線虫でがん検査、実用化へ

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九州大学発のベンチャー企業「HIROTSUバイオサイエンス」は10月1日、体長約1ミリの線虫を使って、尿1滴でがんの有無を8割以上の高確率で判定できるという安価な検査法「N-NOSE(エヌノーズ)」を、来年1月から実用化すると発表した。検査費用は1回9800円。健康診断への導入を希望する企業や医療機関、自治体の申し込みを受け付けている。


実用化への最終調整として、福岡県久留米市と小郡市の職員から希望者約120人を対象に検査し、運用の流れを確認すると明らかにした。

同社は2016年に、当時九州大助教だった広津崇亮社長が設立。福岡県と久留米市の支援を受け開発を進めた。

がんの1次スクリーニング検査『N-NOSE』は、線虫C. elegans の化学走性(好きな匂いに近づき、嫌いな匂いから遠ざかる)を指標にした、これまでにない全く新しいタイプのがん検査。

線虫の嗅覚研究をしてきた広津氏が、ある条件下において、線虫が人の尿中からがんの匂いを検知して、がんに罹患している人とそうでない人を高精度に嗅ぎ分けることを発見し、これを "線虫の鼻"(Nematode NOSE)を意味する『N-NOSE』と名付けた。

線虫は土壌などに生息する微小生物で、犬より優れた嗅覚で、がん患者の尿に含まれる特有のにおいに近づき、健康な人の尿からは逃げる性質を利用して判定する。


がん患者1400人に実施した検査では的中率は約85%に上り、特にステージ0~1の患者は87%で判定できた。一般的ながん検査「腫瘍マーカー」よりかなり高確率という。

従来の腫瘍マーカーは早期がんに対して感度が低い欠点があったが、『N-NOSE』は早期がんでも感度が変わらない。

反応するのは胃、大腸、肺、乳、膵臓、肝臓、子宮、前立腺など15種のがん。

現時点では検査でがんの部位までは判明しないが、今後は特定も目指す。

がん探知犬の研究結果より、がんの種類によって匂いが異なる可能性が示唆されている.

特定のがん種の匂いにだけ反応しない線虫株を作製(例:特定のがん種の匂いの受容体を欠損した変異体)


当面は尿を都内にある同社の検査施設に持ち込んで解析する。結果報告まで1週間から1カ月ほどかかる。
1年目は25万人分の解析が可能で、既に約10万人分の検査が予定されている。

広津社長は「技術的な検証はほぼ終わった。がんの検診率を上げるには画期的な技術が必要。特に子育てや仕事で検診率が低い若い女性の検診率アップにつなげたい」と話した。

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癌検査については、東レが血液1滴から様々な癌を発見する検査キットについて、2019年中に厚生労働省に製造販売の承認を申請する。

高い精度でがん患者と健常者を識別でき、1次スクリーニングの検査方法として有用であることが示された。

2019/6/13 東レ、血液による癌検査キットを承認申請へ

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