クラレは10月24日、子会社Kuraray Americaが火災事故で被害を受けた外部委託業者作業員等から民事訴訟を提起されていたが、一部原告との間で和解の基本合意をしたと発表した。
原告13名との間で、和解金92百万米ドル(約100億円)で基本合意に至った。
クラレでは特別損失(訴訟関連損失)として、これを含め140億円を計上する。
今後、本件訴訟について新たに合理的な見積りが可能となった損失についてはその時点で公表するとしている。
付記
同社は11月27日、合理的な損失の見積りを行い、新たに340億円を特別損失として 追加計上したと発表した。
従業員、業者への補償としては非常に多額である。
付記
同社は2020年1月3日、別の一部原告との間で265百万米ドル(約289億円)で和解した。合計で357百万ドルとなる。
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2018年5月19日午前10時43分、Kuraray America, Inc.のテキサス州Pasadenaのエバール工場で火災が発生した。
当時は定期修理と能力増強の工事のため、従業員と外部の委託業者作業員の合計266名が現場にいた。このうち19名が救急車で、2名がヘリコプターで病院に運ばれた。いずれも命に別条はない。
配管に高い圧力がかかったことが原因で安全バルブが外れ、エチレンガスが流出し、溶接の火花で火災が起こった。火はすぐに消し止められた。
この事故に関連し、身体的または精神的傷害を受けたことを理由として、160名超の外部委託業者の作業員等から、損害賠償等を求める民事訴訟が、テキサス州ハリス郡巡回裁判所に提起された。
入院は21名で、そのうち、合理的に見積りが可能な原告13名分 との間で合意したという。残り150人程度は身体的障害は軽いか、無く、精神的障害をうけたことを理由の訴えと思われる。
今回、最も大きな被害を受けたものを含む13名の原告と協議を行った結果、本件訴訟の早期解決を図るべく、和解に関する基本合意に至ったもの。
なお、 事故直後に数人が訴訟を行ったが、その時点では1人が100万ドル以上の賠償を求めるとの報道があった。被害の程度にもよるが、13人で93百万ドルというのはどういう計算なのか分からない。
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エバール工場はEval Company of Americaとして設立され、2008年1月に、熱可塑性エラストマー<セプトン>を製造販売するSEPTON Company of America とともに、Kuraray America, Inc.に統合された。
工事は定期修理と能力増強工事(年産47千トンから11千トン増強し、58千トン)で、火災事故の影響で遅延していたが、2018年11月28日に発災ラインの稼働を再開し、全ラインで定常運転となった。
本能力増強工事完了後のエバールのグローバル生産能力は下記の通りとなる。
クラレの米国事業については https://www.knak.jp/kakusha/maker-n-ame/kurare.htm
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