を分析 |
2007 | 山本麻由 | 化学賞 牛糞からバニラの芳香成分 vanillin の抽出 |
2008 | 中垣俊之ほか | 認知科学賞 真正粘菌変形体という巨大なアメーバ様生物が迷路の最短経路を探し当てる |
2009 | 田口文章ほか | 生物学賞 パンダのフンから抽出したバクテリアを使って台所の生ゴミを分解し、9割減量 |
2010 | 中垣俊之ほか | 交通計画賞 粘菌が交通網を整備 |
2011 | 今井眞ほか | 化学賞 わさびの臭いが火災報知器の役割を成す理想的な空気中のわさび濃度 |
2012 | 栗原一貴、塚田浩二 | 音響賞 迷惑を顧みず話し続ける人の話を妨害する装置「スピーチジャマー」を開発 |
2013 | 新見正則ほか | 医学賞 心臓移植したマウスにオペラを聴かせると生存期間が延びた |
今井真介ほか | 化学賞 タマネギの催涙成分をつくる酵素 |
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2014 | 馬渕清資ほか | 物理学賞 「バナナの皮を踏むとなぜ滑りやすいのか」を実験で解明 |
2015 | 木俣肇 | 医学賞 情熱的なキスの生物医学的な利益あるいは影響を研究するための実験 |
2016 | 東山篤規、足立浩平 | 知覚賞 股のぞき効果 |
2017 | 吉澤和徳、上村佳孝 | 生物学賞 ブラジルの洞窟で見つかった新種の虫の雌が「ペニス」のような器官を持ち、 それを使って雄と交尾することを解明 |
2018 | 堀内朗 | 医学教育賞 座位で行う大腸内視鏡検査 |
2019 | 渡部茂 | 化学賞 5歳児の唾液の量 |
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