つばめBHB、エレクトライド触媒を用いたアンモニア製造パイロットプラント 竣工

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つばめBHBは10月7日、味の素・川崎事業所内に設置する同社のR&Dセンター川崎分室において、年間数10トンの生産を可能とするオンサイト・アンモニア製造パイロットプラントを竣工したと発表した。

従来の化成品は大規模な工場で大量に生産されるが、オンサイトは必要としている場所で、必要な分だけ生産する省エネルギー型生産手法。

このパイロットプラントは、東京工業大学の細野秀雄栄誉教授らが発見・発明したエレクトライド触媒を用いたアンモニア製造装置であり、今月より連続運転を開始する。

科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業「エレクトライドの物質科学と応用展開」の研究開発による。

今後、連続運転を通じて長期耐久性、最適な運転条件などの実用化に向けた各種データを取得し、年産数千から数万トンスケールのオンサイトアンモニア製造装置の量産に向け、準備を進める。

その後、味の素の国内外発酵素材工場に本技術を導入し、2021年頃を目処に世界初のエレクトライド触媒を用いたオンサイトアンモニア生産の実用化を図る。

将来的には様々なパートナー企業と連携し、農業肥料、食品・医薬品、化成品等への適用拡大を図り、より環境に配慮したサステナブルな生産システムの実現を通じて社会への貢献を目指すとしている。

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現在、アンモニアはHaber-Bosch 法により、窒素ガスと水素ガスから工業的に合成されている。

しかし、高温・高圧の過酷な反応条件(
使用されている鉄系触媒では約400~500°Cかつ10~30MPaと、高温・高圧下での反応が求めらる)が必要で、高いエネルギー負荷がかかる大型プラントでの一極集中・大量生産を行わなければならず、設備投資が高額になるという課題がある。

加えて、アンモニアを生産拠点から世界各地に点在する需要地に輸送するためには、専用の運搬装置と保管設備が必要であることから物流コストが非常に大きいことが課題となっている。 

東京工業大学の細野教授等は、高エネルギー加速器研究機構の阿部仁准教授らと共同で、ルテニウムなどの貴金属の担持を必要としない高活性触媒を開発した。

電子が陰イオン(アニオン)として働く「電子化物(エレクトライド)」のコンセプトを拡張することで新触媒を検討し、ランタンLaとコバルトCoの金属間化合物 LaCoSiが貴金属を用いずに高い活性を示すことを見い出した。

エレクトライドは電子が陰イオンとなって形成されるイオン結晶で、1974年に米国ミシガン州立大学のJames L. Dyeが発見、命名した。

LaCoSiはこれまで報告されてきたコバルト系触媒でアンモニア合成において最高の活性を示す。LaCoSi内でのLaからCoへの電子供与が高活性発現の鍵と考えられる。

また、LaCoSiは従来の触媒に比べ窒素分子の切断(開裂)をより速やかに行うことができ、より低温でのプロセスに有利である。

このエレクトライド触媒は、低温・低圧(目標 300~400℃、3~5MPa)条件下で高効率のアンモニア合成が可能であることが特徴で、低温・低圧の反応条件であることから、従来法(1基当たり約100万トン)では難しいとされた年産数万トン以下の小規模プラントでの生産が可能となる。(目標 2~10万トン)


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これとは別に、東大大学院工学系研究科は4月25日、西林仁昭教授らの研究グループが、常温・常圧の温和な反応条件下で窒素ガスと水からアンモニアを合成する世界初の反応の開発に成功したと発表した。

モリブデン触媒を用い、窒素ガスおよびプロトン(H+)源として水、還元剤としてヨウ化サマリウムを用いることで、常温・常圧の反応条件下で世界最高の触媒活性を達成した。

今回新たに開発したルテニウム触媒で、約400°C、5MPaの低温・低圧下でのアンモニアの合成が可能となった。

2019/5/3 世界で初めて窒素ガスと水からのアンモニア合成に成功  

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つばめBHBは東京工業大学の細野秀雄グループが発明した優れた触媒を用いた、世界で初めてとなるオンサイト型のアンモニア合成システムの実用化を目指す 。

社名 つばめBHB株式会社
事業 オンサイトアンモニア生産システム・触媒の研究開発・製造
R&D拠点 東京工業大学すずかけ台キャンパス内
川崎分室 味の素株川崎事業所内
事業開始 2017年4月25日
出資比率 UMI 1号投資事業有限責任組合 53.8%
味の素 45.1%
細野 栄誉教授ほか 1.1%

ツバメは東京工大のシンボルマーク、BHBの意味不明(どなたか教えてください)


味の素は、グルタミン酸をはじめとする多種のアミノ酸等の発酵素材の生産において多くのアンモニアを原料として利用しており、従前より細野教授らの発明・発見をアンモニアの安価・安定供給を実現する画期的な基本技術として高く評価し、本技術の実用化に関する共同開発を実施してきた。

味の素は、つばめBHBと協力して自社工場でのオンサイトアンモニア生産の実現を図り、発酵素材のコスト競争力を高めるドライバーとする 。

UMI(下図)はつばめBHBに対して、今後の事業推進に必要な資金を供給するとともに、取締役等の経営メンバーの派遣、事業開発体制の強化等の経営サポートを行う。

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