英最高裁、議会閉会を違法と判断

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英最高裁はジョンソン首相の議会閉鎖問題について、3日間のヒアリングを終え、9月25日 判決を下した。ジョンソン首相による5週間の議会閉鎖は違法とした。

 最高裁長官の説明 https://www.bbc.com/news/uk-politics-49810680

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首相官邸は8月28日、ジョンソン首相がエリザベス女王に9月9日の週から約1カ月間の議会の一時閉会を要請したと発表した。閉会手続きには女王の許可が必要だが、女王はこれを許可し、次の再開日は10月14日となる。

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これに反対して、各地で訴訟が行われた。

ロンドンの裁判所は、首相が女王に議会の一時閉会を要請したのは"political"なものであり、裁判所が介入するものではないとし、却下した。裁判所が判断する法的基準はないとしている。

スコットランドの裁判所は、議会の閉会で首相は法を犯しておらず、首相の行動を判断するのは裁判所ではなく、議員と有権者であるとして却下した。

これらに対し、スコットランドの高等裁判所(Court of Session)は9月11日、議会を長期間にわたり閉鎖したジョンソン首相の措置を違法とする判断を示した。提訴した野党議員らの「非民主的だ」という主張を大筋で認めた。

3人の判事は一致して、首相は「議会を妨害する不適切な目的」で動き、女王をミスリードして議会を閉会させたとした。

「このため本裁判所は、首相の女王への助言とそれに基づく議会の閉会は違法であり、無効であると宣言する。」

今回の議会閉会は合法的な権力の使用ではなく、議会を妨害する戦術であるとして、一審の判決に同意しないと述べた。

政府は直ちに上訴する方針を表明。舞台を最高裁に移し、17日にも審理入りする見通し。

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最高裁の11人の判事は満場一致でスコットランドの高等裁判所の判断を支持した。ロンドンの裁判所の判決を破棄した。

これはジョンソン首相にとって大きな敗北で、女王に議会閉会を求めたのは女王に嘘をついたと結論付けた。

政府が特権を行使して、議会が法律をつくる権限を妨げるなら、議会の主権は傷つけられることになるとした。

 本件は裁判の対象か? Yes

The first question is whether the lawfulness of the Prime Minister's advice to Her Majesty is justiciable. This Court holds that it is.

It is necessary to distinguish between two different questions.
The first is whether a prerogative power exists and if so its extent.
The second is whether the exercise of that power, within its limits, is open to legal challenge.

This second question may depend upon what the power is all about: some powers are not amenable to judicial review while others are.
However, there is no doubt that the courts have jurisdiction to decide upon the existence and limits of a prerogative power. This Court has concluded that this case is about the limits of the power to advise Her Majesty to prorogue Parliament.

 政府の権限の限界は? 議会閉会は、「議会の主権」と「議会への説明責任」で制限される。

The second question, therefore, is what are the limits to that power? Two fundamental principles of our Constitution are relevant to deciding that question.

The first is Parliamentary sovereignty - that Parliament can make laws which everyone must obey: this would be undermined if the executive could, through the use of the prerogative, prevent Parliament from exercising its power to make laws for as long as it pleased.

The second fundamental principle is Parliamentary accountability: in the words of Lord Bingham, senior Law Lord, "the conduct of government by a Prime Minister and Cabinet collectively responsible and accountable to Parliament lies at the heart of Westminster democracy". The power to prorogue is limited by the constitutional principles with which it would otherwise conflict.

 本件について:正当な理由なしに議会が憲法で認められた機能を果たすのを妨げる場合、議会閉会は違法である。

For present purposes, the relevant limit on the power to prorogue is this: that a decision to prorogue (or advise the monarch to prorogue) will be unlawful if the prorogation has the effect of frustrating or preventing, without reasonable justification, the ability of Parliament to carry out its constitutional functions as a legislature and as the body responsible for the supervision of the executive. In judging any justification which might be put forward, the court must of course be sensitive to the responsibilities and experience of the Prime Minister and proceed with appropriate caution.

Brenda Hale最高裁長官は、「女王に閉会を求めたのは違法と言わざるを得ず、議会は出来るだけ早く再開すべきだ」と述べた。

「正当な理由なしに、議会が憲法で認められた機能を果たすことを妨げる効果を持つため、違法である」とした。閉会は違法、無効で、議会は閉会されるべきでないと付け加えた。

最高裁は、次にどうするかを決めるのは議会、特に下院議長と上院議長であるとした。


下院議長は、判決を支持し、議会は遅滞なく再開しなければならない」と述べ、
25日に議会を再開すると発表した。

労働党のJeremy Corbyn党首は首相の即時辞任を求めた。

国連総会出席のためニューヨーク訪問中のジョンソン首相は、「明確な判決として敬意を表するとともに司法のプロセスを尊重する」と述べた上で、「司法の判断には強く反対だと言わざるを得ない。正しいとは思わないが、先へと進む。当然のことながら議会も再開する」と言明した。辞任は拒否、離脱を強行する構え。




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