英議会下院は9月10日未明、ジョンソン首相が提出した解散総選挙の2回目の動議を退けた。

英議会では同一会期中での同じ内容の提案は議長が認めないが、今回は、1回目の総選挙の動議のあとに上院が離脱延期法を承認し、女王の裁可を経て成立したという状況の変化があったため、 認めた。

英国では議会任期固定法の規定で解散には下院650人の3分の2 (434)の賛成が必要だが、今回は賛成は293にとどまった。野党議員の大半が「離脱延期が確定したら総選挙に応じる」として棄権した。

前回の9月4日の解散動議は、賛成 298、反対 56、棄権285であった。

2019/8/2 9/3 9/4 現状

10/10 解散動議

賛成 反対 棄権 不投票
保守党 311 310 289 288 279 6 3
民主統一党 10 10 10 10 10
(与党) (321) (320) (299) (298) (289) (6) (3)
労働党 247 247 247 247

23

222 2
スコットランド国民党 35 35 35 35 35
自由民主党 13 14 14 17 1

14

1 1
保守党党籍停止 21 32 3

6

31
独立党 11 11 11
The Independent Group for Change 5 5 5 3
Change UK 5 5 5 5
シンフェイン党 7 7 7 7 7
ブライドカムリ 4 4 4 4 3 1
緑の党 1 1 1 1 1
議長 1 1 1 1 1
合計 650 650 650 650 293 46 303 8

議会は9月9日、合意なき離脱となった場合の詳細な対応策について政府に公表を義務付ける動議を 311対302 の賛成多数で可決した。
この動議はまた、長期の議会休会を決定するに至ったやりとりや文書の公表も求めている。

付記

英政府は9月11日、Brexitの影響について8月2日付でまとめた文書 Operation Yellowhammer を公表した。(yellowhammer は鳥の名前で、財務省には文書にランダムに鳥の名をつける慣行がある。)

合意なしで離脱すれば、英ドーバーでの物流の遅滞、抗議活動の広がり、旅行の混乱が生じ、さらには食料や医薬品、燃料が不足する恐れもあるとする。
北アイルランドに触れた箇所は黒塗りされている。

報道では、アイルランド国境にとって合意なき離脱に伴う取り決めのない状態は持続不可能とか、英領北アイルランドの農産食品に打撃が及び、ヤミ市場が栄え、犯罪組織や反体制派が新たな価格差に乗じようとする可能性が高いなどとしている。

なお、長期の議会休会を決定するに至ったやりとりや文書は公表されていない。

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同日、John Bercow下院議長が10月31日に辞任すると表明した。 政権への抗議を示すものと見られている。

ジョンソン英首相の弟で閣外相(ビジネス・エネルギー・産業戦略省と教育省の閣外担当相)のJoe Johnson下院議員は9月5日、閣僚を辞任するとともに、次の選挙には出馬しないと述べた。 「過去数週間、家族に忠誠を誓うのか、それとも国益を選ぶかで身が引き裂かれるほど悩んだ」と述べた。2016年の国民投票では兄とは異なり、EU残留に票を投じた。

Amber Rudd 雇用・年金相は9月7日、ジョンソン政権の閣僚を辞任し、保守党も離党すると表明した。反対派の議員やEUに攻撃的なジョンソン首相の姿勢に反発した。