2019年ノーベル化学賞

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2019年のノーベル化学賞は、「リチウムイオン電池」を開発した旭化成の吉野彰名誉フェロー(71)、米テキサス大のJohn B. Goodenough 教授(97)、米ニューヨーク州立大のM. Stanley Whittingham卓越教授(77)に贈られる。

Goodenough 教授はノーベル各賞を通じ最高齢受賞で、90歳を超えても大学の研究室に通い、現役の研究者として活動している。


リチウムイオン電池の開発経緯は下記の通り。

1) M. Stanley Whittingham

1970年代の中盤、当時エクソンに勤務していたWhittinghamが、正極材料として二硫化チタンを使い、負極に非常に軽くて反応性の高いリチウム金属を使うことで、繰り返し充放電可能な新しい電池を開発した。

二硫化チタンは層状の化合物で、リチウムイオンが出入りしても形が壊れにくく、繰り返し充放電が可能な物質。この「層状化合物にイオンが出入りする」という考え方は、Intercalationと呼ばれており、その後の電池材料で広く使われる極めて重要な考え方となった。

リチウムイオン電池は正極と負極の双方にンターカレーション電極を用いる。

リチウムは電子を放出しやすいだけでなく、この新しい電池は電子をチャージすることができる。

しかし、この新しい電池は破裂しやすいという弱点を抱えていた。

2) John B. Goodenough

1976年から86年まで英オックスフォード大教授であったGoodenoughと研究チーム(現在は東芝リサーチ・コンサルティングのシニアフェローの水島公一を含む)はコバルト酸リチウム (LiCoO2) などのリチウム遷移金属酸化物を正極材料として提案した。

しかし、ほとんど注目されず、論文に「コバルト酸リチウムが正極に使えることを発見したが、負極の材料がない」と書いた。


3) 
吉野彰 

化成で1981年にポリアセチレンを産業利用するための研究を開始した。


白川英樹氏は導電性高分子のポリアセチレンの研究を行った。
 (2000年に
導電性高分子の発見と発展でノーベル化学賞を受賞)


普通の高分子は電気をまったく通さないが、ポリアセチレンは導電性である。

ドーピングという手法で、いくつかのπ電子を引き抜いてやると、スペースが生まれ、
他のπ電子が動けるようになり、電流が流れる。

家庭用「ビデオカメラ」に使える充電できる2次電池の開発を試み、ポリアセチレンが負極の材料に適していることを見つけたが、正極の材料が見つからなかった。

1982年の暮れに、たまたま、John B. Goodenoughの論文を見つけ、正極にコバルト酸リチウム、負極にポリアセチレンを使って期待の結果を得た。

但し、ポリアセチレンは体積が大きく、電池の小型化には向かないため、ポリアセチレンに構造が似ている素材を100種類以上 を試し、社内の別のチームが作った炭素素材にたどり着いた。

1985年、現在の「リチウムイオン電池」の原型となる新たな電池の開発に成功した。


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