米連邦最高裁は9月11日、中米移民の難民申請資格を大幅に制限するトランプ政権の規則について、訴訟継続中は全国での実施を認める判断を示した。
政権は「最初の機会に保護申請することを拒んだ亡命希望者」を排除するために同規則が必要だと主張しており、トランプ大統領はツイッターで「最高裁における大勝利だ」と述べた。
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南部国境で難民申請する人はメキシコの南から陸路で移動する中米グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルの人たちが大半だが、米国にたどり着く前に通過した国(メキシコかグアテマラ)で難民認定を求めた上で拒否された経緯がなければ、米国への難民申請ができなくなる。
「多数の根拠のない難民申請が、米国の入国管理制度に異常な負荷をかけている」とし、こうした申請が「亡命の人道的目的」を損ない、密入国を悪化させていると指摘した。
トランプ政権は新政策について協力をメキシコ、グアテマラ両国に求めたが、合意できないまま発表に踏み切った。
新規則は7月16日から実施する。第三国で難民申請を却下された人や、人身売買の犠牲者などは例外としている。
バー司法長官は声明で「この規則は経済移民や米国の難民システムを悪用しようとする者を減らす」と指摘し、合法的な規制だと主張した。
民主党のペロシ下院議長は 「大統領は米国への亡命という命綱を急いで破壊しようとし、人命に大打撃を与え、われわれの価値観を侮辱し、何十年にわたる先例と法律から逸脱している。この残酷な新規則は移民社会と有色人種コミュニティーに対する現政権の蔑視と無視を完全に露呈した」と指摘した。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は声明で、新規則に「深い懸念」を表明した。
米国自由人権協会(ACLU)などの団体は、中米からの移民の大半がメキシコ国境で難民申請するのを不可能にするトランプ政権の新たな規則は国内法と国際法に違反するとして提訴した。
ワシントンの連邦地裁は7月24日、差し止め要請を退ける判断を示した。
米カリフォルニア州邦地裁は同日、適法性に異議が唱えられている間、実施を差し止めるよう求める米国自由人権協会と移民人権団体の要請を認め、全米を対象に新たな難民申請規制を差し止めた。
その後、第9巡回区控訴裁判所が差し止め命令の対象範囲を狭める判決を下したが、同地裁は9月9日に再び全米を対象とする差し止め命令を出し、翌10日に第9巡回区控訴裁が対象を再び狭めていた。
こうした状況で司法省は最高裁に判断を求めた。
連邦最高裁は9月11日、米南部国境から入国する移民による難民申請を事実上不可能にする新規則について、合憲性を問う訴訟の判決が出るまで有効とする判断を示し 、差し止め命令は解除された。
最高裁判事9人のうち、リベラル派の Sotomayor 判事とGinsburg 判事が反対に回った。他の判事の賛否については公表されていない。
Sotomayor 判事は、「行政府はまたしても、規則を発令して迫害からの保護を求める難民に関する長年の慣行を覆そうとしている。この国は長年にわたり難民に門戸を開いてきたが、政府は国民への通知なしに規則を実施し、一般に必要とされる意見公募も行わなかった」と述べた。
ACLUの弁護士は「これは暫定的な決定で、最終的にわれわれが勝利すると強く期待している。何千世帯もの人命に影響が及ぶ」と強調した。
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