ヒトiPS細胞からミニ多臓器(肝臓・胆管・膵臓)の作製に成功

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東京医科歯科大学の先端医歯工学創成研究部門の武部貴則教授の研究グループは、 9月25日のNature誌で、ヒトiPS細胞から連続した複数(肝・胆・膵)の臓器を同時発生させる技術を確立したと発表した。

血管を作る必要があるなどまだ課題はあるが「10年以内に移植医療で使える技術にしたい」としている。

Cincinnati Children's Hospital Medical Centerとの共同研究で、胎内で肝・胆・膵領域が発生する過程を模倣することで成功した。

ヒトiPS細胞から特定の臓器を人為的に創出する試みに注目が集まってい る。武部教授はこれまでにミニ肝臓を作ることにも成功している。

しかし、特定の臓器のみ(単一臓器)の誘導を試みる、という従来のパラダイムでは、隣接した複数臓器間の連結が再現され ない。このため目的の臓器機能が充分に発揮されない、あるいは、持続しないなどの重大な未解決課題が存在している。

例えば、肝臓に隣接する臓器である「胆管」において狭窄が生じる胆道閉鎖症などの疾病では、徐々に肝臓が傷害され、最終的に肝不全の状態に陥ることが知られてい る。

研究グループは、機能の完全再生のためには、臓器の設計思想の抜本的な見直し(パラダイムシフト)が必要と考えた。

すなわち、周辺臓器との連続性を取り入れた複雑な多臓器創生技術の開発が急務と考え、胎内で臓器間の連結が作り上げられるダイナミズムに着目し、それらを試験管内で人工的に再現することによって、世界に先駆けて、ヒトiPS細胞から多臓器を一括創生するための基盤技術を確立することに成功した。

肝・胆・膵領域を構成する多臓器は、受精後8週前後に形成される前腸中腸とよばれる前駆組織の境界領域より発生する。

肝・胆・膵を含む消化器系臓器の発生は、原始腸管とよばれる単純な 1 本の管から始まる。

原始腸管は、胎児の頭側および尾側からの位置によって区分され、前腸、中腸および後腸の3つの組織に分類され る。

前腸からは食道・胃・肝臓・胆管・膵臓などが、中腸からは十二指腸・空腸・回腸などが形成されると考えられてい るが、肝胆膵領域は、前腸と中腸の境界領域より発生することが知られている。

そこで、発生初期段階で生じる前腸・中腸およびその周辺細胞の細胞間相互作用に着目し、それらの再現を試みた。まず、ヒトiPS細胞から前腸および、中腸組織を別々に誘導し、それらを連結させ、前腸-中腸境界(バウンダリ)を作成したところ、驚くべきことに、肝臓・胆管・膵臓の前駆細胞が、その境界領域より自発的に誘導されることを見い出した 。



さらに、これら肝・胆・膵前駆細胞の出現には、レチノイン酸シグナルなどの分子のやり取りを介した、複雑な細胞間相互作用が必要であることもつきとめた。

さらに、得られた組織の培養方法を最適化することにより、長期間の特殊な3次元培養により、試験管内で誘導した前駆細胞から、肝・胆・膵組織を連続性を保ったまま発生させることに成功した(図2c、図3)。

グループは今後、実際の臓器に近づけるため、血管などのほかの組織まで含むミニ多臓器を作る方法を開発する。

将来は病気の赤ちゃんへ移植し、体内で実際に機能する臓器に育てる計画。また腎臓と尿管やぼうこうなど、ほかのミニ多臓器を作る研究も行う。



ミニ多臓器以外のやり方での腎臓の再生については、下記を参照

2019/4/9 腎臓の再生医療実現に向けた取り組み開始

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